2024年JRダイヤ改正:京葉線通勤快速廃止問題 - JR東日本を擁護しよう

JR東日本は早朝上り快速の存続を発表したが、相変わらず政治家たちは怒っている。
通勤快速を一気に各駅停車にしましょうというのはさすがに乱暴すぎる。各駅停車にするにしても出発時刻を変えずに到着時刻を遅くするようでは「単に各駅停車にしました」ではすまない。通勤通学者は、到着時刻に合わせて朝の便を選ぶ。遠方から乗っていた人の通勤快速を各駅停車にしたのではなく、その便を通勤者から奪ったと認めざるを得ない。「こんな所から通勤しないでください。引っ越しをご検討ください。当社は習志野市から奥は客ではないと思っています」と喧嘩を売っているかのようだ。
・・・こんなことをつぶやいたところで、本当にJRが一方的に悪いのかは考えてみる余地がある。このブログでも書いてきたが、先にJRを突き放したのは千葉の政治と行政である。

1. とにかく道路が好き

アクアラインを誘致して以降、とにかく道路を国に要求してきた。歴史的にも、早くに京葉道路が造られ、成田空港が造られ、それに伴い東関東道が造られたためか、道路は国費で造るものという発想である。
一方、県・市として道を造ろうという発想がないから、県道・市道の多くは狭いし、交差点には右折専用レーンの整備が不十分で各地で渋滞が起こる。
どうしたらいいか。
現在では「また新しい道路を1本造ればいい」という発想になっている。新湾岸道路は京葉線に沿って造られるという。

2. 鉄道支援のふりしてやっぱり道路が好き

鉄道周辺にも公共投資を行うけれど、その目的は建設需要を作ることにあって、交通利便性の向上には興味がない。
千葉市の個別政策はこちらのファイルにまとめられている。
https://www.city.chiba.jp/toshi/toshi/kotsu/documents/ctpc-7-data2-2.pdf
しかし、りんかい線京葉線乗り入れなどは掛け声だけでJRはあっさり否定。
主要事業で達成しているのは駅前広場の整備くらいなものである。
誉田駅(H15~)
・千葉駅西口周辺(H 元~)
幕張駅(H8~)
蘇我駅周辺(H17~)
駅前広場を整備して、何が良かったのだろう。広場に乗り入れる想定だったであろうバスやタクシーは人手不足で来ないのである。
話題になった幕張豊砂駅はイオンとともに千葉市がJRに拝み倒して「造っていただいた」駅であるが、その駅前にはもともとイオンモール幕張新都心のバスターミナルと駅前ロータリー用道路があった。これらを全部壊して幕張豊砂駅前広場に再整備。しかし、やっぱりバスもタクシーもあまり来ない。
30年以上前から来ないバスのためにひたすら道路を作ってきたのである。
千葉市も車社会になっている。駅前には一般車による送迎スペースをちゃんと整備すれば市民は喜ぶと思うのだが、送迎者スペースは駅入口から見て遠いところにちょろっと造った程度で「やりました」感を出している。違うところに自家用車の長い路上駐車の列が完成する。
使われない道路じゃなくて、公共交通機関への運行支援をしたらよかったんじゃないのかと思わざるを得ないが、千葉県、千葉市にとって、交通問題はどうでもいいのである。とにかく建設ができればよい。
バスのICカードシステムを支援し、エレベーターを造り、エスカレーターも増やす。
業者さんは喜ぶかもしれない。
しかし、駅周辺の設備はよくなっていても、駅に来る鉄道とバスは減便続きで、利用者のことなんか考えられていない。

3. 高速バスの元気がない

数年前であれば快速をやめようが減便しようが問題にならなかったはずである。
なぜなら、代替の遠距離バスが充実しつつあったからだ。
しかし、コロナ禍で深夜急行バスを中心に休止便されてしまった。さらには人手不足、働き方改革により、バス会社は車両があっても減便せざるを得ない状況に追い込まれている。
JRにとっては不運だった。

4. 改悪しても文句を言わない

JR千葉支社は、沿線県市が束になって抗議してきたことに驚きを隠せないであろう。
2024年3月改正は通勤快速廃止で目立ってはいるものの、利便性の低下という意味ではこれまでのダイヤ改正の方がひどいものだった。
・快速電車の千葉市内各駅停車化(2002年)
武蔵野快速、快速むさしのドリームの廃止(2013年)
千葉市内の各駅停車は海浜幕張で折り返し*1と、千葉市内減便
・朝の快速減便 (※2013年。さらに2024年3月では全廃予定だったが2本のみ残存が決定)
・コロナ禍による終電繰り上げ(2020年)
・夕方上り快速全廃(2023年)

10両編成車両を用いた西船橋行きの増便による混雑緩和など、中には改正と評価してよい変更もあったが、ほとんどは遠距離利用者につらくあたる内容ばかりである。
朝夕の通勤を不便にしても、家を買った人は簡単には千葉県を出て行かないと思うが、夕方の上りを不便にされたら、埼玉や東京や神奈川の人はわざわざ千葉なんかに来ない。特に鉄道でなんか来ない。さらには高速バスもない。これによって起こっているのが千葉県内、特に千葉市内の京葉道路を中心に発生している自家用車の慢性的な渋滞である。近年は千葉市から市川市の高谷まで、週末の夕方には10㎞以上にわたって渋滞する。同じ渋滞するなら千葉の海岸より神奈川の海岸に遊びに行った方がいいとなる。

朝の外房線内房線の通勤電車は、乗降口付近は乗り切れないほど混んでいるのに、6両の編成が来る。
房総半島の南部では、とうとう2両編成になってしまった。15両編成の快速で東京から来て、後続に乗り換えたらいきなり2両である。
ここまで派手に街の価値低下を仕掛けられている。それが道路優遇政策への反発だったかどうかはわからないが、千葉の政治も行政も何も言ってこなかった。壊れたテープレコーダーのように元知事も市長も地方議会の人たちも「圏央道に全力投球です」しか言わなかった。
千葉市内に新千歳空港周辺みたいな大規模なMaaS拠点を造り、千葉まで電車で、その先はレンタカーでどうぞとしたらよさそうだけれど、前述のとおり、千葉市が造りたいのはバスが来ないバスロータリーと、タクシーが来ないタクシー乗り場である。次はどこの駅前で再開発をやるのだろうか。いつまで再開発をやったら気が済むのだろうか。


こんな状態で、JRが千葉市から先を見限ったとしても、文句は言えないのではないか。
今さら知事や市長には異議を申し立てる権利があるのだろうか。ごめんなさいが先ではないか。
「減便するんですか。維持するには何が必要ですか、それは財政支援ですか」って、知事や市長はJRに話しかけていますかね。

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*1:千葉市の助成で行われた海浜幕張駅線増によって実現された