さりげなく宣伝していた
成田空港から上京しようとしたらきっぷの裏にQRコードが書いてあった。
アクセスしてみると、羽田発着、成田発着で首都圏各地を結ぶリムジンバスがスマートフォン予約に対応しているではないか。
会員予約しなくても買えるようだが、個人情報の入力が億劫なので、ヘビーユーザーが会員登録して使うのが現実的だと思う。
空港バスに限らず、高速バスはコードシェア便が広まっている。このような新サービスをやるときには障害になる。バスは単独運行の方が利用者にとっては便利だと思う。
例えば羽田では東京モノレールだけはJR東日本系列がやっている。一方、私鉄の京急は4社と相互直通運転をしていて、どの会社の電車が次やってくるのか素人にはさっぱりわからない状態ではあるが、何色の電車が来ようが京急線内は京急として営業している。利用者に関係あるのはバリアフリー設備の有無や位置の差くらいである。
タクシーも会社指定でタクシー乗り場から乗るのはまだまだ珍しい。
そしてバスは、コードシェアリングが多く、便によって運営会社が異なる。幹事社がリムジンバスと京急バスであり、これらが切符の販売や乗り場の整理を担っているがバスのサービスは合わせようという気がない。
以前はトイレの有無、ICカード利用可否、充電ボートの有無がばらばらなだけでなく、それらを調べる方法まで限られていた。そして予約システムは最も貧弱な会社に合わせるということになっている。
ただ、到着ロビーとバス乗り場でリムジンバスが取り仕切っているところは合わせられるので、そこを生かしてWEB予約を開始したようだ。
羽田空港発着をみると、羽田空港行きはリムジンバス単独運行路線のみ、そして、羽田空港発はリムジンバス幹事社路線全部を対象としている。だから羽田空港発のほうが対象が広い。
システムを作った人の苦労が偲ばれる。
普及に向けた課題
ただ、羽田空港行きの限定路線を利用できる人についてはとくに文句はないが、羽田空港発というのは意外と使いづらいような気がする。
バス乗り場へ到着する時刻を読みづらいのである。
ここで出張頻度の高い、旅慣れた人を想定しよう。東京行きは自腹で前方の高い席を予約している。荷物もコンパクトにまとめているから預けない。扉が開いたらすぐ出るために自分で努力できるところはぜんぶやる。
そこまでしても、羽田空港の混雑と悪天候だけはどうにもならない。
着陸して、次のバスに乗れそうだなと目論んでも「本日はロビーまでバスでのご案内です」と言われるとがっかりである。成田空港第3ターミナルのように遠いのを前提としてくれたほうがまだ潔い。
目的地によってはバス一択となることもあるようだが、30分待つならタクシーかな、50分待つなら電車かな、と態度を保留している人は少なくない。だから地方空港の出発ロビーには京急などの自動販売機が置いてあるのである。バスにしようか迷っているなら、離陸前に電車に決めてしまいなさいと。そしてモノレールか京急かも合わせて確定させてしまう作戦である。
電車は終電付近以外は減便していないが、バスはコロナ禍で減便したままである。着陸前に乗る便を決めるのはかなりリスクが高い。機内のWi-Fiは着陸5分前に切れてしまう。
太川陽介さんほどのバス好きなら上空で途中まで入力を進めておいて、ロビーの動く歩道を小走りしながらボチっとやる感じになるのではないか。問題はその間にセッションが切れてしまわないかということだ。UIはモダンな作りにはなっていたが、もう少し洗練したほうがいいと思う。特に氏名を入力させるあたりがげんなりする。
降機時に迎えに来たバスの中で、高速バスの発車時刻を迎えてしまった場合、次の便に自動再注文ができたら使う人はいるとは思うけれど、コロナ禍の前は人気路線は次のバスも満員になることがあった。わたしが運営だったら、その機能はリスクがあると判断するだろう。
ということで、成田から東京に向かう間に、羽田基準でいろいろなことを考えてみたが、端的に言うと、スマートフォンへの入力にもたついている間に到着ロビー1階にたどり着いてしまったら、券売機に行ったほうが早いということだ。
新たな打ち手はないか
でも、これくらい克服できないと、MaaSは開花しない。スマートフォンで全部片付くといってみたところで、実際はあれこれ苦労させられるようでは誰も利用しない。
航空便の予約情報と、航空会社の到着時刻情報と、スマートフォンのGPS情報、もしくはビーコン情報を使って、スマホの中の電子秘書が「あなたはこれから埼玉に行くんでしょ。10分後にバスが出るけれど、きょうは同伴者にお年寄りがいるから無理ね。電車にしておきなさい」とかガイドしてくれるのがいいとは思うんだな。
ただ、利用者の協力を得ながらそこまで情報を集めるかなあ。バスが自動運転になったらバス便の方をオンデマンド発車にするアイデアもあるが、それは20年後だな。
とりあえず、リムジンバスのチャレンジを評価したい。ただ使うかどうかは微妙。