日本信号製自動改札機起動せず つづき

 今年の台風が来たときに、列車がなかなか来なくて狭いホームに人があふれていた。わたしがエスカレーターでホームに着いたとき、エスカレーターの降り口のそばまで人で埋まっていて、これ以上人が後ろから来たら将棋倒しになると感じたが、たまたま、すいた電車が入ってきたので、けがをせずに済んだ。しかし、なぜエスカレーターを停止しないのだろうかと憤りを感じた。改札が自動になって駅員が減り、構内の様子をきちんと見ていないのではないかと。
 ホームに人があふれるのはとても危険であるが、これまでは入場規制が有効策として知られていた。しかし、今回の事態の場合、電車から大量の人が降りてくる場合には入場規制では対応できない。
 改札口は、利用者数を計算の上で通路の数が設計されるために十分な排出能力を持っているはずだった。自動改札機は故障する可能性が低くないが、これまで有人改札だったところの場合は改札員が立っていたスペースも通路にすることができるため、理論的には自動改札導入前からあった駅の場合は自動改札導入によって排出能力が十分確保できていると思われた。自動改札化の後に作られた駅は、最初から余裕ある空間と改札口数が確保できているのでまず問題はないと思われた。
 ところが、自動改札の大規模停止というのは想定外であった。「大規模停止--すなわち→大規模災害--すなわち→改札機が動かないときは電車も止まっている」と考えられてきたところがないだろうか。しかし今回は電車が動いて、改札機は動かなかった。輸送が不可能になったときのマニュアルや払い戻し規定は存在するし、過去に数多くの運用例がある。ところが、輸送はできるが運賃収受ができないという事態が大規模に発生したのは今回が初めてである。降車客の集中は、大規模イベントがある一部の駅*1を除いて経験が乏しい。
 地下鉄を例にとると、以下のような駅では出口改札で混乱が起こるとけが人がでかねない。

  • 利用者が多く、かつ改札がホームに直結している駅
    • 銀座線渋谷駅降車ホーム、銀座線虎ノ門駅など
  • 長いエスカレーターの後に踊り場がわずかしかない駅
  • 利用者の多い複数路線からの降車客が1カ所の改札に集中する駅

 新線開通等による輸送力増強や、人口減少によってけが人が出るほどの殺人ラッシュはあまりなくなった。それをふまえて駅員もバイトの整理員に切り替えられ、駅の対応能力は下がってきている。バリアフリー化工事が行われた駅では、エスカレーターやエレベーターが造られて階段や踊り場が狭くなっている。学生・生徒の多い駅では今でも通学定期の利用率が高いが、通勤客については派遣や非正規雇用の増加で定期券利用率が下がっている。定期券もICカード化で財布の底に隠れていたりするから「定期券拝見」ではさばききれない。
 事業者にとっては大きな教訓になったのではないだろうか。きちんとマニュアルを整備する必要があるだろう。

*1:そのような駅は臨時改札口など施設面で対策が採られていることが多い