参議院の多様化

投票率=小規模団体不利の定説覆す

2019年7月の参議院議員通常選挙立憲民主党は倍近い躍進を果たしたが、「躍進したね、以上」でみんながスルーしている状況が哀れ。
枝野さんを軸に政界再編、といった声も全く聞こえない。
国民民主党がブレーキを踏み、民進党時代の党勢は確保できなかったというのが一般的な見方で、民主党分裂は後世において野党衰退の象徴のように語られることであろう。小池百合子さんは今回沈黙を保っていたがとてつもない影響を国政に与えたのである。
維新も2桁に乗せたが、「維新は躍進するも、改憲勢力は3分の2に届かず・・・」と維新自体の話はそっちのけで改憲の話とセットで語られてしまう。
そんな中、NHKで報じられるN国の当確発表はサプライズであった。そして、「投票率が下がると大政党に有利だから」と投票を呼び掛けていた山本太郎代表率いるれいわ新撰組が2議席を獲得。クラウドファンディングにも成功し、小規模政治団体として届け出るも今回政党要件を満たしてしまった。小規模であっても、一気に組織票を固めることができる実例を作ってしまったことは大きい。日本新党や前々回の東京都選挙区における山本太郎候補のような前例はあったわけだが、今回の山本候補は選挙地盤を捨てて2候補を国会に送り込むことに成功しているわけで、もともと自民党議員・熊本県知事であった細川護熙氏よりも見事である。

障碍者は何にでもなれるのか

さて山本太郎代表が送り込んだ2名の障碍者議員。マスコミは画期的だと賞賛している。
参議院の本会議場に入れる人は、

である。ここに参議院の本会議場に初めて介護者として秘書を入れたのはなんと鳩山一郎首相だという。なんと、先駆者は与党重鎮だったというから驚きであるが、首相は採決には参加しない。舩後議員は介護者が必要なうえ、電源がないと生命を維持できないし、ひとりで発言することすらできないという。
政策を立案するのも能力であるが、わたしは即時に発言する技能の能力のひとつであり、能力がある人が選ばれるべきだと思う。議会の運営はお金がかかるし、緊急を要する議案や議決も存在する。特定枠を使った裏技で、自ら訴えかける力を持たない人が議員になることには少し疑念がある。
参政権は保証すべきだが、議員になる必要があっただろうか。山本太郎代表が雄弁に代表質問した方が、委員会では主張が伝わりやすいと思われる。
ただし、
ただしだ、
れいわ新撰組障碍者本人がカメラに映ることが重要だと考えているのだろう。
上記の疑念は現在の常識に立って考えた場合であり、テレビ朝日の取材ビデオを見る限り、舩後議員自身も努力しているらしい。新しい技術を取り入れてひとりでもパソコンで作文ができる仕組みを整備しようとしている。パソコンに文書が入力されれば、理論上は音声再生できるので、眼球が疲れていなければ介助者がいなくても発言はできるようになるかもしれない。
そして、階段がある議場内を移動して札を渡したり、起立したり、記名したり、ボタンを押したりしないと採決ができないということ自体が古い。病気や障碍をもった人は遠隔投票できてしかるべきである。参議院にはボタンがあるが、衆議院にはない。代理投票や投票不正を恐れているのかもしれないが、オフラインの党議拘束が許されている時点で、議場で投票している人の票こそ怪しいのではないかとみんなが思っている。
車いすの2議員が本会議で入退場するのは時間がかかるが、他のところにある非効率なならわしをなくせばそのくらいの時間は確保できるのではないかと思われる。そもそも、重要法案以外は別室を許可するなどしてもいい。

多様化は進むだろう

参議院事務局は1週間で2議員が登院する準備を進めることになる。突貫工事になるだろうから関係者の方は大変だが、国政参加権はかけがえのない権利なので尊重したい。 女性首相の方が先だと思っていたが、重度障碍者の国政参加も実現した。
特定枠を使えば、有名政治家・大政党の力を借りなくても複数の候補者を国政に送り込むことが可能であることが明らかになった。供託金は必要となるものの、個人の選挙活動は不要で、知名度向上も不要。例えば政策の賛否をネットで議論した後、その結果を投票するだけのエージェント議員が誕生するかもしれない。
衆議院比例代表も全国区にして特定枠を入れればいいのではないか。
選挙制度の教科書には「比例代表は少数意見の反映」と書いてあるが、今の野党のような少数意見がいくらあっても意味がなくて、求められるのは多様化なのだと思う。いろいろな人で構成されて、個々の政策に是々非々で臨むようになれば議論も円滑になる。

長にはなれない

首相や議長、委員長のような要職にはなれないかもしれない。自治体の首長もそうだが、代表者は体力が必要である。そして、傀儡を生む動機が高くなる。本当にその人が意思決定し、その結果が正確に伝わっているか確認しやすくなければならない。介護者が必要な議員にそれを証明させることは厳しい。