LINE PayをMoney Forward連携してみた

支出管理に向くキャッシュレス・向かないキャッシュレス

現金派の人は、現金は持っている限りのお金しか使えないので管理しやすいと言っている。
しかし、それは本当か。
給与所得者であれば今どきはほとんど銀行振込なはずで、日本の優れた銀行口座はFinTechに出遅れた日本においても優れたキャッシュレス決済手段である。銀行口座を使っておいて自分は現金しか持たないと言っているのは矛盾していて、その実態は「一部は現金、一部は銀行口座」という管理になっている。それではうまくいかない。さらには口座引き落としなどを使っていればそれをきちんと記帳して管理しなければ管理できているとは言えない。
自営業者であれば、店の現金と私的な現金をきちんと分けて管理できているかといえば怪しい。クレジットカードなどを使い分けたほうが管理しやすいのではないか。
管理というと、昔ながらの家計簿や昔の家計簿ソフトを想像する人がいるかもしれないが、今どきのFinTech家計簿サービスは決済をすべて自動記帳し、さらには明細の内容を読み取って費目まで自動分類してくれる。慣れてくれば現金収支以外は管理が最小限で済むし、電卓や表計算ソフトは一切使わなくてすむ。口座の残高不足なども勝手に調べて勝手に教えてくれる。
ただし、家計簿サービスを使った管理をする上で気をつけなければいけないのは、管理に向くキャッシュレスとそうでないキャッシュレスがあるということ。
ひとつ目は、家計簿サービスとの相性が悪いキャッシュレスが存在するということ。家計簿サービスは、インターネットバンキングの仕組みを使って毎日残高照会をしているようなもので、そのサービスに契約している全員分の残高照会を毎日代わりに行ってくれている。
ひとりひとりがスマートフォンやPCを使って残高照会をするならば問題がなくても団体が大量の残高照会を仕掛けるとうまく返事を返してくれないサービスが存在する。また、残高照会はロボット*1が自動で行っているので、しょっちゅう残高照会の仕組みを変更しているサービスだと、ロボットが照会の仕方の変更に気づかずにエラーになってしまうことがある。
家計簿サービスでは幅広いサービスに対応していることを謳っているが、これから家計簿サービスを使い始めたい人は、対応済のサービスではなくて今、障害が発生しているサービスの一覧を確認することが必要。それらはいったん対応済としたが、後になって不具合が発生していて家計簿サービスに残高を取り込めなくなったものが掲載されている。
また、実際に使い始めてみた後、しょっちゅうエラーが発生して残高表示に失敗している金融機関は要注意だ。
わたしは、ある銀行にて、わたし本人の口座と家族の口座を登録しているのだが、週に数回、1口座のみエラーになってしまう。きっと、同じIPアドレス(インターネットの住所)から連続して残高照会が来ると悪意を持った攻撃者からの攻撃を疑って警戒してくれているのだろうが、正当なIDと正当なパスワードで連続攻撃は行わないだろう。連続照会の中身をもう少し詳しく吟味して遮断すべきではないかと思う。
家計簿サービス側のロボットが古いことが原因のこともあるが、ロボットが残高照会してくることが当たり前になってきているのにそれに応えない金融機関側もよくない。そういうサービスは使っているITシステムが古い場合が少なくないのでこの先他のキャッシュレスサービスの進化に追いついていけない可能性がある。
そしてふたつ目は、家計簿サービスが取り込める決済明細の内容である。
基本的には

  • 決済日
  • 決済に使われた口座や電子マネー、クレジットカードなどの種別
  • 決済内容
  • 金額

である。電車に乗って1日経つと、「○○日、モバイルSuicaで、 A駅からB駅、○○円」ということが家計簿サービスに取り込まれる。一度登録してしまえば、その後は取り込むために何もする必要はない。プラスチックのICカードであれば、AndroidスマートフォンNFCにかざして家計簿サービスのアプリを利用すると、同じ情報を取り込むことができる。
A駅からB駅という情報は「入 東京 出 新宿」のようにいつも同じ形式なので、家計簿サービスはこれを交通費の明細として自動的に記録してくれる。多くの人が使っていて経験がたまっているから、「入 大宮 定 浦和」(大宮から乗り、浦和から先は定期券として利用)のように駅名などが変わっても問題ない。
決済履歴の提供という観点ではセブンカードが優れている。イトーヨーカ堂は総合スーパーだが、店名に加えて売り場名まで表示してくれる。だから、同じ店で買っても食料品売り場なら食費、婦人衣料品売り場なら衣服と識別が可能である。セブンカードはJCBのITシステムを利用しているが、明細に売り場まで表示しているのはセブンカードのこだわりである。ここまでできる会社なのにどうしてセブンペイ騒ぎを起こしてしまったのだろうか。
一方、このブログでも散々けなしているが、Suica電子マネーは、自動販売機と物販の2種類しかない。JR東日本系列の自動販売機で買ったときは「自動販売機」だが、それ以外はすべて

物販

である。物販と言われてしまうと、決済日を見て何を買ったのか思い出さなければならない。履歴には鉄道の乗降履歴と電子マネーの履歴が時系列で残るので、電車に乗る前か降りた後かのヒントは与えられる。それでも意外と思い出せないものである*2

LINE Payはどうか

さて、わたしが使っている家計簿サービスMoney Forwardでは、QRコード決済サービスへの対応が遅れている。その中で唯一対応しているのがLINE Payである(2019年8月現在)。
ポイント還元には参加したいし、先日使っていた某ペイの廃止が発表されてしまったので、LINE Payを使ってみることにした。上記の2条件にあてはまるかどうか。
ひとつ目。Money Forwardとの相性については問題ない。この決済サービスは決済直後に履歴を取り出すことが可能で、スマートフォンで見られるのはもちろん、Money Forwardで再読込すれば最新の情報を得ることができる。ポイント処理も決済の都度リアルタイムで行っているので、少しレジでの処理がもたつく印象があるが、それでも1秒以内の話である。電子マネーよりは遅いが実用上問題ないし、ポイント処理まで完了しているのはうれしい。
ふたつ目。明細の内容である。リアルタイムに取り込まれる内容については複数ある。厳密にはオンライン決済もあるのだが試していないのでリアル店舗での決済結果のみ紹介する。
バーコードで、決済した場合。ファミリーマートのセルフレジで使ってみたところ、

決済 株式会社ファミリーマート

という明細。なんと、店名でも物販でもなく、社名である。
ファミリーマート」という名前まで教えてくれれば「物販」よりは親切。店に行った記憶をたどれば何を買ったかは思い出しやすい。「コンビニではいつもお弁当を買っています」という場合は、「コンビニ本部の企業名が明細に入っているときは、家計簿サービスが食料品として自動記録する」というルールで全く問題ない。
少し困るのは有名店やチェーン店ではなく、中小の店。カフェで使ったところ店名からは全く想像できない企業名が表示された。1週間ならまだしも、1ヶ月分まとめて振り返る人の場合は「この会社は何屋なのか」と悩むことにはなるかもしれない。
それにしても、店名ではなく企業名を提供するとは斬新である。様々なクレジットカードなどを使ってきたが初めての体験だった。
LINEとしては店名情報まで把握しようとしているようで、LINE Payアプリでは利用者も参照が可能である。しかし加盟店側が渡すかどうかは対応が別れていて、ファミリーマート

ファミリーマート(コード決済)

となってしまう。一方、別の加盟店の場合は

株式会社XXXX(XXXX XXXX店)

のように社名(店名)という形式だった。
続いて、NFCで処理した場合。バーコードをスキャンで読み取るだけではなく、Google Payに登録して、店頭ではQUICPayとして利用することも可能である。ローソンではモバイルPontaと相性がよいのはおサイフケータイ電子マネーであり、普段はIDを使うのだが、「クイックペイで」と言ってみることにした。ところがこの場合、明細には

決済 QUICPay

と表示された。これではSuicaの物販と同じレベルである。買ったものを後で振り返ることが難しい。
数日経ってもう一度見たら明細が更新されていて

決済 ローソン (店名)

という形式になった。店名はカタカナで、語尾の「店」は省略された表記になる。QUICPayを運営するJCBが把握している情報をLINEも受け取っている模様である。クレジットカードのシステムを使っているので、店名情報が遅れてしまう。最近システム構築したQRコード決済事業者に比べると見劣りしてしまうが、数日後にMoneyForwardの情報も更新されたときに、改めてMoneyFowardが正しい費目に設定してくれたかどうか確認が必要となる。
例えば、A店で日用品を買い、B店で食料品を買う。どちらも当初は「決済 QUICPay」とMoneyForwardに情報が入ってくる。MoneyForwardはこの時点ではA店なのかB店なのか見分ける方法がないから、いったんどちらかで認識するしかない。その日はA店で先に買い物したとしても、普段使いではB店で食料品を買っていることが多いので「決済 QUICPay」はいったん食料品として認識されるように自動仕分けされていればA店の買い物もいったん食料品になる。その後、店名が入った情報に更新されるか、その前でも支払いタイミングや金額を見て「これはA店での買い物だ」と利用者が気づけば、その段階で手動で日用品に費目を変更する。
これは面倒なので、LINEPayでQUICPay支払いするのは同じ費目だけにしておくのが管理上は面倒くさくない。いったん食料品と決めたら異なる店で食料品を買うのはかまわないが、同じ店でも日用品はなるべく買わないようにする。
QUICPayでは、決済音が出るまでに少し間があった。やはりリアルタイムでポイント処理などを行う必要があり、時間がかかる。他の電子マネーを使っていると少し不安になるような待たされようであるが、待たされることが慣れれば問題ない。オートチャージが発生するときのWAONも数秒待たされるが、それに比べれば短い*3
QUICPayと現金しか使えない店であれば小銭が発生しないLINE Payを選ぶが、もともとQUICPayJCB系の決済システムなのでQUICPayが使えればJCBカードが使えることが多い。
ちなみに、LINE Payにチャージするときの銀行口座には

RS ラインペイ

と表示されるが、金額がチャージ金額であり、買い物のときの決済額ではないので支出管理としては使用しない*4
家計簿サービスを利用するにあたっては、バーコード決済であればぎりぎり使えるかな、というのが感想である。

LINE Payは使えるか

他の人のブログを見ているとポイント還元などの紹介しかしないので、わたしは支出管理に向いているかどうかの観点でLINE Payを語ってみた。
nanacoはクレジットカードからチャージできてポイントがつくが、QRコード決済の場合リアルタイム店舗での利用ではクレジットカードチャージができない。LINE Payの場合も銀行口座から引き落としとなる。オートチャージもあるので電子マネーのような使い方もできるが、ポイント還元がなくなったら積極的に使いたいサービスかどうかは疑問である。
イオンファンであればイオンカード、イトーヨーカ堂ファンであればセブンカードのように、一番使っている店、最も詳しく支出管理したい対象の買い物が多い店に合わせたクレジットカードを作るというのが王道で、そのカードから電子マネーにチャージするのがいちばんわかりやすい。クレジットカードが作れない人は銀行等が出しているデビットカードを使うのがいい。
QRコード決済は、大手チェーン店に加えて中小の店も取り込もうとしているのが強みであり、他の流通系カード会社が踏み込めていない店でもある。中小の店が好きな人はPayPayやLINE Payになっていくものだと思われる。
わたしは、PayPayか現金、というような店で、現金を避けるための手段としてPayPayやLINE Payは使えるようにしておこうと思うが、Money Forwardへの連携が完璧と言える状況にはないので限定的な使い方になると思われる。
セブンペイに合わせてポイント制度を改悪したセブンアンドアイのように、今ポイントキャンペーン真っ盛りのQRコード事業者もいつまで続けるかは未知数であり、この先も続けるだろうと思いこんで使い始めるのは後で後悔することになると思う。

*1:ロボットと言っても人型の人造人間ではなくて、自動で処理するプログラムのことを最近ではロボットと呼ぶことがある

*2:記憶の呼び起こしに苦労しているので、買い物を現金でしてレシートをもらわない人は、何をいくら買ったのかということを思い出すのは難しいのではないかと思う。すると、給料日前などになってお金が足りないということはわかるが、なぜ足りなくなったのか、何を節約しなければならないのかはわからないので、お金が足りないと悩む経験ばかりがたまって仕方がないのではと思う。

*3:今後取引量が増えたらどうなるかわからないが

*4:例えば、食料品824円を買う前に1,000円チャージすると、1,000円チャージした情報と824円決済した情報がMoneyForwardに送られるが、1,000円は支出として取り扱わないようにする。収入でも支出でもない「振替」として管理する