宅内LAN

2022年11月~12月は、ワールドカップが盛り上がっています。
その中で、ABEMAが過去最大のアクセス数を記録しました。本田氏の解説が好評で、本戦では人数制限が検討されているそうです。
ABEMAは、今のところスマートフォンで見る人が多いと思われますが、実は現在国内で発売されている有名メーカーの大画面テレビでも見られるようになっています。
テレビはもちろん無線LANにも対応していますが、大画面映像を安定した有線で楽しみたい人も増えるのではないでしょうか。

チューナーレステレビへの認知も広まっています。NHKの受信料を払うくらいなら、有線LANに投資しようという人も出てくるでしょう。
かつては、各部屋に電源とテレビアンテナ線を引くのが一般的でした。
一軒家であれば、2階の寝室にも、子供部屋にもテレビを置けるようにしたものです。
今は子供が小さい家庭でも、やがてはお父さんもお母さんも子供もばんばんネットを使うようになるでしょう。
携帯電話の料金を抑えるには通信会社をそろえると思いますが、そうすると電波も混んでしまいます。
これからは通常の家庭でも有線LANのケーブルを引くべきかもしれません。

かつての家庭内通信ネットワーク技術のトレンドは多少迷走ぎみでした。
インターネットが家庭にもたらされたときは、電話機が置かれたところからケーブルを分岐して電話線をてれんこてれんこ伸ばすことが行われました。
それができない家では、廊下の電話台の横にノートパソコンを持ち込む人もいました。
ブロードバンドが普及したあたりから、家庭用無線LANが普及し始めました。
有線では、電力線通信(PLC)というのも一時期売られていましたが普及しませんでした。
無線LANの規格が家庭内有線配線の規格よりも高速な時期もありました。配線も不要で高速であれば、有線LANはもはや不要かと思われたこともありました。
しかし、無線LANは、住宅地において隣の家との混信が課題になっています。
引っ越した当初は大丈夫でも、近所の人が強い電波を出し始めるととたんに安定しなくなります。

そんな中で、ようやく家庭内の有線LANにも2.5Gbps、10Gbpsの機器が浸透するようになりました。
最も必要としているのは、株のデイトレーダー、そして、ネットワークゲームを楽しむ人々です。
また、安定性については、冒頭の映像視聴だけでなく、リモート会議も必要とします。在宅勤務が有線LANのニーズを増やすかもしれません。

ただし、住宅内装業者はエアコン、電話線まではついてきても、なかなか有線LANにまで勉強が間に合っていません。
ネットワーク工事の世界において家庭用配電盤に相当するのが宅内LANパネルです。Panasonicの「まとめてギガ」という製品が国内の知名度では圧倒的シェアと思われます。
しかし、この製品はいまだに1Gbpsの規格にしか対応しません。
こんな状況では「これから新築するので、2.5Gイーサ、10Gイーサの線を引きたい」と業者にお願いしても、なかなか理解してもらえないでしょう。
ただし、探せば経験豊富な業者さんを見つけることができると思いますので、新築やリノベーションをするときの方が賃貸よりは有利なのではないかと思います。

2022年現在では、だいぶオフィス回帰が進んだとも言われていますが、今後テレワークがすたれることはないと思われます。都心を脱出して地方の一軒家(2、3階建て)で在宅勤務をする想定にしてみましょうか。

  • 土地、家を決める前
    • 高速ブロードバンドの対象地域であることを確認
    • 契約しようとしている高速ブロードバンドがだめだった場合に備えて、別の業者も引けるとなおよい
    • ブロードバンド回線のバックアップとして、5Gが届いているとなおよい
  • 工事
    • ブロードバンド回線契約 (10Gイーサネットは地域が限られるが、やがて全国をカバーするようになると思われる)
    • 宅内LANパネル(ただし1Gbpsになってしまう)
    • プロバイダー貸与の通信機器を置く場所の確保
      • 電源コンセントもたくさん必要となるので、タコ足配線にならないように電気業者に多めにコンセントを作ってもらう
      • 電柱から通信機器を置く場所まで壁裏に通信線を引く際、長すぎないように間取りを検討
      • 熱を持つ機械を置くので、真夏の放熱対策が必要*1
      • スマートフォンなどを考えると無線LANも必須だが、生活に必要ないからと家の隅に置いてしまうと電波が届かなくなってしまうので間取りを見ながら相談
    • 各部屋に通信を送るためのネットワークスイッチ*2
    • 宅内LANパネルから各部屋に管を通す*3
    • LANケーブルは最初から高規格のものにしておく
    • 各部屋にLANポート対応の電源コンセントを設置

なお、有線LANがあれば、プロバイダー貸与の通信機器から部屋まで多少遠くても問題ありません。

ちなみに、無線LANも進化が止まったわけではなくWi-Fi 6Eという規格が登場しました。新たな周波数を使用するために今のところ最新規格であれば快適に使うことができるかもしれません。ただし、

  • 2022年時点では、従来規格の無線LANルーターよりかなり高額です
  • 最新規格を使うには対応機器が限られますので、通常は従来規格の電波も使い続けることになり、最新の機器を使っても快適にはなりません
  • 最新規格はやがて普及し、近所に対抗するために買い替えが必要になります
  • 近所との混信がなくても、古くなった無線LANの技術はセキュリティ技術が破られてしまうことが多いので、その場合は買い替えが必要となります

有線LANの工事は大変ですが、初期投資をすればあとは長らく安定した通信を利用できると思われます。

*1:生活する場所ではないからと、やたらと閉所に設置すると火災の恐れがある

*2:スイッチといっても、四角いボックスであり、宅内LANパネルを買うと内蔵されているが、1Gbpsになってしまうのは上述の通り

*3:新築か大規模なリノベーション時にしかできない