表記揺れ対策

 ということで、本日最初のテーマからは話からそれるので新しく段落を作ってみたが、複数の人間で文書を作ってつなぎ合わせるときに発生する「表記揺れ」↓

  • 中黒「・」をつける/つけない
  • 長音記号「ー」をつける/つけない
  • 句読点を「,」「.」にする/しない
  • 数字は全角数字にする/縦書き2桁は半角数字で1ますにする/半角数字にする
  • 地名は都道府県名を省略しない/政令指定都市など、主要都市のみ都道府県名を省略する/省略する
  • following〜は「次に示す」と書く/「右のような」と書く/「以下のように」と書く
  • a, b, and cは「a、b、及びc」と書く/「a・b・c」と書く/「a、b、c」と書く/「a、b、そしてc」と書く
  • one, two, threeを算用数字で書くとき、序数(first, second, third...)は漢数字で書く*1/算用数字で書く

など、これらを解消するためにはどうしたらいいか。
表記の統一手段は、いろいろある。例えば、5人で1冊書くときにはどうするかと言えば・・・

「統一規則を作る」
わたしがやっているように「長音記号は原則つける。ただし固有名詞は、その名詞の使われ方や名付けた人の使い方に習う」というルールを作る。表記揺れ対策のかける手間は他の方法よりも小さい。ある程度例示するとともに、書いている人が意識しないとルールはあまり守られない傾向にある*2
「辞書を作る」
Aはa、Bはbと表記しますよ、とひとつひとつ決めていく。正確性は高まるが、辞書を作るのがたいへん。ただし、「サーバー」「サーバ」といった表記揺れに加えて「機器」「本体」「ハード」「ノード」「はこ(俗称)」など、別の言い回しが考えられる場合は「本書の執筆ではserverの類は『サーバー』と書く」などと辞書的に決めていくのが一般的で、ルールだけでは対応不可能。
「索引や用語集を作る」
前項の辞書は、執筆者間で共有するもの。索引や用語集と言っているのは、執筆者が守るのはもちろん、読み手に対しても提供するものである。巻末に収録されている用語と自分が書いている章で用語定義に矛盾があってはならないから、執筆者の表記統一に強制力が出てくる。例えば前項の「サーバー」の場合はこの方式をとるのが辞書方式よりも有効である。専門書や提案書、契約書にも適している。ただ、世の中の書籍に付いている用語集の類は、読み手が知りたい言葉よりも、書き手が注釈したい言葉が収録されている。理想は読み手のためにあるべきものである。
「文書を書く人と校正する人とを分業する」
5人のうち4人は、書く内容に専念し、あまり表記統一にこだわらない。残りの1人が直す人となり、誤字訂正や文調の調整を行いながら、表記揺れについても特定ルールや辞書をもって直す。ただし、ルールや辞書を他の人と共有する必要はない。4人にとっては内容の品質に力を注ぐことができるし、残りの1人にとっても辞書作成コストもルール徹底コストが低くて済むが、校正者が変わると校正方針が変わるおそれがある。また、ワープロだけならいいが、図や絵やグラフの中に含まれる語句を直すのは大変。
「機械に任せる」
ATOK(R)などの日本語辞書を統一する、日本語変換ソフトに表記揺れを警告させる*3Microsoft(R) Wordの「表記ゆれチェック」機能を使う、などの方法がある。ソフトウェアへの投資が必要になることがある。また、古典の引用など、わざわざ表記を崩しているところまで自動変換されることがないように気をつけるといった配慮が必要になる。思ったほど校正作業が省力化されることはないが、ソフトウェアの設定さえうまくできれば、正確性はかなり高まる。
一長一短なので、みんなで話し合って決めよう。

*1:わたしは「first quarter」は、「第1四半期」「一-三月期」ではなく「第一四半期」「1-3月期」と書く。

*2:冒頭の例で、erは伸ばす、tyは伸ばさないとしたいのであれば、そういうルールであってもいい。ただ、語尾ごとにルールを決めるとルールを理解するのが大変になってしまう

*3:http://www.atok.com/abs/index.html