厚労族

2008年7月22日付のある新聞によれば、

  • 昔は道路族が組織票もカネも集めた
  • 今は厚労族

なのだそうだ。厚労族の方には述語が書いていないから「厚労族=組織力・集金力がある」とまでは明記されていないが、そう読み取れなくはない。
若者の投票率が低く、高齢者が大票田だとも書いてあるので、少なくても、年金・福祉の充実を期待する票を背景にした勢力との印象を与えたいように読める。
ただ、平均的な高齢者はかつての土建業者ほど献金してくれないし、土建業者の応援社員ほどばりばり選挙活動支援をすることはない。業界の縛りのないばらばらの個である。特定財源は道路のように派手に使えない。
何より、高齢者政策に期待して自民党に投票するという話は聞いたことがない。地方で効果的な政策が行き渡らずに苦しんでいる第一次産業の従事者には、厚生労働省が分類するところの「前期高齢者」が一定の割合で存在し、その職業的立場から、与党を支持しないという話は聞いたことがある。「漁船燃料高騰への対策をせず漁港整備を続けるのは的外れだが、長寿医療制度における負担割合を暫定的に下げてくれた。だから自公の政策は100年安心」という選挙民がいたら、どうやったらそういう思考ができるのか研究する価値があるだろう。
道路族に代わる勢力に位置付けるのは無理がある。
その新聞によれば「むかし道路族、いま厚労族」という言葉を使っているのは若手議員だということになっているが、もし本当にそんな認識なら次の選挙で与党はだめだ。野党議員だとしたら政権交代は無理だ。
一記者の妄想だったら、出稿を許した編集部のセンスを疑う。

族議員とは何だったか?

郵政族・道路族を例にするならば、族議員の特徴は、

  • 官僚との癒着 (裏の政策立案体制、天下り先の確保、一般会計と分離された安定的な予算)
  • 業者との癒着 (献金、組織的選挙協力、全国的支援組織、雇用維持に直結する税金配分)

と、政・官・業にわたって人と金のつながりがあることだ。お金を渡して人を集める、お金を囲って人を寄せ付ける、そういう仕組みの中心にある議員集団だった。
今の国会議員はお金を持っていない、ということになっている。テレビに出る議員は財源、財源、と言うが、財源再建という意味で言っているのではなくて「わたしはお金を持ってこられません」という自白のように聞こえる。
金権勢力は今後は現れないと思う。代わりに、ねじれ国会でよくも悪くも何もやってくれない人たちになるかもしれない。
非公式で少人数で不透明な政策決定をする集団というのは今後も残ると思うが、官僚の出したデータに基づいて議論しているわけで、官僚の外部審議機関というだけだ。少数与党では影響力も限られてくるだろう。取材すると重鎮の議員先生はおっかなくて、記者にとってはかつての族議員のように見えるかもしれないが、国民に見えないということは誰も支持していない。