建てる前に見学

はじめての注文住宅を建てることになりました,、というあなた。
注文住宅を建てられるほどの所得水準ではあるが、家を建てるためにまとまった支出をするために必要以上に財布のひもがゆるまないようにしたいという人向けにアドバイスをします。
大金持ちなので、予算は無限ですという人にはどうでもいいことかもしれません。
建築図面の初版ができ、業者と打ち合わせが始まるという前提で書いていきます。

さて、この時、建築業者以外に施主が何度か通うべき場所はどこでしょうか。
住宅設備メーカーのショールーム? それはそれで業者さんから誘われたら行きましょう。

正解は、大型ホームセンターです。
近くになかったら、車、レンタカー、高速道路、なんでもいいですけれど、移動時間と交通費を惜しまず、とにかく超大型店に行きます。
最近は百円ショップの収納グッズも充実していますが、小物は部屋を狭くするだけです。ピンポイントで選ぶならいいですが、わたしのおすすめは、木材や建材も売っていて、1日かけても回りきれないような店です。
地方在住の場合は、一度は大都市近郊の巨艦店に行きましょう。
また、できれば将来通うことを想定して、建設予定地に近い店を見つけておきましょう。

ホームセンターで売られている物はなんでしょうか。
消耗品以外のものは「現在の住居における不満を解消するもの」が並んでいます。
あなたは、

  • 注文住宅を建てた直後になるべくお世話にならないようにしなければなりません。
  • 注文住宅を建ててから数年経つと補修のためにここに来なければなりません。

運動しやすい靴を履いて、店に入ります。
まずは、建てた直後にあれこれ後悔している自分をイメージします。
具体的に何を後悔しているのかはこれから店内で見つけていくので、とりあえず何も考えなくてもいいです。

大きな店に行くと、自分の好きな物の売り場に行きがちになりますが、好きな物さがしならば、無印良品やロフトやハンズでもいいですが、それが目的ではありません。
へえ、こんなものも売っているんだ、という発見がありそうな店がいいです。住宅に関係ある大物、小物の売り場を全部回ります。

買いに来た人のことを想像してください。
隙間収納家具のコーナーでは、ああ、隙間が起こってしまいがちだから売れているんだなと気づいてください。
隙間が発生しないためにはどうしたらいいか。
隙間 = 家具を置くスペース − 家具の大きさ
です。スペースの大きさと家具の大きさをうまく調整すれば隙間がなくなるのだなとわかります。
あとで図面を見せられたときに書かれている寸法について、具体的なイメージがわくようになります。

ただし注意したいのは、熱が出る電気製品は排熱のため、そして設置交換作業のための隙間が必要だということです。
エアコン、冷蔵庫、電子レンジなどです。
これらをぴったり入れる場所を作るのはやめましょう。設置、運送業者さんが大変なだけではなく、電気代に影響します。また、火災のリスクもあります。

逆にぴったりにしたいのは押入れ収納です。例えばプラスチックの押入れ収納ボックスを使いたければ、売り場に行けばどういうサイズのものが売られているかを知ることができます。
たくさんのサイズが売られているのでどれかが合うだろうと考えたあなた。甘いです。
みんながサイズが合わなくて困っているから、バリエーションが増えているという風に考えてください。
そして、ホームセンターで売られているのは、需要が多い集合住宅や賃貸住宅向けのサイズです。
注文住宅で適当に押し入れを作ると、20cm余るといったことが起こりますが、余りは隙間収納によって最終的にはなんとかなります。実は足りない方ががっかりします。
現在の自宅で使っていた衣装ケースが、ちょっとした柱のでっぱりのせいで入らない、なんてことが起こるととても悲しくなります。
引越し直後に大型ゴミが出るわけですから。
たくさんのサイズが売られているものを売り場で見つけて「こういうものがサイズがばらけるのだな」という感覚を得ましょう。
そして、それが置かれるのはどこかということをイメージしましょう。
今持っている家具や収納のサイズを測ってみようということに気づくことができれば、なお良いです。

さて、いったん店の外に出て、頭を切り替えます。
あるいは別の日にしてもいいでしょう。
次のあなたは10年後のあなたです。
ちゃんとサイズも測って満足がいく図面に仕立てたとしても、住んで10年経てば、いろいろな物が壊れ始めます。
あなたは修理交換をしなければなりません。
それに必要なものは売っていますか。メーカーに電話しても「供給は終了しました」と言われることが多くなるのが10年後です。

例えば風呂ふたです。
特に巻くタイプのものは凹凸が多くて掃除が面倒。さらにはかびが中まで広がってしまいますので、買い替えを決意したとします。
掃除のためには板状のタイプがよいと考えるかもしれません。
その場合、軽量薄型のタイプと、保温性の優れたタイプがあります。
どんなサイズの浴槽メーカーも純正のふたは売っていますが、交換するとなると3万円が下限です。
単なるふたに3万円は少しビビります。
すると、ホームセンターで3千円で売られているふたにしようかなと10年後のあなたは考えるでしょう。

するとどうでしょう。超大型店に行けば、たくさんのサイズのものが売られていますが、あなたの選ぶ予定の浴槽に合っているでしょうか。
せっかく家を建てるのだから広めの浴槽がいいとかリクエストしていませんか。
広い浴槽のふたは特注になってしまいます。
浴槽の周りには手すりがついていたり、謎の凹凸がついていたり、水を抜くためのボタンがついていたり、ふたを置くときに邪魔になる物が意外とたくさんあります。
平において塞がないと、冬はお湯が冷めてしまいますし、傾いた状態でふたを使い続けるとふたが歪んでしまいます。
邪魔な部分を避けるための切り欠きが必要です。
切り欠きが入ったふた、売っていますか。たぶん売っていないと思います。
そういうことを理解してから、おふろのショールームに行くべきなのです。
この部品の替えはホームセンターで売っていますか?って、図面が確定する前に10回は質問できるようにしてください。

次に建材のコーナーに行き、どういう色目のものがよく売られているのかをチェックしてください。
特にどの部材ということではなく、もしかしたらこういうのも買うことになるかもと思って半日かけて全部見てまわりましょう。
自動車もそうですが、人気の色というのがあり、人気があれば入手しやすいんですね。
ちょっと床材や塗装がはげたときなど、入手困難なので全とっかえ、または、あきらめるということがないようにしたいです。
住宅設備メーカーの色見本だけを見て、色は決めないことです。

この作業は、ネットのショップでは無理です。そして、1回では無理です。
建築業者やショールームに行く間に1回挟むくらいでもいいくらいです。ショールームに行った後にホームセンターとか。図面見に行く前にホームセンターとか。
建てた後の後悔を減らすというのはその後の幸福感に大きくつながります。