スマートフォン決済で納税

 PayPayの請求書払いを使って、税金の支払いをしてみた。
 税金の支払いは支払いを忘れる心配がない銀行口座振替が最強と思っていたが、還元率の高いクレジットカード払いを試してみようと思い、いったん口座振替を解除してみた。
 しかし、クレジットカード会社からのコンタクトはメール。煩わしいダイレクトメールが来たとしても全部迷惑フォルダに突っ込んでいるので、たまに「税金をクレジットカードで払ってみませんか」とか「あなたは支払いを忘れてますよ」と教えてくれているのかもしれないが、気が付かない。
 Fintechで必要なのは、煩わしいお知らせではなくて「秘書」である。「あ、税金ですか。残高が十分あるなら気にしないでください。払っておきました」という感じにしてほしい。まさに口座振替はそういう機能である。
 最近も定期的な支払の期日が来ているのに偶然気が付いて、「ああ、口座振替じゃなかったんだ。支払わなければ」と思って通知書を見てみると

スマートフォン決済ができます

と封筒に書いてあった。
 確かにコンビニ支払いができるのであればコンビニ請求書をスマートフォンのカメラで読めばスマートフォン決済はできるだろう。試しにやってみることにした。
 例えばPayPayは電算システムという会社と提携。コンビニエンスストアの収納代行をやっている会社である。自治体がコンビニエンスストア収納代行会社と契約していれば、スマートフォン決済も可能となる。
 クレジットカード払いよりもいくつかの点で優れている。

カメラ付きのスマホで完結

 やってみたらコンビニ店員が店頭で行うバーコード読み取りと同じことをするだけ。昼休みにコンビニ払いの用紙をレジに大量に持ち込んだり、ポイントを稼ぐためにnanaco払いで店員を煩わせてレジ待ち行列を伸ばしている人がたまにいるけれど、自宅でゆっくりできる。そして、ゆっくりやってもすぐ終わる。いつでもできる。

予約が可能

 例えば、固定資産税であれば前年に税額が決定して年1回封筒が届く。そこには年4回支払ってくださいと書かれている。
 口座振替の場合は、課税明細書が届いてもすぐゴミ箱行きで問題ない。銀行口座残高さえあればの話であるが。クレジットカード払いの場合は、1年分まとめて払うこともできるが、1年近く先でいいものまで払うのはもったいない*1のであれば、年4回ネットで手続きが必要である。わたしの住む自治体の場合はカード番号を保管してもらえないので、毎回クレジットカード番号を手入力する必要がある。
 PayPayだと、予約ができる。課税明細書が届いたら自分で手続きは必要であるが、年4回分をまとめて予約できる。システム障害が怖いので、期限の1日前くらいに支払日を設定しておく*2スマートフォン決済のアプリを普段使いしていれば、クレジットカード番号に相当するものを毎回入力する必要はない。
 予約というシステムがとてもうまくできていると思う。
 残高払いしかできないが、スマートフォン決済の残高が足りなければ銀行口座から自動引き落としにすることができるので、決済失敗の可能性は少ない。結局、口座振替を使うのと同じように最後の信用の砦は銀行口座残高ということにはなるのだが、銀行に喧嘩を売りつつも銀行に頼っている決済業者はなんて図々しいんだと思いつつ、消費者としては便利なものを使うだけである。

手数料無料

 銀行は、決済をするのが本業で、預金を預かるためのサービスとして、口座振替手数料は伝統的に無料である。銀行は次々と無料サービスを有料に変えてきてはいるが、さすがにネット銀行まで巻き込んで業界が談合して有償化しなければ預金流出を招くだろう。当面無料は維持されると思われるが、ポイントは、会員制のサービスをやっている場合に限定される。
 クレジットカード会社は、手数料を取る。その代わりにポイントで還元をするのであるが、近年は還元率が下がっている。クレジットカード会社はポイントが得られることをクレジットカード払いの宣伝に使ってきたが、還元率が悪化するとポイントよりもクレジットカード払い手数料の方が高くなってしまう。
 スマートフォン決済は、どうか。手数料は取らない。しかし、ポイントも払わないという立場のようである。PayPayの場合は2022年4月以降のポイントは付与しなくなった。わざわざコンビニに紙と現金を持って行かなくていいし、ちまちま口座振替申込書を書く必要はないし、都度都度クレジットカード番号を入力しなくていいので、スマートフォン決済が銀行口座などとつながっている人にとっては利便性は圧倒的に高い。だから、銀行と同じでいいという判断だろう。新興企業であるスマートフォン決済業者はポイントを出しすぎて赤字体質である。競争力があるサービスにはポイントを出さない。

 さて、スマートフォン決済の課題はあるか。
 個人の支払いであれば便利だが、法人や個人事業主にとっては支払が終わりではない。所得税の計算などにつなげていかなければならないが、スマートフォン決済では請求書が出ない。最近は他の金融機関もペーパーレスが進んでいるが、家計簿サービスなどとの連携は十分できている。紙の領収書はもはやいらないけれど、データを外に出せるようにはしてほしいんですよね。

*1:銀行に預けていてもほとんど利息は付かないが、高額納税者であれば分納したいだろう

*2:銀行がシステム障害を起こしたら、銀行が納税者にも収納先にも平謝りで何とかしてくれると思うが、スマートフォン決済業者だとどうなるのかわからない