キッチンカー

キッチンカーと言えば、家賃が高い都市部で自前の店舗を持てない飲食店が、昼になるとどこからかやってきてお弁当を売っているイメージだった。
最近は郊外でも見かける。都心に人がいないので行動範囲が広がっているのかもしれない。また、店内飲食の売上を減らしている飲食店が、持ち帰り弁当へ参入する手段として自店舗の駐車場にキッチンカーを出しているのも見かけた。
ファミレスなどを想像してみると、その店舗の扉は、冬の寒さや暴風雨を遮るためなのか、あるいは深夜の防犯のためなのか、重たく作られている。店舗に入るには、扉の取っ手をがっちり握って開けなければならない。また、持ち帰りの場合は持ち帰りの荷物を持ちながら再び開け閉めしなければならない。
店舗の中で持ち帰りの弁当を売ることは可能だろう。弁当を始めることで足が遠のいていた客だけではなく、家庭料理の支度に疲れた人にも興味を持ってもらえる可能性はあるが、食品を持った手で不特定多数が触るドアノブを触りたくないというのが今どきの客心理である。
もともと持ち帰り弁当の専門店の場合は、特にチェーン店ではたいていが自動ドアである。新型コロナウィルス騒ぎがなかったとしても、手がふさがった状態で喜んで取り扱ってもらえるものではない。
開けっ放しにするときは、締め切りを0度とすると、90度の状態でしか固定できない。開放すると春の風がばんばん入ってきて、店内にいる人は少し不快なほどである。
ソーシャルディスタンスが唱えられている。店の入り口にドアがあると、購入意欲を示すためには店内に足を踏み入れたいという心理が働く。店の外にいると、誰かを待っている人のように見えるので、後から来た人に順番を抜かされそうになる。それを避けるために行列付近には密集が発生する。
キッチンカーにはこれらの懸念がない。雨の日は傘をさして並ばなければならないという欠点があるが、重たいドアがないということの方が持ち帰り弁当を売るには有利である。空車が目立つ駐車場で店を広げていると前を通る人や車から目立つということもあり、「わざわざキッチンカー」が流行っているように見える。
設備投資も入居保証金も維持費も高い店舗が、キッチンカーに負けている。すごい時代が来たものだ。
ドア製造業者の方々、

改造車業者に市場を奪われていますが、商機に変えるべきです。

あなたの製品が店の経営者に嫌われているのですから。