楽天モバイル

 「楽天NMO、まあまあ使えるんじゃない?」という記事を書こうとしたところ、5月1日に大規模障害が発生。この日のわたしはSIMがささったスマートフォンWifiでしか使わなかったし、MNP回線に限定された障害だったようで被害はなかったが、稼働状況を確認するWebサイトがどこにあるのか確認するのが難しかった。network.mobile.rakuten.co.jpにおいて、「障害情報のお知らせ」(または「障害告知一覧」)というページ

network.mobile.rakuten.co.jp

は「トップ>サポート>障害情報のお知らせ」という階層に存在するが、このページをサポートページのトップからたどることはできない。これを書いている5月2日現在は障害が収束した後だからかもしれないが、障害が終わったとたんに隠す必要はないはずである。隠す気がなかったとしても、楽天モバイルGoogle検索エンジンにアナウンスを委託してしまっている。

 でもまあ、はじめたばかりの会社にしてはがんばっている。いろいろ経験したことを以下にまとめる。

良くなかったこと

本人確認書類

 アンリミットが開始されたタイミングで申し込んだ。申込は完了したものと思っていたのだが、本人確認書類が鮮明ではないため保留になっていると言われた。

 スマートフォンで撮影すると手ブレや影が入りやすいので、スキャナーでスキャンして画像を送ったのだが、エラーメッセージを読むとスキャンした画像はだめだとも書いてある。スキャンとカメラの差は何だろうか。

 SIMカード発送開始のタイミングまでに手続きが完了したからよかったが、もし間に合わなかったら契約をあきらめていたところだった。

 オンラインで申込みをした後は、メールボックスを頻繁に確認することが必要。

my 楽天モバイルアプリ

 このアプリの画面を開発している人、レビューして承認した人の感覚がおかしい。

 アプリを開くと、Rakuten Linkアプリ アップデートのお願い というリンクが冒頭に常時表示されるが、消せない。家電の説明書じゃあるまいし、開くたびに毎回警告マークを見せるというのはお行儀が良くない。

 そして、

・データ利用量(全エリア)0.0GB

の意味もさっぱりわからない。どうやったら0GBの数字が変わるのだろうか。そして、利用者に何を告知したいのだろうか。

 全エリアというからには、楽天回線エリア+パートナー回線エリア+海外エリアの合計の値が表示されるものだと想定していた。しかし、端末のWifiを切っていても一向に数字が増えない。auも入らないような山奥に住んでいるわけではないので説明がほしい。

 データ制限モードのon・offは使いやすいけれど、上記のアップデートのお願いとか0.0GBの下にスイッチがついている。

情報公開が足りない

 冒頭の障害情報もそうだが、基地局増設状況は頻繁にアナウンスした方がいい。auパートナー回線で使用感には問題ないのだが、不感地帯が多そうというイメージが定着してしまっている。積極的に情報開示をすべきだ。よく探せば見つかるかもしれないが、たくさんお持ちの広告枠を使って、前日比○○箇所増設と天気予報並に宣伝すればいい。

ローミングの切り替えに時間がかかる

乗り物で移動中に自社回線エリアに入ると、数十秒程度モバイル通信が途切れる。移動中の動画視聴はキャッシュによって影響を受けない可能性もあるが、ライブ配信やリモート会議は不安定になるかもしれない。

 

良かったこと

保証外の端末でも使える

 楽天モバイルは自社販売端末以外は保証外としている。しかし、家で余っている端末を使いたくてSIMだけ注文した。eSIMを使って、iPhoneでも使えた事例はネットでよく見かける。一方、Androidは機種によって送受信できる周波数が異なるので、解説記事を書いている人も保証外端末に関する言及は限定的だ。

 わたしが最初に試したのは、ASUS ZenPad 7.0 P002(Z370KL)。SIMフリータブレットである。Volteに対応していないので通話はできないことは想定していたが、LInkアプリでのアクティベーションもできなかった。電話回線が開通していないのでショートメールサービス(SMS)も利用できなかった。ただ、それでもデータ通信はできた。保証外端末では周波数が対応していないので楽天回線は使えないという噂も見かけたが、パートナー回線だけではなく楽天回線も使えた。テザリングもいけた。

 外出時にインターネットを利用するには問題なかったが、これでは3,000ポイントプレゼントキャンペーンの特典対象とならないため、SMS認証を完了させたかった。また、この機種はデータ量をセーブするモードがないので、パケットというよりは電池の消費が激しくて今の機種に比べると外出での利用は厳しい。

 次に試したのはSoftbank 706SH AQUOS R2である。SIMロック解除は済ませてあった。Zenpad 7.0はMicro SIMで、AQUOS R2はnano SIM。送られてきたSIMは追加のアダプターを使うことなく、normal、Micro、nanoのいずれでも使える。最初使うときにMicro SIMのサイズに合わせて型から外したので、外側の枠を手で外してnano SIMサイズにする。再びMicro SIMとして使うかもしれないので、このとき外した枠は保管しておく。

 APN情報を自分で入力する必要がある。

APN: rakuten.jp

MCC: 440

MNC: 11

APNタイプ: default,supl,tether

APNプロトコル: IPv4/IPv6

APNローミングプロトコル: IPv4/IPv6

ベアラー: LTE

公式端末を使えば何も気にする必要がない情報だが、あとになって楽天モバイルのWebサイトに掲載されるようになった。問い合わせが多かったのかもしれない。しかし、APNタイプのうち、dunは入力できない端末が少なくないようで、dunはtetherに置き換えることで入力完了。

 入力後はつながらなくて焦るが、いったん機内モードにしてすぐに解除すれば電波を掴む。このときにわざわざ楽天回線エリアまで行く必要はない。auさえつながれば開通が可能だ。

 Linkアプリでのアクティベーションも完了。上述の0.0GBのままなのも保証外端末だからかもしれないが、とりあえずWeb利用、アプリ、通話、SMS、おサイフケータイすべて問題ない。テザリングも問題ない。

そこそこ使える

 外に持ち出してみる。例えば東京都内に入ると楽天回線が入るところも少なくない。郊外までエリア内としているマップは誇大広告ぎみで、2G時代の1.5GHz帯やPHSを思い出させるものがある。パートナー回線であるauが頼りだ。

 パートナー回線エリアでは速度制限をかけないと5GBの制限がある。しかし制限をかけてもYoutubeの閲覧は全くストレスがないし、普通の使い方では速度制限を解除したいと思うきっかけがなかった。常時速度制限モードありで使う限り、全国どこでもデータ使用量無制限。三木谷さんは赤字垂れ流しかもしれないが、言うことに間違いはなかった。

 これではソフトバンクが提供している動画SNS放題のサービスが全く意味がない。2,980円でも同じように使える。

 なお、MVNOのように、昼休みになると回線が混むことがないかどうかについては検証できていない。サービス開始の今が外出自粛の時期にぶつかってしまったため、仕方がない。

電話とSMSが無料

 Linkアプリを使えば通話は無料だし、SMSは楽天以外のメッセンジャーソフトでも送受信が可能。しかも無料。

 他社でも旧ウィルコムが始めた通話し放題に相応するサービスはあるが、SMSは地味に課金されるし、時間制限がある場合もある。定額料金がかかるものもある。

 5Gをどうするつもりなのか発表はないが、料金プランは1種類だけと言っているのだから、5Gも同じ料金で提供してくれるとありがたい。

料金プランがシンプル

 通信各社の決算発表ではひとりあたりの平均収益額、ARPU(Average Revenue Per User)を公表している。利用者をいかに騙して多くお金を取れたかということが株主と金融市場に対する報告事項となっている。

 楽天さんは通信単体で儲けようとは思っていないので、料金プランやキャンペーンを複雑にしたり、新規のときだけいらないオプションをつけさせたりということをやる必要がない。アンリミテッドでは、セキュリティのソフトウェアは標準サービスとした。本当に勧めたいオプションは標準に含まれている。

 ARPUはシンプルに考えれば2,980円。月額固定なのだから2,980円。海外に持っていって誤って使いすぎてしまう人がいるかもしれないので無料期間終了後の実際の収益額平均は少し高いかもしれないが、3,000円程度から上がりもしないし下がりもしない。

 他社さんの場合は決算ごとに変動する。料金を複雑にするのはいいけれど、お店の人にも計算ができずに「実際の料金は請求書でお確かめください」というのはいくらなんでもやりすぎである。さすがに従量課金部分は契約者がどれだけ使うか予言できないが、月額固定費目や、キャンペーンの割引適用有無はその場で検証できるようにして、試算ツールなり店頭の端末でいったん見せた数字を超える請求をするのは禁止にしてほしいくらいだ。

 「キャンペーンがありますが、適用対象かどうかは確認できません」って、それはないだろう。本部の人は知らないかもしれないが、知識がない代理店の店員は平気でこういうことを言う。「家族割引と光回線のセット割引は併用できません」の類もわかりにくい。他社との月額固定費を比べることができないようにしている狙いは承知しているが、それは業界の都合であって契約者には関係ない。

 ペーパーレスはいいんだけれど、数カ月分の課金額のシミュレーションをしてくれることがあるが後で確認できない。そんなにシミュレーションに自信がないのだろうか。

 楽天はサービスをたくさん持っているので、いろいろなサービスからバンドルを期待されていると思うのだが、キャンペーン割引はやらない方がいいと思う。個人契約者なら誰でも平等に3千円がわかりやすい。楽天は幸いにもポイントが個人に認知されているので、ポイントで調節したらよい。わたしが言わなくても楽天はわかっていて、端末の値引きはポイント付与をやっている。

 当初1年間無料で、利用者の期待値をかなり高めてしまったので、この先の収益化が難しいかもしれないが、価格よりもシンプルこそが楽天の競争力である。

MNP してよいか

 わたしは現回線をいきなり捨てて楽天だけにする勇気はなかったが、これから楽天を検討する人は番号ポータビリティ制度を使って引っ越しをしてもいいかもしれない。

 ただし、以下の場合は今の回線をそのまま使った方がよい。これらはいわゆる格安SIMを使おうとしている人と同じ条件。

  • よく行く場所でauの電波が届かない人
  • 家族割などが解除されてしまう人
  • 今の通信会社の残債が多く残っている人
  • 携帯電話の回線で、パソコンのテザリングを行っている人

 前述の通り、3密の状態が復活したときにも使えるかどうかはわからないので、あまり詳しくない人は慎重にやることを勧める。新規回線であれば、無料期間のうちに解約すればダメージが少ない。