ロボアドバイザー

存在意義はある

このブログでは、過去に何度かロボアドバイザーについてふれたが、最大手の預かり資産が2024年に1兆円を突破したという。
今回は最大手さんのことを中心に論じていこうと思っているが、ネットで検索すると、このロボアドバイザーをネタにしてアフェリエイトを稼ごうとする記事がいくつか見られる。
わたしは別に小銭が欲しいわけではないので、具体的なサービス名をあげないが、アンチコメントが比較的多めでかわいそうである。

例えばETFの配当金を利回りとみなして、株よりも圧倒的に低いと言っている人がいる。
そりゃ、分散しているので配当がない金にも投資されていて、株100%よりも低いのは当然である。
ただし、この主張の目的は年間2、3%程度しか儲からないと誤認させることにあるようだ。
机上の計算ではなく、実際に投資を行った結果も公表しているので、キャピタルゲインも得られていることが確認できる。もうけがわずかだという指摘は当たらない。

今から10年前に戻れるとしたら、住宅ローンは変動金利が正解だった。円高が終わる民主党政権崩壊のタイミングでドル資産を貯めるのが正解だった。
それはそうだが、世の中信じられない変化がたくさん起こっているときに、過去の正解を未来にあてはめるのは危険だと思う。
2024年は、オルカンかS&P500に人気が集中しているようだ。
過去、多くの人が飛びついた例としては、

  • 10年ものの定額貯金 →高金利時代、10年後に2倍になった
  • NTT株 →上場後、一時期高騰したのちに暴落して、庶民の家計が傷ついた

オルカンやS&P500で成功するか、失敗するかはわからないが、特定の銘柄に頼り切るのが怖ければ長期・積み立て・分散がよかろうと考えて、一択を避けるというのは一つの選択肢だと思う。

ロボアドバイザーの手数料が高いというのは事実だ。競合サービスは最大手をベンチマークに低めの手数料を提示しているところもある。
ただ、この手数料はコーチング料である。
一般の人にとっては、価値が突然なくなりにくいものを買い、買ったことを忘れてしまうのが最も投資効率がよいとされている。
相場の上下に合わせて狼狽売りしないということが何よりも重要である。

なお、狼狽売りを自動で行ってしまうのが為替FX(為替証拠金取引)のロスカットという仕組みである。
元本割れどころか投資資金割れを起こす恐れがあるので仕組みが存在するのは仕方がないのだが、相場が急変したときに、その後回復したのに、一番損の大きいところでポジションが解消されてしまうことがある。
投資に没頭できる環境にない人がのめり込むのは危険である。時間を区切ってギャンブルとして楽しむ分には悪くない。

話を戻すと、通常の証券口座において完全に投資したことを忘れてしまうと、ロスカットされることはない。
問題は分散投資をした場合である。ある資産は値上がりが大きく、別の資産が値下がりしたとすれると、分散の割合が崩れてしまうという考慮点がある。
そこを勝手にやってくれる。自動でリバランスしてくれる。

ロボアドバイザーでは、一度でも売ると手数料の割引を解除されることがある。これを欠点のように論じる人がいるけれど、売りたいという気持ちを抑える歯止めになる。
相場が急変しても評価額が2割減っても、3割減っても、じっと耐えることが長期的な成功には不可欠である。
長期的に成長する資産は、暴落したときに一番急回復するポテンシャルを持っている。持ち続けていたらもっと下がるではなく、持っていたら回復すると信じ続けなければならない。
これをアシストしてくれる仕組みがロボアドバイザーである。

口座開設をしたての頃は、期間を味方につけられないため手数料負担が相対的に重たく、元本割れしやすい*1。また、投資をはじめて最初に訪れる暴落(世界的な不景気、急な円高)のタイミングでも元本割れしやすい。
元本割れという事実を突きつけられると「このままどんどん損が膨らむ」と誤解して売却や解約をしてしまいがちになる。
しかし、サービスに問題なければ継続でなんら問題ない。

「ロボアドバイザーが組むポートフォリオを参考に、同じ割合で自分で購入すればいい」というコメントを見かけるが、それができるのは意思が固い人である。
目の前にボトルに詰めたばかりのワインがあっても、価値が出るまで飲まないでいられる人であればよい。
わたしは、目の前にポテトチップスの袋を見かけたら、一度や二度耐えることはあっても、開けてしまうし、全部食べ終わるまで止められない性格なので、誰かにコーチをしてもらう必要がある。

銀行の窓口や、証券会社の営業にコーチを依頼するのは、手数料を多めに払うだけになってしまって意味がない。
対面で取引をするときには、その人の高給は自分が負担することになることを忘れてはならない。
そのコーチをコンピューターシステムに置き換えて、他の契約者とシステム維持費をシェアするという考え方である。人間のコーチよりは安い。

ロボアドバイザーの新NISA対応

最大手さんが新NISAに対応したので、これまで特定口座、2023年に終了した一般NISAで投資を続けてきた人にとって、使いやすいかどうかを考えてみる。

2023年、ネットのアンチコメント、そして競合サービスを意識してか、税込み1.1%の手数料を引き下げると表明した。

  • 成長投資枠は1.1%
  • つみたて投資枠は0%

つみたて投資枠と成長投資枠との配分はロボットに任せておけるが、新しく始めた人であれば、1:2の割合になるので、最小で約0.7%になる。
しかし、これまで投資された分の手数料は1.1%のままなので、これまでの蓄積が大きい人ほど手数料の引き下げ幅は小さい。

つみたて投資枠では米国株のみ購入する。
現在は株が好調なので、毎月こつこつ積み立てをしてきた人にしてみれば、つみたて投資枠に充当される資金は少ない。
全体のポートフォリオを修正するために、債券や新興国株が多く買われる傾向にあるからだ。

  • 一般NISAの時代からNISA限度額の年間120万円までロボアドバイザーを使ってきた人がいたとする。成長投資枠とつみたて投資枠に変更されて限度額が上がったから、既存の投資資産を限度額いっぱいの年間360万円まで突っ込もうということであれば、ロボアドバイザーを最大限利用できるであろう。新しく始めた人と同じように1:2の割合で口座への入金が進み、限度額いっぱいまで有効利用できる可能性が高い。
  • 一般NISAの時代からNISA限度額の年間120万円程度ロボアドバイザーを使ってきた人がいたとする。成長投資枠とつみたて投資枠に変更されて限度額が上がったが、さすがに月間30万円も投資できるほど裕福ではなく、同程度の資金しか投入できないということであれば、成長投資枠が多く使われて、つみたて投資枠がより余り気味になる。非課税の恩恵はどちらの枠を使っても変わらないが、成長投資枠が活用されないとロボアドバイザーの手数料は下がらない。

つみたて投資枠で米国株以外も購入されるようになれば不安は解消されるのかもしれないが、システムが複雑になってしまうので今のところは仕方ないかもしれない。
次の円高局面や米国株の暴落でどうなるのか見極めたい。

現在、買い直し機能が停止している。新NISA対応のシステム変更作業が遅れているようである。
買い直しが再開されれば特定口座から新NISAの成長投資枠に移されるのだろうが、一度利益が確定して所得税源泉徴収される。税負担による残高の目減りを手数料の低下で補うかどうかに注目である。

プライベートバンクになるのか

最大手さんでは、3,000万円以上の残高については手数料が半分になるという。
世界的な株高とインフレが進み、日本では円安が進んでいるため、サービス創設時から地道な積み立てとボーナスの投入を行ってきた人の中には3,000万円が見えてきた人もいるのではないだろうか。
残高が4桁になっていれば、1日の高騰で数十万、1箇月で100万円単位で残高が増えることもありうるからだ。
このとき、3,000万円という基準に変化はあるのだろうか。
最近は庶民でもクレジットカードのゴールドやプラチナに手が届くようだ。
ロボアドバイザーが、手数料割引の基準を下げてくることはあるのだろうか。
それとも、経費負担が増えているので逆に基準を上げてしまうのだろうか。
定期的な収入がある中産階級なら誰でもプライベートバンクのようなサービスを受けられるということであればおもしろいと思うのだが、これから投資を始める人にこの魅力を理解してもらうのは難しいだろうな。

アフェリエイト記事に騙されるな

ロボアドバイザーサービスの広告だけ見て酷評している記事ではなく、実際に運用している実績情報を見て判断するのがよいだろう。

ロボアドバイザーサービスに向いている人は

  • 日常の仕事や家事に忙しくて、資産を放置する方針の人
  • 相場に惑わされやすい人
  • 株、債券などの商品動向については勉強したが、個別の銘柄選びまでは面倒な人

ロボアドバイザーサービスに向いていない人は、

  • しっかり相場を研究し、監視する時間が十分にある人
  • しっかりした相場観がある人
  • 少しでも手数料を抑えるためには、いくらでも時間を割ける人
  • 投資の基本知識さえ勉強したくない人

*1:まとまった資金を最初から投入し、その直後に暴騰が来た場合を除く