千葉の鉄道

千葉県の政治家は、圏央道請願は残区間建設待ちという状態まで持ち込んだため一段落した。交通政策についてビジョンがなくなってしまった。
さあ次は、ということで鉄道ということになっている。印西市の成田新幹線建設予定地は太陽光パネルで覆ってしまった。さて何だろう。いすみ鉄道ががんばっているし、県はJRと組んで私鉄も巻き込んだフリーきっぷを充実させているが、どちらかというと観光政策、過疎対策に分類しておく。

目玉は京葉線

話に聞くのは次の2つ。

京葉線を新宿へ

りんかい線羽田空港アクセスの要所とされている。JRは投資をして北部方面からのアクセスを改善しようとしている。東京港にトンネルを掘っているので今更複々線かもままならないところに千葉方面から京葉線を参入させることになる。
途中の新木場駅は乗換駅としてはキャパシティが足らなくて、平日夜間は人が線路に転落しそうである。改善しようとすると、有楽町線及びりんかい線の上を走っているため魔改造が必要となっている。理想的なのは新木場-舞浜間の有楽町線を延伸して、ディズニーリゾートに東京メトロ一本で行かれるようにすることなのだ。舞浜駅もディズニーリゾートからの帰り客でホームが混むので上りだけでも分散するのは悪くない。しかし、荒川に大鉄橋を増設しなければならない。土地面積上余裕があるのは葛西臨海公園駅だが、同駅止まりにしてしまうと、東京都の施策になってしまう。
それなら新木場通過で新宿までホームライナーを走らせれば乗り換え客は減るし、乗り換えがいらなくなった千葉県民も助かるというのはなんとなくは理解できる。交渉力があるのであればやっていただきたいが、総武線ホームライナーを代わりに廃止するようでは困る。海浜幕張駅に線路を増設してあげたら蘇我方面を減便された過去を持つ。政令市なのに市庁舎最寄り駅が日中毎時4本という冷遇ぶりである。どちらかだけという提案を受けるのはあながち空想とは言えない。

理念なき新駅

幕張新都心は、ほぼ更地、広大な埋め立て地に今なお人口は1桁(豊砂地区)という場所に、イオンモールを誘致した。その際に作ったのが、車の渋滞と新駅の駅前広場と言われている。なお公園も作ったが、イオンにそっくり預けている。
更地に渋滞を作るというセンスもすごいが、新駅を造れと言わんばかりにロータリーだけ先行整備してある。
現在路線バスピストン輸送の新都心の交通をどうするのか。政治家たちは新駅ありきということで本格的に誘致を考えることにした。
オリンピックによる需要増を考えたが、一時的な重要だし、そもそも2020年には間に合わないらしいということがわかった。大義名分がない。いや、オリンピックが決まった時点ですぐ考えるべきだったのだが遅すぎた。
請願駅は地元の負担が大きい。首都圏の駅の料金表や、SuicaPASMOのプログラムを書き換えるだけで10億円かかるという。それゆえ川崎市は請願した小田栄駅Suicaには登録しないという選択をした。JR東日本は金のない自治体には冷遇をすると決めている。
では需要を作ろうということになって、ロータリーとは反対側に遊歩道を整備するという。京葉線の車庫をまたぐ必要があり、大がかりな物になる。ますます自治体の負担が増える。
ただ、隣の海浜幕張駅のポテンシャルを下げていいものだろうか。一駅増えたらそれだけ東京方面からの所要時間が伸びるのである。あるいは海浜幕張の方を捨てるのだろうか。捨てないということであれば戦略的新駅に快速を止めないのだろうか。
そして、日中毎時4本になった海浜幕張駅より先は1駅増えることでますます東京方面からの所要時間が伸びる。むしろこちらが問題である。
駅が増えれば公共工事が増えて街が栄える、というのは昭和の発想である。海浜幕張から先の検見川浜か稲毛海岸のどちらかを潰すくらいの覚悟でやってほしい。潰すというか、潰れる。
千葉駅のペリエ開発が進行中。建設ディベロッパーが焼き畑農業的に街を散らかしていくのはやめた方がいいのではないか。遊歩道を作って店舗を並べると、その時点でどこか別の店舗は調子が悪くなるし、新駅の店舗もやがて別の店舗によって調子が悪くなる。千葉県、千葉市公共工事を乱発する余裕はないはずだ。

千葉は遠い街か

幕張メッセで行われるイベント。カンファレンスの登壇者は「いやあ、朝からこんなところまで来ていただいてありがとうございます」と挨拶。みなとみらいのパシフィコ横浜で開催したらこういう挨拶にはならない。千葉だと「こんなところ」になってしまう。
同じ幕張新都心に入居するオフィスでも、来客があると「こんなところ」という挨拶が交わされる。他都県の住民にとっては多摩センターや筑波と同じ感覚なのである。そう言えば幕張新都心には新たな入居企業は増えただろうか。
京葉線は朝通勤時間帯の快速を全廃した。快速廃止に伴う影響は軽微であるし、中央線快速に比べれば速度も速い。しかし立川は東中野からほぼ一直線。一方で京葉線は新木場と浦安で大きく遠回りをする。千葉は感覚的に遠い街である。
わたしが政治家なら最優先は、8時半に海浜幕張に到着する通勤快速の新設である。停車駅は新木場、海浜幕張から先の各駅。線路は混んでいるので時短効果は小さい。でもイメージ改善には役立つだろう。現在特急が1本あるが、9時頃現地到着したい場合には早すぎる。
もう少しお金があれば武蔵野線分岐部から海浜幕張まで完全に複々線にする。京葉線は強風対策が進んできたものの、事故に伴うダイヤ乱れが起こると通勤時間帯は大混乱である。京葉線武蔵野線とが分離していればダイヤの回復力が違うし、増発も可能になるだろう。
武蔵野線新習志野止まりと、総武線各駅停車の津田沼止まりを延伸しよう。千葉方面に向かう客が、新習志野津田沼で降ろされることがなければイメージが違う。京葉線武蔵野線海浜幕張行きの折り返しとして1駅だけ行く新習志野行きがいくつか設定されているが、西船橋まで行ってもらえないだろうか。
小池都知事はこのレベルの対策は時差Bizとして鉄道各社にやらせている。時差Bizの効果を疑問視する声もあるが、道路では行われている社会実験を鉄道でもやった方がいいという意味では期間限定でもわたしは評価したい。千葉も与党交代が必要ではないか。

人口減少対応への抵抗

街の魅力を高めるための施策が欠けている。東京への通勤客の利便向上なくして、上野東京ラインで脚光を浴びる南北交通とどのように差別化を図っていくのか。
例えば自動運転が普及するが、東京には駐車場がないから無人回送が実現するまではさすがに都内まで自動運転は難しいのではないか、という仮説を立てる。すると、パークアンドライドができる駅が未来の勝ち組のはずである。
駅の横に安くて広い駐車場を作る。できれば立体でなくエレベーター不要とする。すると、幕張地区新駅横の京葉線の車庫は大変魅力的である。自動運転対応都市にして住民を増やしたい、というのであれば幕張地区新駅も悪くないかなと思う。
千葉市には総武線の車庫もある。候補地はたくさんあるのだが、いつまでも駅ナカにこだわるのはやめ、駅の隣は駐車場か駐輪場にしてほしい。店舗で無理矢理収益化する必要はない。街全体のことを考えれば、車で通勤すれば帰りに近所の店舗に寄るようになる。

以上、処方箋はあるのだが、

やはり駅ナカと駅前広場と遊歩道になっちゃうんでしょうね。