個人向け統合型金融サービスに望むこと

日本の金融業界は、ひとつのカード、ひとつのアプリでなんでもできるというサービスをつくりたがるのだけれど、どうも利用者のニーズと合っていないと思う。わざとなのだろうか。

銀行の総合口座というのは日本の金融界においてすばらしい発明だった。
1冊の通帳で普通預金だけはなく定期などの貯蓄性預金も扱えるのである。
普通預金の通帳記入欄がいっぱいになると、通帳繰越をするだけで他の預金も含めて全部新しい通帳に引っ越ししてくれる。とても便利だった。
便利「だった」

貯蓄性預金の金利が低金利政策により普通預金と変わらない。大手銀行の総合口座に入っているどの預金よりも、ネット銀行の普通預金に勝てないこともあった。
そして、今や通帳が面倒だと言われる時代である。銀行も印紙税を払いたくないし、家計簿管理をしたい人は別にお金を払ってでも家計簿サービスを利用するようになった。

今は規制は緩和され、FinTechが進み、業態の垣根が取り払われた。その結果起こったのが、銀行が他業態を傘下にするということと、流通、通信などの他業界が銀行業に参入するということである。こうして、銀行、他の金融サービス、金融周辺のサービスがシームレスにすることができるようになった。

金融業界は低金利の厳しい経営環境の中で、各社は差別化を図ろうとしている。シームレスになったサービスをうまく顧客勧誘に繋げているのか。

わたしは役目を終えた総合口座を再構築するだけなのではと思っている。

1. 1枚のカードでなんでもできる
→1つのアプリでなんでもできる

2. 1つの銀行支店窓口ですべて対応できる
→窓口またはアプリで、金融サービスを問わないワンストップを実現

3. 1冊の通帳ですべて確認できる
→明細データを自由に利用できる

三井住友銀行がOliveを始めた。SBIは銀行と証券の口座スイングができる。イオンは銀行窓口に行けばなんでも相談できる。PayPayアプリはインターフェースが統一されていてサービスを使い分けることを利用者が考える必要がない*1

1、2、3のどれかはどこかの会社がやっているが、なぜか、全部をやっている会社がない。

気になるのは、サービスの種類を増やすのは得意なのだが、決済したときのデータをまとめて提供してくれる会社がない。あえていうならPayPayアプリは一覧性が高いが、データを取り出して家計簿ソフトなどで使うことができない。

Felica、タッチ決済、QRコード決済のどれを使っても、きちんとマネーフォワードなどの家計簿ソフトに決済日と店名と金額の明細を送って欲しいんだよね。

会社間でいろいろ相談して情報システムを繋げてすんごい苦労しているはずなんだけど、何のためにしているのだろうか。

入り口はひとつなのだが、実はこの先は証券で、とか、この先はカードなんで、とか、IDも電話番号もばらばらで、いったん問い合わせてみようものならあちこちたらい回しにされて、というのも改善できないのだろうか。
なぜ、ワンストップコールセンター会社を作れないのか。グループ各社の問い合わせは全部1社で受ければいいのではないでしょうか。だって、入り口は一緒にしちゃったんだよ。個人情報保護のために情報隔壁が必要ですから、っていうのは建前でしょう。

競争しているはずなのに、どうして新規参入系も含めて課題を克服できないのだろうか。

*1:ポイントが若干複雑ではあるが