路線バスのWebサイト

企業の成長には新規顧客の獲得が不可欠であるが、バス会社は初めての客を歓迎しているのだろうか。

空港バスの場合

PCを使い、検索サイトで「羽田空港 新宿」と入れて検索してみる。使用するサイトやタイミングによっても異なると思うが順位は以下のとおりである。

鉄道会社のサイトは1ページ目には全く出てこない。Andoroidタブレットで試すと、リムジンバスはAndoroidに最適化された画面が表示され、京浜急行バスはPC向けの画面が表示される。リムジンバス以外はスマホユーザーお断りであり、東京に行くならきちんと家や職場でパソコンを使って調べてから来いということのようだ。もっとも、各地の空港には広告が多数見受けられるし、あるいは渡航先の空港アクセス鉄道の券売機が置いてあるので「利用者はインターネットなんて使わないので、直接見てもらってアピールした方がよい」という経営判断かもしれないのでそうならば否定はしないが自ら販売手段を放棄することはないと思う。
リムジンバスのサイトは、インターネット予約やコンビニ予約ともリンクしていて、とても使いやすい。

深夜急行バスの場合

飲み会が終わって気づいたら日付が変わる前。経路検索サイトで終電を調べたらわずかに間に合わないことが判明。こういうときに「スマートフォン深夜急行バスを検索できたらいい」と思うのだが、残念ながら多くの場合難しい。
まず、多くの場合、スマートフォンに最適化されていない。大手だったらリムジンバスを見習ってきちんと作るべきだと思う。一方、中小だったら、サイトをリニューアルする必要はないので簡素で文字主体のページを作ればいいと思う。ところがそれではかっこ悪いと思うのか、PDFファイルの貼り付けで逃げようとする。ところが都会のパケづまりしやすいネット環境では通信が途切れてPDFがダウンロードできなかったりする。
そして停留所の場所がわからない。普通の道路地図を貼っていることがあるが、バスが出るターミナル駅まで電車で行った後、改札口を出たらどう行ったらいいか理解するのはとても難しい。例えば、勤務時間中かもしれないが、Webサイトの制作者は缶ビールを2本飲んでからスマートフォンで調べてみてほしい。2本指を使えば地図を拡大できることは昼間落ち着いていれば普通にできるけれど、

  • バスが出るまで30分で、かなり焦っている
  • 酔っている
  • 通信環境が悪く、画像のダウンロードに時間がかかる

という3条件が重なると、拡大された地図が端末に表示された時点でたぶんバスは出てしまう。
酔っ払いではなくても、「自宅近くまで行くバスは終わってしまったが、3,000円くらいならタクシー代を払ってもいいから近くまで行くバスを調べたい」と思うことはある。ところが、こういうニーズに対応したサイトは現在のところない。自分で「○○駅は大きいからバスがあるだろうか」と推測しながら検索するしかない。バス会社は、深夜営業のカラオケボックスファミリーレストラン、そしてタクシーからもう少し客を奪えると思うのだが、そこそこの乗車率に満足してしまっているのではなかろうか。
ある会社はバス停の写真を掲載していた。残念ながらスマートフォンでは読みにくいが、乗る人のことをよく考えていると思う。
一方、別の会社は、主要ターミナルにたくさん停留所があることから、○○ビル前と表記していた。東京タワーやスカイツリーならだれでもわかるが、○○ビルと言われて誰がわかるのだろうか。「○○改札を出て、信号わたって3つ目の停留所」のように書いてくれないとわからない。終電後に改札口で乗り場案内することを想像してみたらいい。「バス停はどこか」と聞かれて「○○ビル前です」と教えるだろうか。ビルの場所は地図サイトで自分で調べてください、ということだろうか。担当者は現場に行かずに事務所内で乗り場案内を作ったに違いない。
世の中には客の気持ちを理解するのが難しい仕事というのもある。例えば、週末医療を担う医師が、自ら余命半年になり、治療を受けつつ、現役として医療サービスに反映する可能性はほとんどない。でも、バス会社だったら都会に行って帰ってくるだけなのだから一度やってみたらいいのではないか。自社の社員だと停留所の位置やダイヤは理解しているかもしれないので、家族や知り合いに頼んでみたらどうか。また、他社のバスに乗ってみるというのはどうだろうか。

  • 終電間近なので電話や窓口で人に聞くのは禁止。
  • 深夜急行バスを使って、行ったことがないところに自力で行く*1。ただしスマートフォンで調べるのは許可する。
  • 乗車停留所から数駅離れたところ*2に連れて行き、終電間際に行先を公表して実験開始とする。

どれだけ難しいことを客に強いているのかがよくわかるだろう。

通常の路線バスの場合

PDFの路線図と、時刻表は調べられるが、路線図が複雑でどのような経路でバスが走っているのか判読不能な場合がある。A経由Z行きと、B経由Z行きのどちらに乗ればいいのか、とか、どちらがAからZまで行くときに所要時間が短いのか、とかは有料の検索サイトを使わないとわからないことがある。同じ系統だとしても、一部経路が変わる場合は、違う路線として全停留所路線図を掲載すべきなのである。そもそも、なぜ同じ系統番号を使うのかが理解できない。1週間くらい、毎日乗っていればそのうちわかります、多少誤乗や乗り過ごしがあっても仕方がありませんというのが果たしてサービス業としてあるべき姿なのだろうか。

*1:普通、深夜急行バスで初めての場所に行くことはないが、特に社員が試す場合は、自社営業区域に自社のバスで行くのは簡単だし、バス路線にもある程度詳しいだろうからハンディとして行ったことがない場所を選択する

*2:新宿駅に連れて行って、新宿からバスに乗るなら予習ができてしまう。例えば東京の深夜急行バスターミナル駅から出ることが多いので、例えば新宿にも渋谷にも行けそうな地下鉄の駅あたりを起点とする