行先案内表示機の文字が小さい

 首都圏のJRや地下鉄の駅のホーム。今度来る電車の時刻や行先を案内する電光掲示板がフルカラー液晶のものに置き換わりつつある。

 新しいのがこれ。(JR東日本のサイト*1より引用)

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 今まで馴染みがあったのがこれ。(JR東日本のサイトより引用)

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 新型は、情報量が多い。都営地下鉄ではあの画面に無理やり路線図を表示しようとしている。千代田線では、小田急直通電車の停車駅を文字スクロールさせているが、自分が行きたい駅の名前を、次から次へと出てくる文字から拾わなければならないので、初めて来た人にとってはテレビのクイズ番組に挑戦させられているような気分になる。あれで「次の電車は経堂に行きますか?止まりますか?」と尋ねる人が減るとは思えないが、減らないとわかると会社側はもっと情報量を増やしにかかるような気がする。

 それにもかかわらず、機械の大きさが以前のものより小さくなっている。これまで2行表示だったものを、同じ高さで3行表示にしたような感じだ。その結果、文字が細かくて見えにくくなっている。

 目が悪い人は近づいて見なければならないが、頭の上にあるので上を向かなければならない。さらには、ごちゃごちゃいろいろな情報をかわるがわる出すので、読みたいものが出るまでずっと上を向いていなければならない。

 鉄道会社の人にも、身近にお年寄りがいるだろう。連れてきて、駅のホームに立たせて文字が読めるか試してみたらどうか。同様に、小学校2年生くらいの子供にも読ませてみたらどうか。機器選定の時にそれくらいの手間をかけたほうがいいと思う。それともあれは単なる飾りなのだろうか。

 なんでこうなるのか、わかる気もする。天井が低い駅があるので、どの駅にもなるべく同じ機械を採用して機械の種類を減らそうとすると上下の寸法を抑えたくなる。1機種あたりの生産台数を増やすことができるし、修理部品の保管点数を減らすことができるから、調達価格を抑えることができる。

 それは「標準化」という取り組みで、投資を抑えたいからそういう発想になるのだろうが、今はテレビやパソコンモニターの液晶はとても安いので、やたらと横に長い液晶を鉄道駅向けに特注するのではなく、汎用製品を使えばいい。

 文字情報だけでなく、図形も使いやすくなるから、より直感的に情報を伝えやすくなるのではないか。

 薄型モニターは改札口付近では設置が進んでいて、交通障害情報などを流すのに使われている。しかし、駅のホームに設置するものは列車風に耐えなければならないなど、いろいろな理屈をこねて頑丈な筐体の特注品を使わなければならないということになっている。

 似たような特注病に陥っているのが高速道路会社で、大雨突風雷など、あらゆる気象条件にも耐える電光掲示板を設置しなければならないということで1台数千万円するらしいが、近年は交通信号機も薄くて小型のものが出てきているので、いろいろな業者に競争させればもっと安くていいものが造れそうなものである。

 テレビのモニターは16対9の寸法で縦に長すぎると思うのかもしれないが、そもそもホームと垂直に設置して天井から吊り下げなければならないという固定観念が間違っている。

 入線する列車と平行になるように画面を配置して目の高さに設置すればよい。この設置方法なら高さ制限はありえない。

 以前はホームのベンチといえば、電車が通るのを目の前で見られるように配置するのが当たり前だった。しかし、電車の進行方向に対して横を向いて座るものも出てきた。案内板も90度回転させてみてはいかがだろうか。

 列車と平行にしてしまうと、画面の前にいる人にしか見えないが、垂直にすることで遠くで列車を待っている人にも見えると思った人がいるかもしれない。鉄道会社と機器メーカーの人はそう思っているに違いない。しかし、先に書いたとおり、文字が小さいので結局近くにいる人でなければ読めないのだ。それならば、大型テレビの液晶を使えばとても安い値段で見やすいものが作れる。設置台数も増やせるかもしれない。テレビ液晶は画面の縦横比が同じなので、ひとつのソフトウェアで大きなものから小さなものまで作れる。

 そもそも、この位置は路線図や時刻表が掲示されている場所である。ところが、一部路線では駅のホームから時刻表を撤去する動きがある。JR横須賀線は15両編成でとてもホームが長いのだが、時刻表を撤去して文字が細かい表示機が2箇所という駅もある。

 紙の時刻表はダイヤ改正のときしか交換しないし、そんなに高いものでもないが、それさえも合理化してこれからはスマホでどうぞという。ただ、スマホの時刻表は当駅始発の便が調べにくかったり、何度も何度もあれこれタップしないと時刻が確認できなかったりする。日常の通勤通学客であればよく使う路線をアプリに保存したり、ショートカットを作ったりすることはできるが、観光客や日本語が読めない人、子供は置き去りにされている。

 視線の高さに設置したらいたずらされるかもしれない? いいえ、都心の駅ではデジタルサイネージ(モニターを使った広告)が花盛りである。広告は見やすい場所に設置して、行き先案内は見にくい場所に設置する。そこまで金儲け優先でいいのか。

 私鉄を中心に、電車の側面の行き先表示機は大型化が進んできた。「通勤準急東武動物公園*2という行き先にアルファベットまで表示しようとして東京地下鉄8000系や東急8500系は大変なことになっていたが、東武の新車は半蔵門線直通も日比谷線直通も東武動物公園が大変読みやすい。京王も小田急も大型化を進めていて評価できる。ただ、東京メトロ東武日比谷線東武スカイツリーライン向け車両に導入した駅ナンバリング表示つきのカラーディスプレイは、駅ナンバーの数字が小さい上に丸で囲んでしまっているので、遠くからでは読めない。東京メトロが絡むとどうしても文字を小さくしたがる。

 きちんと文字で情報提供をしていただいて、自動放送と駅員のカラオケは最小限にしてほしい。よろしくおねがいします、と言いたいが読んでくれないよね。