テレビとエコ

2008年6月8日は、各局でエコ番組をやっていた。あまりじっくり見なかったので正確ではないかもしれないが、テレビ朝日系の「素敵な宇宙船地球号」でとりあげた水俣湾の特集はよかった。NHKは、いろいろな人が歌を歌っていたなという印象しかない。日テレは食用廃油のリユースや、朝鮮半島から漂流した発泡スチロールの回収など、役立つこともやっていた。人々を集めて自分たちで汗をかいて活動したのだから環境活動と言えるだろう。せっかく再資源化したばかりの油で関ジャニ∞がバイクに乗る必要があったかはよくわからないけれど。
環境問題の解決は、次の4点が重要である。

  1. 持続可能エネルギーの開発
  2. 資源安定供給のための国際政治力の確保
  3. エセリサイクル利権勢力の排斥
  4. 真の環境ビジネスの競争力強化

1と2は置いておいて、エセリサイクルをやめましょう、という運動をテレビでやるのは時期尚早だ。*1ただ、日テレの報道番組でやっていたような、リサイクル商品の擬装表示の告発は取り上げてほしい。ただ、ジャニーズのメンバーを呼んで議論する話題ではないかもいれない。
じゃあ、本当に環境のためになることがビジネスになっていくのを助けていってほしいが、あまり取り上げられない。

コマーシャル

環境特番で、番組スポンサーが流したコマーシャルはできが悪い。トヨタは買い替えでエコだと主張する。ただ、廃棄物の増加や中古車の海外流出を考慮した上での効果を説明してもらったことがない。買い替えると燃費が下がることだけを強調しているようにも思える。
三菱自動車の電気自動車のCMは悪質だ。

CO2排出ゼロを強調してしまっている。

大いに誤解を生む表現だ。
市民は「家庭部門の二酸化炭素排出の多くは電力使用のもので、家の中では出ていなくても遠くの発電所で出ている」と教えられている。それを忘れて宣伝だけを信じてしまった市民が「二酸化炭素が出ない」と思って家庭用電源で充電するようになったらガソリン使用はなくなっても二酸化炭素排出量は増える可能性すらある。
三菱がCO2ゼロと宣伝してもいいなら、別のメーカーは「触媒使用により、排気ガスからの有害物質排出ゼロ」とうたってもよいだろう。それくらいでたらめである。公共広告機構の出番だと思う。
三菱の電気自動車の社会的意義は、新しい技術を開発し、エネルギーの選択肢を広げるとともに、ガソリン車やディーゼル車との競争を促進してよりよい商品を産業界全体で生み出していくことにある。電気自動車はアイドリングがないため、都市部では最有力な方式になっていくかもしれない。ただ、新たな候補を育てていくためには、どうしても最初は、実績が低いリスクを恐れず、初期開発費用が転嫁された高いコストを払ってでも買いたがる「先行ユーザー層」「物好きユーザー層」の存在が不可欠となる*2。彼らには納得して買ってもらいたいものだが、「走行中は」という但し書きを隠してCO2ゼロを強調する手法は先行ユーザーに失礼である。
ふつうにCO2削減と言えばいいではないか。どうしてゼロと言わなければならないのか。
三菱自動車のプレスリリースを見ても、「環境負荷が小さい」とふれる程度でおとなしめである。

発電時のCO2排出量を含めても、同クラスのガソリン車のわずか3割です。

と、Webにはまともな主張*3がきちんと書いてある*4
電気自動車は環境負荷軽減の可能性があるからやめろとは言わないが、このような手法を許せば、今後はエコをキャッチフレーズにして儲けたいだけの企業がどんどんエセビジネスを仕掛けることになる。そうなったら、日本のエネルギー対策は進まない。

*1:いくらペットボトルの分別収集とリサイクルが税金と石油を食い荒らす害悪であったとしても、まだ世間の共通理解は得られていないし、職業選択の自由があるから合法であるかぎりやめろとはいえない。

*2:日本郵政もそのひとつである

*3:ただし、7割減が実証可能な数字なのかどうかはわたしの調査不足でわからない

*4:http://www.mitsubishi-motors.co.jp/corporate/technology/environment/miev.html