BLOGOSの感想

大阪市役所は変わっていない

最近、BLOGOSがおもしろい記事が集まっているなと思う。
解雇OKで変わるもの、変わらないもの (http://blogos.com/article/58958/)では、

ゴーンさんがやった日産大リストラ計画を作ったのが実は日産生え抜きの役員たちだったのと同様、問題は実行力の有無なのだ。

とあり、そういうものか、と思った。
そして次に読んだのが、大阪市職員の間で新給与明細書に非難囂々…職務中にツイッターの橋下市長も規則違反?(http://blogos.com/article/58931/)である。上記の日産の記事をそのままあてはめれば、橋下さんがやった厳格勤務を実行しているのは大阪市の役人ということである。もともと役所というところは変な決まりがいっぱいあるところであるが、その決まりは前例が支えになっていた。前例がない新しい決まりができて、いったんは労働組合が抵抗してみたものの敗北してしまった。反抗する術を失った途端に、崩せないルールとなり、同じく崩せないルールである「前例」と同じ取り扱いになった、ということである。
橋下さんが来て大阪市役所が変わってしまったということではない。

役所は結局変わらない

ということだ。変わった方がいいとも思わないし、変わらないほうがいいとも思わない。ただ、変わってしまったと思っていることは問題である。市長はどう思っているのだろうか。変わったと思っているのか。変えたいと思っているのだろうか。直接話したことがないからわからないけれど、事実は、変わっていない。このことを市長に教えてあげる人がいるのだろうか。
合併、倒産、買収、そしてトップの交代など、企業内のルールが突然変わることはよくあることだ。その時、優秀な人から順に大量に流出してしまう会社と、そうではない会社がある。大阪市役所はどっちなのか、ということが問題である。

イカー通勤は非常識なのか

新給与明細の記事で、わたしが気になったのは給与明細の説教文ではないし、喫煙すると懲戒の話でもない。

懲戒処分事由として、喫煙と並んで多いのがマイカー通勤だ。このマイカー通勤は、電車・バスなどの公共交通機関の利用を嫌がり、時間にルーズな人物が行うものとの印象が強いだろう。だが、必ずしもそうは言えないようだ。

もちろんマイカー通勤、勤務時間中の喫煙は、決して褒められることではない。

とする、このブログ執筆者の見解である。
イカー通勤が会社にとってリスクがあることは知っている。数千人が働く都会の本社ビルで、全員が電車バスを嫌ってマイカー通勤を始めたら街がパニックになることもわかる。通勤中に事故を起こしたら労災の取り扱いでもめたり、会社が訴えられたりすることもわかるし、禁止する会社があることもわかる。禁止されているのにやったら通勤者本人の自己責任ということもわかる。
ただ、自粛や禁止は会社の都合であり、会社の論理であって、勤労者の論理ではない。自宅を出てから帰宅するまで勤務の一部というのは労災上の取り扱いであって、自己責任が貫かれていれば個人の自由だとわたしは思っていた。ところがこの筆者はルーズな人間が行うとか、褒められることではない*1とか、言っている。日本風の恥ずかしいことの一つなのだろうか。
自動車保険には通勤・通学という区分があるし、公共交通機関が少ない地方では誰も疑いがなく行っているのに都会人だけ悪いことのように言われるのはとても不思議である。ちゃんと保険に入っていて、会社の近くに路上駐車せず、運転による疲労を蓄積せず、渋滞しても遅刻の言い訳にしなければ、勤労者、生活者が自ら会社の論理、社会の論理に染まって「マイカー通勤は悪いこと」と洗脳される必要は全くない。介護や保育や持病で出勤に自動車を利用する人がやむを得ないとも思わない。使って当然である。そして、それ以外の人が「時間にルーズな人物が行う」なんて発想自体が古いしありえない。確かにガソリン代、高速代を気にしない人は金持ちだな、とは思うけれど、いいとか悪いとかいう価値判断が入る余地はない。
例えば、法律で所持を禁止されているものというのはある。麻薬とか銃刀である。使わなければいいとか、売買しなければいいとかではなく、持っていること自体がだめなことである。マイカー通勤はこれと同じか。事故を起こさなければいいとか、乱暴運転をしたまま会社の敷地に入るのを見られなければいいとかではなく、マイカー自体がだめなことである・・・ということか? 決してそうは思わない。事故とか以外に無免許もだめだし、縛られることはいっぱいあるけれど、マイカーの運転自体を平日にしてはいけないということは考えにくいし、考えたくない。たまたま、わたしはしないけれど。
喫煙については、わたしもできればしてもらいたくないし、喫煙所戻りの人が乗ったエレベーターのにおいすら嫌なのだが、会社や社会が喫煙を規制することはないと思うし、喫煙する者が出世できないというルールもおかしいと思う。会社も社会も人が触れ合う場であり、好んで迷惑をかけるのはいけないけれど、わずかでも迷惑をかけてはならないという社会にするよりは、人が触れ合って少しでも多く新しい、楽しいことを生み出していくことに気を向けた方がいい。
勤務先に迷惑をかけてはだめだとは思うが、勤務先に迷惑をかけていなくても少しでもかけそうであれば一切禁止、ということであれば、たばこは所持自体禁止、会社の近くのコンビニは全廃、自動販売機もだめ、オフィスカジュアルなんてありえない、前日20時以降は飲酒禁止、具合が悪くても平日に通院は禁止、ネクタイ強制、女性は制服、自転車ツーキニストはだめ、皇居ランナー向けのシャワールームは全部閉鎖、育児休暇禁止、社内恋愛禁止だけど寿退社強制、宴会は業務として強制、サービス残業は当然となる。こんな自己規制に力を入れて、イノベーションができるのだろうか。そして、こういう人が橋下市長を批判するのはおかしい。だめという意味ではない。滑稽である。
大阪市の職員は橋下市政に苦しんでいると思うのだが、変わるきっかけになればいいのにと思う。ただし、変えるのは市長でも罰則でもない。新しい政策立案ができない部署、できない人材は民営化と委託に回してしまうことである。喫煙したら懲戒なんて、暇だからできるとしか思えない。
ところで橋下さんがいなくなった大阪府庁はどうなっているのか。誰か、そのあたりを全国的に報じてもらいたい。

*1:もちろん褒美が出るような話という趣旨では同意するが、文脈からいってペナルティーはないものの悪いことの一種という意味だと思うが、わたしは決してそうは思わない