無自覚運転

同意したわたしが悪かった。
東京に行ったときにタクシーに乗ったら「こっちの方が早いですよ」と言われて首都高速に入った。
平日昼の都心環状線は交通量が多いものの渋滞はなかった。しかし前にはペースメーカーがいた。都道に最低速度はないから、法定速度制限未満で走ってもルール違反ではない。
右車線をゆっくり走るミニバンを見て、わたしは初心者か上京したてなのかなと思ったが、どうやら違うようだ。首都高速では2車線道路の右車線は追越車線ではないので左車線の車に抜かれることはルール違反ではない。ではないが、右車線の流れが悪くなると、するっと左に車線変更した。このときのしなやかさには熟練を感じた。今度は右車線の車を追い越しながら、これまでの速度を維持して走り続けた。
これは、典型的な車間距離至上主義ドライバーだ。100km/h制限の高速自動車道のような広い車間を取りたがる。安全運転のつもりかもしれない。あるいは、ガソリン高の中でエコ運転を心がけているつもりなのかもしれない。
しかし、これを見て震えだしたのは、早いつもりだった運転手。行く手を阻まれて、体でイライラを表現している。後ろを振り返ったら、10台以上は数珠繋ぎになっていた。タクシーは先導者にぴったりくっついて車間はほとんどないし、タクシーの後ろの車も滞り気味で、カーブで加減速を繰り返す。

ちっとも安全でもエコでもない。

あえて言うなら、車列全体での燃費は増えてもかまわないから、自分の燃費だけは節約しようという

けち

だ。正義感が強い一方で、客観的に自分を見ることができていない。自己中心的とまでは言わないが、無自覚運転である。
警察は車間、車間、と言うが、どうして車間には前と後ろがあることを指導しないのか。警察は道路交通法を管轄する役所。法律では進む方向*1への責任を中心に運転手に課すようになっている。責任ということではそのような整理でいいが、市民の安全という観点では「後ろを気にせず走ったら追突されて危ないですよ」と教えることも重要だ。都会の教習所では、流れの中で自車の位置を客観的に捉えなさいと教わる。初心者にそれを教えるのは早すぎると思うが、更新講習では教えてもいい。
熟練しているはずのドライバーが、サイドミラーやバックミラーで後方を見ていないというのはどういうことか。わたしも時々おろそかになるが、数台を引き連れて先導車をやっている車は全く周囲に関心がないようで危険である。そういう車は首都高はおろか、一般道も走ってはいけない。
「他車の流れに合わせて、制限速度をオーバーして走りなさい」と教える必要はない。ただ、複数車線あって、速く流れる車線と遅い車線があったら、自分の好む速度に合った車線を走りなさいと指導してもよいのではないか。
両方とも速く流れているときに、自分はゆっくり走りたいという意思を持つことは何ら悪くない。後続の車両は追い抜けばいいことだから。ただ、速く流れている側をふさいではならない。エコに反し、渋滞を引き起こす。

*1:前進の場合は前方、後進の場合は後方