NISA

今年はNISA元年だった。秋になって野村證券が「今年のNISAは今年だけ。」という広告を出し、よく知らない人から「NISAは今年限りの制度なのか」と質問されたが、それからまもなくして複数の金融機関からNISA勧誘の電話がかかってくるようになった。「もう他社でやっています」と答えるのが面倒くさい。確か昨年も同じ金融機関に「もう他社で申し込みました」と話した記憶があるがどぶ板営業だからわたしの応対記録なんて残っていないだろう。費用を負担してでも勧誘専用電話番号を作り、金融機関への届出電話番号はその番号にしようか。
昨年は「小口顧客の発掘に力を入れても儲かるわけがないから、NISAの勧誘は今年限りだろう」と思っていたが、来年になればNISA口座の乗り換えが可能であるためか、今年も勧誘が続くことになった。甘かった。
銀行に課せられている規制のひとつに、倒産しそうになったときの備えをしておくというのがある。取り付け騒ぎが起こっても耐えられるような資金を確保しているとみなされる条件のひとつに「倒産しそうになってもすぐには預金を引き出さない顧客を増やすこと」が求められる。そのためか、最近のキャンペーンは以下の項目が重視されている。

  • 給与振り込み口座の指定
  • 公共料金引き落としの指定
  • 投資商品の購入

例えばある銀行では、昔はATM手数料無料の条件に「月1万円以上の定期積立」というのがあったが、今は積立には全く力を入れていない。かわりにあるのは預金保険の保護を受けない投資商品である。わたしは無料の権利を得るため、ほんのわずかだけ外貨普通預金をしている。給料から毎月1万円つなぎ止めるよりも、1回限り数千円預金した方が銀行にとってありがたがられる仕組みである。
月1万円以上の定期積立は不要になったので有人店舗に行った。積立の解約はインターネットではできないからである。混んでいる時間でもないのになぜか30分以上待たされたあげく、最初に聞かれたのはNISAである。わたしの待ち時間には、わたしの取引状況を調べる時間が含まれていたのではないだろうか。不要だと断った途端に態度が冷たい。解約した積立の資金で何か投資商品を勧めてほしいと言ったところ

インターネットの方が商品が多くて便利です

と言われてとても驚いた。インターネットで手続きができないからわざわざ来て30分待った客に対してインターネットでやってくれとはどういうことだ。それなら口座の解約も全部インターネットで完結させてほしい。
話はそれるがこの店舗は系列証券会社の社員も窓口に座らせていて、銀行・証券の隔たりもなくワンストップでサービスできることをアピールしていた。壁にもたくさんポスターが貼られていたが、手続き待ちの時間も含めると1時間以上いたが証券の窓口を勧められることはなかった。証券の窓口の人はとても暇そうだったが、銀行から出向させれた人の窓際席のようにも見えて大変お気の毒だった。
小口客が店舗に来るのを嫌がるわりには、なぜかNISAの電話攻撃をやめない。わたしはNISAを開設していない口座でも、ATM無料の権利を得るなどの理由で投資商品を持っているから、金融機関からしてみたら「投資商品を買っているのになぜかNISAを使わないおバカな顧客」として扱われている。いつか「もし同じ電話をまたしてきたら、その瞬間、投資口座から普通預金口座まですべて解約します」と言ってみたいと思っているが、なかなか勇気を出して言えない。
NISAが必要なのに未だ加入していない人が残っているとも思えず、電話勧誘は相当つらい仕事なのではないかと思うが、NISA制度新設に伴い設けた販促部署を簡単になくせないのだろう。ただ、小口とつきあいたいのかつきあいたくないのかはっきりしてほしい。窓口設置や口座管理の費用がかかるだけなので来ないでほしいというのなら行かないし、ぜひ来て下さいというのなら行くが、特に伝統的な金融機関の応対はツンデレである。
金融機関がマルチチャネルを掲げ、電話でも携帯でもスマートフォンでもPCでも窓口でもどうぞと言うのであれば、顧客はどのチャネルでも同じサービスにしてほしいと考える。ところが、実際は

  • 費用がかからないチャネルに誘導する
  • 特殊対応が必要な取引は有人対応するが、それ以外のサービスはしない

ということになっている。特殊対応窓口には特殊対応待ちの人ばかりが列を成していて、ひとりひとりにかまっていられない。だから、特殊な用事が済んだら、あとは電話かネットでお願いしますとなる。すべて有人店舗で行っていた時代はワンストップだったからかなりのサービス低下である。
一方、ネット銀行やネット証券は設立最初からシングルチャネル・ワンストップだから

わたしがNISAの電話勧誘に応じたとする。でも、また何かで有人店舗に行くはめになり、30分か1時間待たされ、それ以外のことは何もしてもらえないということが発生するのだろうなと想像してしまう。しかもそれは平日の日中である。わたしにインターネットでやれと言った時点でもう取引拡大はありえない。

貧乏人はどこの窓口に行ったらいいでしょうか

銀行や証券会社がテレビコマーシャルで「ご相談ください」とやっているけれど、本当に相談に応じてくれる窓口があるのだろうか。ぜひ実例を示してほしいと思うことがある。テレビでやっているのだから富裕層向けではないのだろう。
証券会社で月々3,000円からの積立や、300万円からのラップ口座をやっているが、そんなものを仮に窓口で申し込もうものならどんな冷たい対応をされるのか心配だ。
あと、昔は子どもに経済教育をするときに、なけなしの貯金を持たせて郵便局で口座を作らせることをしたが、今はどこに行ったらいいのだろうか。ゆうちょ銀行の窓口は本当に少数で、あとは日本郵政の委託窓口である。自分の売上ではないから親身に応対してくれなさそうな気がする。
ショッピングセンターにあるような新興金融機関の有人窓口が待ち時間が少なくてよさげだが、よく見極めていきたいと思う。