東京都が地方自治を発揮

 東京都庁が、自粛要請対象業種への休業補償をするという。

 緊急事態宣言の対象地域となっている首都圏の隣接県からは、要請の対象と休業補償のあり方で足並みを揃えたいという意見があったが、東京都は押し切る方針を見せ、神奈川、千葉は従わざるを得ない状況になってきた。

 小池都知事の「社長かと思ったら中間管理職だった」発言も印象的で、西村担当大臣と議論を重ねながらも、最終的には地方のことは地方で考えるという地方自治が珍しく発揮された形となった。

 小池都知事がリードしているのか、知事の側近が考えているのかはわからないが、これまでになかったことである。

 愛知県は、県独自の緊急事態宣言を発出。法律に基づく国の緊急事態宣言と紛らわしいのだが、これとは次元が異なる。東京都は通貨発行権がないのに財政支出をする覚悟を示し、他県は財源を示せていない。

 早速国に対して財政措置を求める声が知事などからあがっているが、国は事実上拒否の姿勢だ。

**国の二分化のはじまり

 国の行政事務を代行してもらうという建前で配られている地方交付税の仕組みによって、地方自治体の裁量は大きく制限されていた。地方の創意工夫の範囲は限界があり、何かしようとすると総務省は指導を入れる。泉佐野市のふるさと納税禁止はいつまで続くのだろうか。

 都道府県としては唯一の地方交付税不交付団体である東京が、豊富な財源を用いて独自の政策を始めるようになる。周辺の県との同調圧力があっても「自分たちのことは自分でなんとかしなさい」と切り捨てる。

 東京に住んでいる人とそれ以外の人とで、受けるサービスが大きく変わってくる。これまでは水道料金や医療費助成に差がある程度だったかもしれないが、異なる国に住んでいるかのような差異が広がるだろう。

 東京共和国とそれ以外の日本。

 与党の国会議員は均衡発展を引き続き主張していくのだろうが、財務省の緊縮財政が改められない限りは肝心の財源が出せない。

 東京が住民サービスを決め、他県がそれに追随するという流れになると、日本の政治は外交・防衛を除き東京都知事が決めるということになってしまうので、中央府省全体から反発がありそうである。

 新型コロナウィルスは様々な分野に変革をもたらす。