IT業界の転換

 コンピューターシステムの開発は、今も多くの人手がかかる。かつては人件費が安い中国に委託する「オフショア開発」というものが広まっていた。ところが、東西分断により、情報漏洩や盗用が不安になってきた。そして、ついには中国の都市部の人件費が国内を上回るようになってしまった。中国からの離脱の動きがあるが、より人件費の安い地域を求めたところで日本の人件費がさらに割安になるかもしれない。他国は成長しているから昇給する一方で、今年2022年の日本は急激な円安が進んでいる。
 ただ、日本の場合は技術者に適度な報酬が払われないから安いのであって、日本の方が人件費が安いとは言っても優秀な人材を集められない。扱うコンピューターやデータは正しく扱わないと企業を倒産に追い込みかねないので、モラルの高い人を選ばなければならない。雇った人を信じないならば、コンピューターに工夫を入れておかしなことをさせないようにしておかなければならないため、そのコンピューターにお金がかかってしまう。日本で適切なチームが組めるかどうかはプロジェクトにとって悩みの種である。
 クラウドコンピューティングによって、コンピューターの機器や、機器を大量に設置する「データセンター」と呼ばれる建物は外資企業の寡占化が進んでいる。日本の大手IT企業の技術者も営業もこぞって外資企業に転職している。クラウドサービスは従量課金になっていて、外資企業はドル建てで価格を決めるから日本に住んでいると値上げが進んでいるように見える。機器の世界でも東西分断とコロナ禍の影響で、資源が高騰し、半導体が不足している。製造業者からの仕入れ値の段階ですでに価格が高騰していると思われる。
 技術の向上により、機器の性能は価格性能比でどんどん安くなってきたし、寡占化によって大量仕入れを実現していたのでクラウドサービスは例年値下げを繰り返してきた。しかしドル建てでも値上げが始まるかもしれない。円建てにするとますます負担感が強い。
 日本には、値下げ前提でクラウドサービスをまとめ買いし、顧客に再販する業者があるが、このビジネスモデルを続けるのは難しくなりそうである。
 気づけば、日本回帰の条件が整った開発受託も戻せないし、機器は外資に乗っ取られている。
 日本のIT業界は自動車産業に代わる産業に育たなかった。自動車産業も中国欧州が推進するEVの圧力により、政治力で屈しようとしているが、それより前にIT業界は自滅してしまった。

ポイント経済圏を生き抜く

 ポイント経済圏の改悪と言えば楽天が有名だが、ヤフーのTポイント離脱もよくよく分析してみるとステルス改悪である。
 Tポイント削減分はPayPayボーナスから改称したPayPayボーナスを付与するとしているが、Tポイントとは異なり、上限などの制約が厳しい。
 オンラインショッピングでは様々なキャンペーンをやっていて、最大30%台のポイント還元が得られるとしているが、高額の買い物をしたとすると、表示通りのポイントがもらえない。
 楽天の場合は買い物マラソンと称して、限定期間中にたくさん買い物をすることがポイント付与率を高めるこつであるが、ヤフーの場合は買いたいものを普段からリストしておき、キャンペーンが来たら1点買いするのがよい。5%で1,000円が上限だったら、1,000円が5%になるに買い物をすることになる。すると、2万円ということになる。
 ところが、キャンペーン期間の本体価格がお得ではないこともあるので注意したい。このポイントの原資が加盟店負担なのか、それとも、キャンペーンだということで財布のひもが緩むと考えているのか。
 キャンペーンに合わせて買うなら断然ふるさと納税である。これはキャンペーンに合わせて価格を変動させていないことが確実であるからである。返礼品の価値を寄付金の30%相当ぎりぎりに設定することがほぼ決まっているので、寄付金額を変動させたらクレームが来るだろう。そもそも、他の寄付募集サイトにも同じ商品を出している場合は、特定のオンラインショッピングサイトに出品した商品だけ価格を変えたら不自然である。
 キャンペーンのポイント還元の原資は誰が払っているのだろうとは思いつつ、ありがたく高還元のときに定価で寄付を行う。

還元額の実例

 例えば、本日は2022年7月の海の日3連休なのでヤフーがキャンペーンを打っている。広告では最大30.5%と謳われていた。
 ただし、実際はオンラインショッピングの実績などによって還元率は決定する。わたしの場合は「24%獲得」と表示された。
 ふるさと納税でもらえる、あるクーポン券は寄付金の30%相当が返礼品としてもらえる。
 寄付金額が複数設定されていたので、ポイント還元額を含めて比較してみる。

寄付金額 3万円 10万円
返礼品 9,000円相当 30,000円相当
ポイント還元額 6,200円相当 16,000円相当
実質還元率*1 50.7% 46%

 ちなみに、ポイント還元額の明細は次の通り*2

寄付金額 3万円 10万円
キャンペーン1 1,000円相当(5%) 1,000円相当(5%)
キャンペーン2 1,000円相当(5%) 1,000円相当(5%)
キャンペーン3 600円相当(2%) 2,000円相当(2%)
キャンペーン4 600円相当(2%) 2,000円相当(2%)
キャンペーン5 600円相当(2%) 2,000円相当(2%)
キャンペーン6 300円相当(1%) 1,000円相当(1%)
キャンペーン7 300円相当(1%) 1,000円相当(1%)
キャンペーン8 1,500円相当(5%) 5,000円相当(5%)
ストアポイント 300円相当(1%) 1,000円相当(1%)

 ポイント還元額の「〇円相当」というのはヤフーが採用している表現で、キャッシュバックではないから実際に還元されるのはポイントであって、円ではないという意味なのだろう。
 円相当と%の数字が計算が合わない。例えばキャンペーン1と2は、どちらも1,000円相当(5%)となっている。これは5%としながら、上限額が1,000円に設定されているからである。2万円でも2,000万円でももらえるのは1,000円。ただし、円相当と書いてある数字からはぶれない仕組みになっている。
 3万円と10万円に商品に違いがあるわけではないので、3万円を10口でも10万円を3口でも、等しく31,000円相当となる。還元率の下がり方も同じである。
 このクーポン券をたくさんほしいと思ったら、毎月のキャンペーンに合わせて、デパート友の会のようにちょびちょび買っていくのがいい。同様のキャンペーンが繰り返されると仮定すれば、約20%相当を継続的に獲得できる(返礼品と合わせて約50%)。ふるさと納税が50%還元というとお買い得な感じがするが、最大30.5%還元で、24%表示で、実際は20%くらいとなると「10%はどこに消えた」と思いたくなる。
 年間何回に分けても、寄付する先の自治体が変わらなければ、確定申告を省略する特例制度の適用は受けられる。実際は毎月納税できるのであれば自治体を変える人が多いと思われるので、5か所を上回れば確定申告することになるだろう。

還元率にこだわる時代でもない

 JR東日本JREポイントを使って普通列車グリーン車に乗る。普通車なの?グリーン車なの?と読み間違えやすい名前だが、種別が普通または快速に連結されているグリーン車の有料座席に座るということを指す。
 距離によっては1,000円を超えて特急料金よりも高くなっている場合があるが、JREポイントの引き換えだと距離に関わらず600ポイントで乗れる。2020年12月には500ポイントと書いたが、最近では400ポイントで引き換えられるキャンペーンがこっそり行われている。
 1,000円が400円というととてもお買い得な気分になるが、有料座席に乗るのは通勤をする人にとっては、贅沢の部類に入るのではないか。
 クレジットカードなどのポイントは、ちまちま貯めても使うときは一瞬である。しかも、何に使ったかなんてすぐに忘れてしまう。一方、30分、1時間窮屈な思いをする代わりにゆったり移動できれば価値が高いし、それが6割引き以上となればさらに満足度が高い。
 少しポイントで金銭的な得をする代わりに、体験や空間で満足を得る「こと消費」にシフトするのであろう。
 航空会社のマイレージ会員にしても、せっかく出張でマイルをためていても、家族が無料航空券に勝手に引き換えやがったという話を聞く*3。頻繁に飛行機に乗るようなビジネスをする人にとっては1回数万円の航空券を手に入れるのもいいけれど、今時は海外に行くのも大変なので、ラウンジが使えたり、会員専用の検査場が使えたり、手荷物や乗り継ぎタクシーの手配をしてくれたりした方がはるかに満足度が高いと思う。
 毎回少しでも高い還元率を狙ってちまちま調べる時間と手間がもったいない。
 還元率にこだわるくらいなら、仕事や自己投資を頑張った方がいいと思う。もう、デジタルストアの進化は一段落し、アマゾンはストア以外のことに多角化を広げている。昔みたいなポイント大判振る舞いは戻ってこないと思われる。市場が成熟化したということだ。

*1:ここでは納税時の控除額2,000円は考慮しない

*2:キャンペーンの名称は置き換え

*3:家族でマイルをシェアできるサービスがあるが、航空会社が気を利かせて有効期限の近いマイルを先に消費してしまう

スマートフォンの乗り換え

 最近はメーカーが異なっていても同じLANに接続するだけでアプリケーションの引っ越しができるようになってとても便利になった。それでも自動で完了しない作業がいくつかある。

おサイフケータイの引っ越し

おサイフケータイの情報はスマートフォンのプログラムとは別の電子部品で管理しているので、自分で引っ越しの手続きをする

アイコンの整理

アイコンの配置がばらばらになってしまうので自分の置きたい場所に動かす

サインイン

決済アプリなどはID、パスワードの情報がスマートフォンの内部に保存されることで2回目以降は入力を省略できるものがある。お店で使おうとした時点で初めてパスワードを要求されると慌てるので、家などであらかじめサインインしておきたい。

アプリの設定

アプリケーションは導入されるが設定までは引き継がれない場合がある。モバイル回線で動画をダウンロードしないように設定していたのに、機種交換したときに設定し忘れて勝手に数百GBのパケットを使っていた。他にも、プライバシーの設定などは確認したほうが良い。

 

使っているアプリケーションで、機種交換を想定していないものがあった。お店に行って初期設定をしてもらう必要がある。

アプリケーションの引っ越しが終わっただけでは、古い端末を捨てたり売ったりすることができない。しばらくは両方持っておく必要がある。

安倍元首相死去

 左翼テレビが、自民党の影響力が弱まると断定。
 かつては選挙中の大平首相の死により弔い合戦と称されたこともあるし、田中角栄氏や小渕恵三氏が倒れて自民党が弱くなったという評価はされていない。

 TBS出演中の星さんは、安倍さんがいなくなると、保守勢力は弱まるんだということにどうしてもしたいらしい。長時間特番は打ちたいけれど、それは人の不幸は蜜の味、野次馬根性を満たすためのものであって、自民党政治を評価するためのものにしてはならない。

 弱まるのではなくて、あなた方が報じたいような保守がいないというだけのことですよね。

家電量販店に行ってみた

無断キャンセル事件の衝撃

 2022年6月、大手PCメーカーが客の注文を無断キャンセルした。インターネット上の店で割引率の設定を間違えたということで、規約上も許されるとメーカーは主張している。わたしはとても驚いた。
 普通の店に置き換えるとこういうことだ。「大幅値下げですよ」と客寄せし、客が購入の意思を示して名前も住所も決済手段も明かして手続きを終え、店を出た後で「すみません、間違えました、キャンセルです、テヘペロ」という感じである。ネットの場合は商品の受け渡しが完了していないので店側が勝手に取り消しやすい仕組みにはなっているものの、店と個人客の取引の場合は、店には解約の権利が事実上なく、客には返品の権利があるというのが商慣習だった。この慣習が無視された。
 今年は自治体が給付金総額をひとりに振り込むミスなど、コンピューター上での誤操作がもたらす事件が騒ぎになった。類似の事件は証券会社などで過去にもあった。給付金は契約ではないので返還しなければ警察に捕まって当然なのだが、ちゃっかり利益を得てしまったこと自体が「なんだか」悪いかのような風潮が広まったかもしれない。ただ、悪いのは最初に間違えた方である。客は店が間違えたと知っていたかどうかはともかく、店が示した正当な方法で購入意思を示したのである。不正アクセスや詐欺ではないし、暴力に訴えたわけではない。
 誤った値段で大量に売りさばいてしまうとメーカーは大損をするかもしれないが、ここで客を裏切ったら日本での商取引において重要な「信用」を失いかねない。しかし、このメーカーは外資系。この文化を本社に説明することができない。そもそも大企業は四半期決算だし、今年大きな穴を開けたらとりあえず周りにいる具体的な誰かは責任を取らされるとなると、ネットの向こうにいる客よりは自分たちの組織を考えたというのが今回の結果である。
 信用は目に見えないけれど、このメーカーは来季以降、大幅値引きや特別クーポンを発行しても「どうせいキャンセルするんでしょ。こちらはあんたたちの客寄せに付き合うつもりはないから」と思われてしまう。本気でそうは思わなくてもクーポンを見ただけでこの事件を思い出してしまう。このメーカーは割引というマーケティング手段を封印しなければならないかもしれない。

ポイント神話の崩壊

 同じようなことを老舗旅館や老舗百貨店、元政府出資企業がやったら致命的だっただろうが、救いなのはネットのオンラインショップだったということである。実はもはやオンラインショップは半ば信頼されていない。半ば信頼されていないものがさらに信頼を下げた、というだけにすぎない。
 今回のキャンセル騒動とは全く関係ないが、アマゾン、楽天、ヤフーショッピングの電子商取引大手が競争している。
 アマゾンはリコメンドとレビュー欄、楽天はポイントを武器に成長し、ヤフーは後発として両方を取り込もうとしている。ところがもはやリコメンドもレビューもポイントも信頼されていない。
 リコメンドは一度ついたものを消しにくい。特にアマゾンのkindle。恥ずかしくて人に見せられない。後ろから覗かれでもしたら嫌なので、アマゾンはみんなで楽しく買い物をするサイトではなくこっそり一人で見るものになっている。
 レビュー欄は、レビュー欄を書いてくれたら購入者にプレゼントを出す店が現れ、また、あるサイトではサクラの介入が激しい。偏見で申し訳ないが中国企業の商品はリコメンドがたくさんついている時点で、その内容がほめていようがけなしていようが、どちらについても手を出さないのが無難である。
 ポイントは楽天経済圏が徐々に改悪を進めていることで有名。また、ヤフーもそうだが「最大○倍」「最大○%引き」は実際に受け取れる割引との乖離が激しい。あるサイトでは商品説明の画面で26%引きだという。最大から1割弱低いものの、納得して購入を決めたのに、決済画面に来て実際に表示された付与予定ポイント数を計算してみると26%にも遥かに及ばないことがある。割引条件が細かく定められている個々の割引の最大適用時の合計が商品選択中に表示されるのであって、決済画面では実際に適用される率の積み重ねになるので誤差が生じる。
 細かい条件を全部読めばわかるのだが全部理解して納得するには小一時間かかる。すると、納得するのが面倒になるので、商品者には「実際の還元額は広告よりも遥かに少ない」という印象だけが残る。消費者は買い物がしたいのであってポイント制度の中身を知りたいのではないのだから、そう考えるのは合理的である。すると、加盟店に無理やり原資を出させて繰り広げているポイント制度は何のためにあるのかという話になる。
 オンラインショップは、店舗の進化系で、将来的には家も車も全部ネットで買えるというのがあるべき姿だったのではないか。ところが、厳しい幻滅期を迎えているように思える。
 新しいネットビジネスができても、初期のサービスは信頼できないという考えが定着すると、新しいビジネスをしようとする人にとっては不利だし、日本でイノベーションが進まなくなる。ネットビジネスの先進企業は、後続のネットビジネス企業の命運を握るという社会的使命を持っていることを認識してほしい。

冷蔵庫が壊れそう

 さて、我が家の家電は、オンラインショップが今ほど普及していなかった頃に買い揃えたものであるが、そろそろ寿命を迎えつつある。そして、冷蔵庫の調子が悪くなってきた。
 電子レンジは通販でもいいし、テレビもぎりぎりいけるかなと思う。しかし、冷蔵庫はどうか。
 オンラインショッピングサイトの試練は近年、新たな試練を迎えている。
 半導体不足、上海ロックダウン、そしてウクライナ戦争。各店の在庫は不足しているし、発注してもなかなか入荷しない状態である。
 ところがオンラインショップでは、具体的な状況がわからない。お取り寄せと書いているサイトはまだ正直。入荷の可能性が変わっても、あるいはわからなくても、近日入荷、2-3日で配送などの表示をそのままにしているサイトが実に多い。
 電子レンジやテレビは1週間遅れても待てるかな、と思う。ところが冷蔵庫は待てない。冷凍食品が溶けてしまう。
 そんな中で前述の無断キャンセル事件である。1週間で入荷の文字を信じて発注した後、半月経って無限キャンセルなんてされでもしたら、怒りをどこにぶつけていいかわからない。店員には我々の悔しさが伝わらないし、コールセンターは繋がらない。よって日常必需品は確実に在庫がある商品を選ぶ必要がある。
 冷蔵庫ではなくエアコンだったらどうか。通販でもエアコンを売っているが、誰が家に来るのかわからないのは少し不安である。通販会社の委託の委託の代理くらいの人が家に来て「いやあ、実は追加工事がこれとこれとこれ。工事費は倍です」と言われたら通販会社に「全部込って言っていたじゃないか。約束と違う」と言いたくなる。「標準工事費以外は含まれていません。説明にあったはずです」と冷たくあしらわれることも容易に予想されるので、顔が見える人から買いたいと思うかもしれない。
 

リアルとオンラインの再逆転現象

 ネット時代においては、リアル店舗で商品を触ったり、他の商品との比較をしたあとで、安くて品揃え豊富なオンラインサイトで購入するという流れができつつあった。在庫が不足する時代においてはこれが逆転する。
 今回はひたすらネットで在庫を確認した。申し訳ないが楽天ヤフーは見向きもしない。kakaku.comでぎりぎりですかね。在庫表示を信用できないからである。アマゾンはマーケットプレイスだと他のオンラインショップと同じ。直販であれば在庫数は正確かもしれないが、全国に倉庫を持つようになってから大型商品は納期が読めない。書籍や小物を運ぶデリバリープロバイダー*1は来ないと思うが、個人的に大型商品を発注した経験に乏しいので躊躇してしまう。カメラ系量販店なら全国のどの店舗に在庫があるかまでリアルタイムで確認できる。これを見るとヤフーで「お取り寄せ」になっている中身が具体的につかめる。在庫はあっても遠距離にしかないものは避ける。
 その上で、居住地に本拠地が近い家電量販店のサイトを見る。関西ならあそこ、関東ならあそことか。そして「即納」の文字を発見。それを見て家を出発。

 家電量販店に行く。

家電量販店の戦略

 今年2022年は電力不足がささやかれているが、そもそも電気料金が高くなっている。家電量販店では実演展示が流行しているのだが、今回訪れた店では、電気がついていたのはテレビと扇風機くらいであり、調理家電や洗濯機、そして冷蔵庫は電源コードが抜かれていた。過剰な照明や音響を先に抑えたらどうかと思うのだが、長年染み付いた商慣習はすぐに直せず、新たに始めた方からやめてしまう。ただ、ネットに対抗するなら、展示のテレビを全部消してでも実演販売の方を残すべきではないかと思った。
 もう在庫は調べてから来ているので間違いないと思うが、念のためにそばにいた販売員に確認し、「これ買います」と告げる。迷いとか値下げ交渉とかは最小限。
 在庫を調べるくらいだから性能や寸法はすでに調査済。「下見は必要ですか」と聞かれても「今の冷蔵庫と同じ寸法だから、これで搬入できないならおかしい」と答えておしまい。消費者から見た販売員の価値は下がっている。
 ただ、店にとっては販売員は必要。ネットの価格に合わせて値下げした分を取り戻さなければならない。販売員は延長保証の話をする。延長保証と家財保険をダブルでつけると半分以上ポイントで還元するという提案をしてきた。そういう手口があるのね、と関心しつつ、ポイント制度の新たな活用方法を知った。最大○%と謳いながら実際には半分を還元しないオンラインサイトに比べ、これに入ったらその額以上のポイントをつけると言ってくる。当初から厳しい値下げを要求してくる客には最初からポイント錬金術を提案するのだろう。
 さらには多重取りである。dポイントのカードを出したら、冷蔵庫なのでそこそこポイントをつけてくれる。店のポイントもつくし、クレジットカードのポイントもつくので、合計は1万円を軽く超えている。在庫が少ない状態ではネットでも大幅な値引きはしてこないので、これだと家電量販店の方が得になる場合も出てくるかもしれない。
 ただ、大型家電は損得で決める時代ではない。インフレなので過去の価格情報は意味がない。そして、○○店の○○さんが在庫があると断言した事実が重要である。「この機種はようやく入荷したんですよ、今日来ていただいて良かったですよ」という発言が真実かどうかはさておき、ブラウザに表示される「即納」よりは信頼度が高く、安心できる。

このまま復権するか

 買い物を終えた後、店内をふらふらしていた。結果として追加で買うものはなかったが、ふと冷蔵庫売り場を見たらさっきの店員が別の接客をしている。こちらのことは見向きもしない。客は二桁万円のお金を店に落とした上客だと自負している。店員は数千円のもうけになった人だくらいにしか思っていない。この認識の差は大きく、そして悲しい。
 ネットの登場で、客は浮気性になり、長い付き合いではなくその場のインパクト勝負だということが店員にも身にしみている。ただ、この半導体不足、在庫不足、インフレの時代にあって、今一度、客を大事にしたほうがいいのではないかと思う。ポイントをまいたから少なくてもあと1回は来てくれるよという程度では繋ぎ止めにならない。わたしと違って、一般の消費者はポイントをもらったことはすぐに忘れる。
 客もまた、壊れたら買い換えればいいやという時代ではない。ものは入らないし購買力も落ちているから、保証を求めたり修理を依頼したりすることも出てくるだろう。買った店のことを大事にしたほうがいいと思う。故障のときにクレームしやすくする上でも延長保証くらいは入ってもいいのではないか。

*1:都会では軽ワゴンダンボール箱を200個くらい詰めて走り回っている業者さん

房総へ特急を

2022年6月23日乗りものニュース
「西武新宿線から房総へ特急」提案 メトロ東西線乗り入れ“まず費用感を” 株主の声 | 乗りものニュース
西武鉄道株主総会では例年、鉄道事業に対する独創的な質問が寄せられる。
西武新宿線の活性化は沿線住民にとっても株主にとっても関心の的であり、2022年は地下鉄東西線への直通を実現して房総へ特急を走らせてほしいという。
横浜方面へのFライナーが空気輸送状態で大きくこけているのに、また特急かね、と現場は思っているかもしれない(憶測)。
また、東西線に直通すれば千葉県には入れるけれど、房総方面に線路がつながっていない。
東西線の下り線から総武緩行線の下り線へは、平面交差なしに転線できるようになっている。ラッシュ時にしか使わない短絡線が立体で設置されている。
総武緩行線から総武快速線に転線させるため、それと同じようなものを新たに設ける必要がある。
総武線快速線と総武線緩行線との転線は両国付近でもできるようになっているが、平面交差なのでダイヤの乱れに弱く、JRは積極的に活用していない。
千葉県の国会議員を始めとする政治家が、新宿発のホームライナーを充実するように陳情した*1ところ、JRは充実どころか総武線系統のホームライナーを全廃してしまった。他のホームライナーも全廃して特急に格上げしたかったというのがJR東日本の本音のようだが、東海道線系統を除くと中央線系統も含めて乗車率は今ひとつのようである。
成田エクスプレスもコロナ禍以来、空気輸送が続いていて、コロナ禍ではとうとう車輌を両国駅に停泊させてオフィスへの転用まで試みるに至った。千葉駅停車を増やしたが、こうなると京成スカイライナーと速達競争はあきらめるしかない。成田エクスプレスこそ両国で転線して中央線に向かったほうが新宿から乗る利用者へのアピールになると思うのだが、現状は東京で運転停車して南に向かい、渋谷を遠回りして新宿に向かっている。こんなの誰も利用しない。
週末の房総方面は、高速道路の渋滞が厳しくなる一方である。特に夕方の帰りの混雑がひどい。渋滞なく帰れればすばらしいとは思うのだが、特急があっても誰も乗らない。観光客からは鉄道が支持されていないのである。この大渋滞の中を首都圏各地向けに空港高速バスが走っているのだ。高速を降りてしまい一般道をノロノロ走っているのだが、あの渋滞に耐えるくらいなら電車で帰ったほうがいいんじゃないのかと思うのだが、それでもバスに乗りたい人がたくさんいるのである。鉄道はどうしちゃったのだろうか。
西武新宿線から、各駅停車の後ろをノロノロ走る特急で千葉県に入って、多額の投資が必要な転線設備を経て千葉方面に行ったとしても、乗ってくれる人はいるのだろうか。
東京メトロ西武池袋線西武有楽町線との直通のために小竹向原付近の地下に立体交差トンネルを構築したが、そこまでやっても元町・中華街発の西武秩父行きは空気輸送。西武から新たなおねだりがあっても、東京メトロやJRはつき合うだろうか。小竹向原付近はラッシュ時の遅延防止には大きく貢献しているので、これ自体は問題ないが、観光特急だけのために転線設備を設けることはないだろう。
本来、房総への送客は千葉県が考えなければならないことなのだが、千葉の政治や行政は千葉県民の利便のことばかり考える傾向にある。おらの村から東京へではなく、首都圏全体から快適に千葉県に来てもらうことを考えないと千葉県の観光は地盤沈下してしまう。

*1:埼京線りんかい線を経由して京葉線系統でもホームライナーを必要と要望したもの