特別定額給付金でようやく触れる機会ができたマイナポータルについて

 特別定額給付金をマイナポータルから申請したが、しばらく待っても振り込まれなかったので不安になっていた。
 申請直後にメールはもらったのだが、報道にて「申請書の辞退の欄にチェックが入っていると、せっかく申請したのにお金がもらえない」というのを知り、もしかして自分はチェックを入れてしまったのではないかとドキドキした。
 その後、郵便にて「決定通知書」という紙をいただいた。

オンライン申請しても、通知は郵便なのか

と思った。
 マイナポータル以外にも、すでに国や自治体は電子申請システムを運営している。ただし、マイナポータルが提供する「ぴったりサービス」は、これまでの申請とはいくつか違いがある。
 一つ目。申請を待っているだけではなくて、国民からアクセスするとその人に合った申請をリコメンドしてくれる機能がある。郵送や自治体の広報などで教えてもらえないと申請を行う動機が起こらなかったものが、国民から申請できるものを探すことができるようになった。
 ただし、実際は申請の一覧が出るだけで、これを使って探そうという気にはあまりならない。特にスマートフォンではだらだら縦スクロールさせられるのでつらい。
 二つ目。自治体から送られてくる申請書の場合は、自治体が保有している情報を申請用紙にあらかじめ印字して送ってくれることがある。ところが、ぴったりサービスではマイナンバーカードの情報しか自動入力してくれない。自治体は住民台帳に基づいて世帯の情報を取り扱うことができるが、マイナンバーカードは個人の情報しか入っていなくて、家族の情報を取り寄せることができない。よって、家族が多いと家族の名前や生年月日をひとつひとつ手入力しなければならないことがある。
 ただ、通常、世帯の申請をするときに同一世帯に同一氏名の人がいるのだろうか。日本太郎さんの娘の日本花子さんが、別の東京太郎さんと結婚して、入籍にあたって日本姓を名乗って同居すれば同一世帯同一氏名の人が存在することになり、お父さんの太郎さんとお婿さんの太郎さんを識別するために生年月日が必要となる。ただ、そういうときだけ生年月日を入力すればいいのではないか。個人を特定するときはかつては住所・性別・氏名・生年月日の4情報と言われていて、性別はいらないのではないかとなったが、相変わらず氏名と生年月日は入力必須となっていることがほとんどである。ちなみに、戸籍に同一名を登録することは禁止されているので、生年月日が同じ双子に同じ名前を付けることはできない*1
 マイナンバーを世帯単位にすると複雑になるので、個人単位に付与したことはいいのだが、申請の必須入力項目を見直してはくれないだろうか。
 三つ目。これが今回話題にしたい問題である。申請者が出した申請書に従って行政機関が処理を行うまで、いくつかの段階がある。

  • 到達 これは、何かが届きました、という段階。
  • 受理 届いたものが申請であると理解し、中を確認する条件が整いました、という段階。
  • 処分 受理した申請の中身を確認し、制度に乗っ取って手続きを踏んでいいかを確認し、決定権者が決裁して、実際に申請内容に対して役所の手続きが行われた段階。

マイナポータルは、到達と受理については電子メールで通知する機能があるのだが、その先をすぐに教えてくれない。特別定額給付金については、実際に支払いが決定しました、という通知が早くほしいのであるが、それがなかなか届かず、長々待ったあげくようやく郵送で送られてきた、ということである。わたしの場合は申請から決定まで約20日。その後郵送されてさらに1日後に配達となった。
 申請に似たものに「届出」というものがある。これは処分権者の応諾がない、すなわち形式さえそろっていれば却下がない手続きなので、通知が忘れたころにやってくることがある。ただ、応諾がないからといって、届出が届いていないと届出者に不利益が発生することがあるのは申請と同じである。例えば、児童手当は現況届が市区町村役場に届かないと振り込まれなくなる。届け出がないと活動が違法となるものもあるので、受理しました、だけではなくて、その後の結果をきちんと教えてもらう必要がある。
 ところが、マイナポータルは最後の結果通知の機能がない。
 理由は簡単で、申請・届出は、処分の方法が手続きによってばらばらだからである。申請内容と役所が持っている情報、そして法令の内容を比べて判断を下すことになるが、
使う情報はひとつひとつの手続きによって異なる。だから、マイナポータルはシステム化できなかったのだと思われる。
 特別定額給付金の場合は、住民基本台帳の内容と申請内容を職員が目で見比べて、通知書を作成し、印刷、封緘して送る、という流れになった。目で見比べるあたりから人力と紙に頼ることとなった。
 オンラインの方が郵送よりも時間がかかるのはここに理由がある。郵送であってもオンラインであっても、途中で職員が住民基本台帳の内容を見比べるという作業が入る。その際、紙面の申請書は途中まで役所が記入しているので間違える可能性が少ない。さらには、役所が自分で間違えなければ同じ申請書は1枚しか来ないので、申請の重複を確認する必要がない。
 他にも、国民になじみのあるところでは、ふるさと納税マイナンバーが活用できていない。ふるさと納税ポータルサイトが多少システム化を手伝うことはあるようだが、通知を送るところは手作業と紙に頼っている。
 その結果、役所(総務省を除く)はマイナポータルをあまり使ってほしくなくて、郵送でお願いします、郵送でお願いします、をあらゆる手続きで連呼することになる。総務省内では、電子申請が普及しなくて困っている部署と、郵便局の仕事がなくならなくて喜んでいる部署があり、複雑なことになっている。

*1:漢字が異なればよみが同じでもいい