保守ビジネス

やはり・・・

 サンデープロジェクトでは、エレベーター事故の話題は取り上げられなかった*1田原総一朗さんの番組でもスポンサーに配慮するようだ。

分類

 一度売った物を保守する仕事というのは実にいろいろあるけれど、消費者にとって必要不可欠な存在であるにもかかわらず、従事者の立場で言えば、

一般的に効率が悪いものだ

と思う。ネットの無店舗販売が接客コストをかけずに最も効率がよいと仮定するならば、顧客を訪問してべったり接客する訪問保守は対極にあると言ってよいかもしれない。
 まじめにやっている業者も多いと信じたいが、何か狙い(うまみ)があるのだろうと思う。その魂胆を分類してみよう。

  • 顧客満足度向上型
    • 長期的な顧客定着を目的に、お客様に「サービス」をしようというのがこの型。たとえ客先に据え付けたテレビがつかないと聞いて高速道路を使って急行したら、実はリモコンの電池の交換で片付いたというような「赤字保守」であっても、次もまたテレビを買ってもらおうとがんばる。しかし、最近の客は浮気性で、買うときには量販店に行ってしまうものである。消費者は、本来ならこのタイプの保守業者を増やさなければならないのだが、困ったものだ。
  • 定期置き換え型
    • 1回の単価は安くても、定期的に取り替えることでスケールメリットを生み出そうとするのがこの型。あるいは赤字保守をやるのはごめんなので、訪問員が毎回売り上げを立てられるようにする狙いがあるかもしれない。昔風に言えば富山の薬売りだが、最近は需要予測を行うことで在庫の適正化を図ることができる。顧客はほんとうは自分で買いに行った方が安いが、自分で取り替える面倒がなくなるというところに付加価値を感じる。最近ではダスキンがこのビジネスモデル。
  • 消耗品交換型
    • 定期的に買い換えるには単価が高い場合は、消耗品を切り離してそこを定期的に取り替えるようにする。浄水器のカートリッジならば郵送でもすむが、喫煙室の空気フィルターの場合はわざと専門的な作業にして作業員を送り込むことで技術料も見込める。ただし最近では通販業者や互換品業者が消耗品ビジネスに参入しているので競合の存在が脅威である。
  • 参入障壁構築型
    • 本体単価が高く、消耗品ではうまみがない場合には、次回の更新需要を狙うしかない。そのためには顧客に高価で複雑な製品を導入し、次回の置き換えのときには同じ会社のものを採用するしかないようにする。ただし、この戦略は導入時だけでは仕掛けが中途半端である。顧客には製品の知識を把握させないようにする必要がある。そのために保守まで請け負うことにする。この場合の保守は償いなのである。
    • 亜種もある。他社の保守まで面倒を見ることで、将来は他社の製品を排除しようということもある。最近は製品の汎用化が進んでいる分野もあるのでこういうビジネスも可能になってくる。
  • 法令点検型
    • 保守が法令で決まっている場合は、製造業者もしくは販売業者として保守を提供しないわけにはいかない。値崩れしにくい市場ではあるが、エレベーターの事故でもわかるように価格競争に例外はないのだろう。
  • 新ビジネス発掘型
    • 自動車のセールスマンの「車の調子いかがですか」や、生保レディーの「最近いかがですか」は、顧客のことを純粋に気遣っているだけとは思えない。「新しい注文はありませんか」の言いかえでしかない。この場合に残念ながら発生してしまう修理受注や、生保契約変更の類は営業コストである。
  • 高付加価値型
    • 24時間いつでも駆けつけるなど、ニッチ市場を狙って高い料金設定にすることもある。人件費は高いが、いつでも頼める安心感が固定客をつかむ。
    • 単に保守料金が高いから儲かっているだけの可能性もある。
  • 保険型
    • 実際に保守サービスを提供すると原価割れしてしまうが、全員が使わないとすれば利益が出る。一部の顧客のコストやクレーマー対応コストを顧客全体に負担させようとする。保守業者が保険業者のような役割を担うことにはリスクがあるが、料金が前払いであることのメリットは大きい。
  • 何もしない型
    • 一番ひどいのは、お金だけ取っておいて何もしないというパターン。消費者の敵である。すぐにいなくなってほしい。

*1:スポンサーはSECエレベーター