PayPayを登録してみた

消費増税はPayPayのためのもの

 2018年10月、改造を終えた安倍内閣は消費税引き上げを予定通り実施することを確認。各省庁に増税悪影響緩和の景気対策を指示。
 その中で出てきたのが、軽減税率設定に加えて、中小小売のキャッシュレス決済促進策として、キャッシュレス決済利用者に2%のポイント還元を行うという。
 クレジットカードの決済手数料は3%以上だから、利用者に2%還元しても小売店が対応しないというコメントがあふれているが、とんでもない。PayPayは当面、店舗側の決済手数料を無料としている。この2%ポイント還元は、nanacoWAONよりは、PayPayなどQRコードを用いたスマートフォン決済のためにある。従来の電子マネーでもスマートフォン決済はできるが、端末を設置して操作方法を習熟する手間がない。

PayPayを導入してみた

 Android端末にPayPayを入れる。さっそく起動してみると、最初にユーザー登録が必要となるが、ソフトバンク系のためYahoo! IDが使用できる。いちおうセキュリティとして、ショートメールによるデバイス確認が行われる。ソフトバンクメールで受信したのに迷惑メールフォルダに入ってしまうのはおもしろかったが、あっけなくユーザー登録は終了。500円分の無料チャージをゲットできた。

UX(user experience)はかなりこなれている

 メイン画面に入って対応小売店舗を地図で確認すると、チェーン店というよりは近所にあっても聞いたことがないような個人零細店舗がPayPayに加入していることが確認できる。路地の店に行っても現金不要なのかと思うとわくわくする。
 しかし500円では何も買えない。Yahoo!ウォレットなど、Yahoo!経済圏からチャージするか、クレジットカード決済を追加できる。店舗からも利用者からも手数料を取らず、クレジットカード会社とつなぐとはなんとも太っ腹とは思ったが、挑戦者として最初は投資の時期なのだろう。シェアを取ったら何でもやりたい放題にするつもりかもしれない。対応店舗をプロットした地図を見ると、すでにPayPayマークで東京は真っ赤である。店舗数では早晩電子マネー加盟店に並ぶのではないかと思う。だとしても当面無料はすばらしい。
 気をつけなければならないのは、残高が足りない場合はまず残高から充当するというルールではない。残高が足りない場合は、Yahoo!ウォレットからの全額引き落としを試み、それでもだめならクレジットカードから全額引き落としを試みる流れになっている。登録時にもらった500円を使用するには、残高にチャージするか、500円以下の買い物にするしかない。

電子マネーの戦国時代

 プリペイド勢は、

  • 先行した楽天Edy
  • 自社グループ実店舗網をバックに一気に加盟店を拡げたnanacoWAON
  • 鉄道駅中心に広げ要所を押さえる鉄道系

 ポストペイは

  • 関西を地盤にiDが幅を利かせる
  • QuickPayは苦戦
  • VISA TOUCHはほとんど見かけなくなった

 日本においてGoogle, Appleはこれらに取り入る形で参入したので、Google, Appleのマークも店舗ではほとんど見かけない。Google, Appleが標準化や集約を進めるかと思ったが、引き続きGoogle Payのマネーはそれぞれのブランドとしてしか使えない。東日本高速のパーキングエリア、サービスエリアや、JAL特約店ではWAONが仕切っているが、Googleではなく、WAONを持っていかないと使えない。ANAEdy陣営で、iPhoneではEdyが使えない。ガソリンスタンドは系列によって採用電子マネーがばらばらである。
 毎日イトーヨーカドーセブンイレブンしか行かないという人、近所にイオンしかない人は別だが、家を出て不特定の所に外出するときには1つの電子マネーでまとめることが難しい。
 最もややこしくしているのが、日本の鉄道の自動改札はFelica規格の鉄道系ICカードしか選べないということだ。朝晩のターミナル駅で通勤・通学客をさばくには今のところ他の規格では対応できないとされている。Appleがほぼ日本独自規格のFelicaに対応したのは、これが理由なのだと思う。
 しかし、日常の買い物において鉄道系ICカードは過剰品質である。そして一部事業者を除いて利用者にとって還元率は低い*1し、カードリーダーもお店にとっては場所を取る。
 そこに出てきたのが中華系のQRコード陣営である。お店側はQRコードを印刷して掲げるか、携帯の電波が入らなくてもスキャナーを用意すれば決済できる。上記の通り、アプリの導入も楽だ。
 わたしはEdy以外は流通系・鉄道系・ポストペイをまんべんなく利用している*2。ここにQRコード系がわたしのコレクションに加わり、何かが淘汰されるような気がしている。

本丸は非営利団体

 PayPayは小規模店舗に営業をかけているが、店舗だけではなくて学校に営業をかけてほしい。全国の幼保小中高校から集金袋なるものを絶滅させてほしい。写真代「930円」を「おつりなし」で、「あす朝まで」に準備するとか、本当に勘弁してほしい。
 QRコードを印刷して配布して、スマートフォンで代金を入力して払ってくださいと呼びかければ、済むではないか。

ほんとーーーーーーーーーーーーに頼むから今すぐ営業をかけてほしい

 既存勢力からのシェア奪還という観点からも、飲み会代の割り勘とかはどうでもいいので、PTA、自治体、親睦会その他任意団体の集金業務をディスラプトしていただきたい。
 今までも銀行振込やペイジーがあったが、手数料がネックだった。手数料無料又は年間固定でぜひお願いしたい。

キャッシュレスは賛成

 2018年は各地で大規模災害が発生し、決済手段として現金があって助かったという話を聞く。ただ、店員は昔の日本人ほど暗算ができなくて、電卓片手があってもどんぶり勘定だったとも聞く。
 それだったら、現金は100円500円1000円の3種類で十分ではないかと思う。首都圏の災害ではどうなるかまだ実績が乏しいが、スマートフォンと通信回線が早めに復旧するのであれば、スマートフォン決済で十分やっていけるのではないかと思う。従来電子マネーも災害対策として非常用電源の確保が進むのではないかとみている。
 食料品と新聞の軽減税率は本当に必要だったのだろうか。消費税10%、ただしキャッシュレス小口決済は10%で2%還元、という税制が非常にすっきりしていたのではないかと思う。

2%還元ポイント還元をうまく利用する業者が現れるか

 iDの限度額は、クレジットカードの限度額いっぱいまで使えるそうである。中小の自動車販売会社がiDで車を売ったら売価100万円で2万円還元である。今は軽自動車もそれなりの値段なので、中古車に限るかもしれない。たった2万円だし、限度額が高いカードの所有者が中古を買うのかと言ったら疑問だし、大手の方が安いかもしれない。
 貴金属やブランド服飾、スーツであれば2%でそこそこお得感が出せるかもしれない。
 今、多くの小売業者が知恵を絞っているところだと思う。とりあえずPayPayには加盟することになるのかな。わたしはソフトバンクの回し者ではありませんが。

買い物履歴情報の行方は

 PayPayポイントが発足したことにより、PayPayを使ってもTポイントがたまらない。決済を仕切ろうとしているので、今更Tポイントに買い物履歴情報を引き渡す意味がない。Yahoo!はやがてTポイント陣営から離脱するのではないか。
 決済情報のビックデータを囲うのはTポイントが本命だったが、Tマネーを始めたもののもそれほど普及していない。JR東日本Suicaの履歴を日立に売ろうとしていたのが報道機関に見つかり、出鼻をくじかれた経験を持つ。
 イトーヨーカドーはクレジットカードに基づいた購買履歴に基づいてリコメンドを提案するサービスを開始している。セブンイレブンアプリなどを通じて、さらに広める準備を進めているように見える。

*1:最大手のJR東日本は鉄道ではオートチャージポイント3倍などをアピールするがSuicaで買い物をしても還元率を1%超えにすることはほぼできない。JRの駅ビルではポイントを増やしているが、そもそも駅ビルの商店はコンビニを含め価格設定が高めであるのでポイントを稼いだところで節約にはならない

*2:Edyは、以前使っていたSIMフリースマートフォンが水没したときに残高が取り出せずなかったのに懲りてから使用していない。ID管理の仕方がソニー時代から変わっていないから、楽天IDがあれば回収できます、ということになっていない。故障対策としてはポストペイが安全だが、紛失するとクレジットカードを止めるまで使われてしまうのが悩みである。まあ、スマートフォンにサインインできないとどの電子マネーが入っているか確認しにくくはなっているが