セミナー改革 (1)

 今は、放送用の高いビデオカメラやテレビ局がなくても、安価でビデオ撮影して配信することができる。プレゼンテーション用のシートを添付することも可能だ。インターネット、ブロードバンド、PCのソフトウェアがよくなったからであるが、これによってセミナーや講義といった「一箇所に集まって偉い人や講師の話を聞く」の類のイベントは遠隔受講することが可能になった。
 すると、人を集めて行う在来型のセミナーを行うときには、工夫が必要となってくる。今までは「自分ひとりで聞きに行っても教えてもらえそうにないことが聞けるありがたいもの」であったものが「わざわざ人に交通費や移動時間をかけさせるもの」として、競争力のないサービスになっていくのである。大学や企業がさまざまな形態で企画するが、人を集めてまで行う価値があるかが問われている。
 たとえば、わずか1回30分きりの講演なのに、最初の5分10分を自分の紹介にあてる人がいるが、そんなものは聞きたくない。話す内容がよければ講演者の名前や経歴に関心がわいてくることもあるかもしれない。でもそういうものは関心ある人が紙の資料で調べればいい。
 企業主催のセミナーでは、講演と関係ない会社概要を聞かされることがある。宣伝は仕方ないと黙って聞くのが聴衆の作法になっている。映画館の広告のようなものだろうか。封切り間近の予告編を見るのは楽しいけれど、従業員数や営業所の数の類は全く興味を持てない。
 「パネル・ディスカッション」では、中には有意義な話が聞けることがあるが、多くは「時間がないが」と連呼しながら自己紹介に時間を費やす場合が多い。時間がないと言っているその時間がもったいない。5人いると、ひとり2分で10分。さらに司会者が5分10分ディスカッションの基調演説と言い訳しながら好き勝手な自説を振りまいていると、あっと言う間に20分。60分のディスカッションだったら、二言三言くらいしか貴重な発言を聞くことができない。参加料を払ったり会社を抜け出してまで来るほどのことでもないかもしれない。(つづく)