謎のこだわり

JR総武快速線の車内ディスプレイ

少し解像度が悪く、特にスマートフォンでこの書き込みを読んでいる人にはわかりにくいと思うが、疲れて電車に乗った人が見てもこんな感じに見えるだろうからこのまま使わせていただく。

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路線図には現在地を示す赤以外は灰色と黒、そしてラインカラーの濃紺が使われている。

過ぎた駅と行かない駅は灰色で表現されているが、灰色と黒の区別はつくか?

視力がいい人にはまったく問題ないかもしれないが、アクセシビリティの専門家によるチェックを受けているように見えない。鉄道は現場が大事なのに、車内で見る人の気持ちは気にしないみたい。食品業界や小売業界の人から見たら「コンシューマー向けのサービスを会議室で決めているのかよ」と笑われるに違いない。

この電車は途中津田沼止まりである。

この路線図で伝えるべき最大のメッセージは、

津田沼から先の稲毛と千葉には行きません

ということである。現に、途中駅の係員は放送で説明し、遠方への利用者に後続便の利用を勧めていた。

ところが、漢字の駅名は識別が困難な黒と灰色。

ラインカラーは少し太めなので写真よりはわかりやすかったが、なぜか終点千葉まで濃紺で引かれている。千葉から先は灰色である。

これでは千葉行きに見えてしまう。

 

「快速は東京から千葉までです。乗りたければ全員覚えてください」

ただ、JR東日本にとって、これは誤りではないのだと思う。総武快速線は東京から千葉までの路線で、総武快速線は常に東京から千葉まで見せなければいけないのである。

総武線快速の上りは東京から先、直通する横須賀線に入ると各駅、総武線快速の下りは起点の東京から快速運転である。

特別快速や通勤快速が廃止されたので、すべての快速電車は東京、新日本橋、馬喰町、錦糸町の各駅に順次止まるが、この区間は各駅に停車するとは言ってはいけない謎のルールになっている。

過去にこのブログでも取り上げている。

各駅停車でなくても「各駅に」停車 - 作文の練習 (hatenablog.com)

JRの中でどういう扱いにしてもかまわない。ただ、それを乗客に押し付けるのはどうかと思う。千葉から東京方面は緩行線と急行線が並行していて、錦糸町を出ると両国辺りから急行線が地下に入って、トンネル内も快速として運転。そんなことは乗る人にとってはどうでもいい。

東京から先は各駅停車、東京からは快速運転というアナウンスがある。

「東京駅から快速」ではないのである。

東京駅から「は」快速だと言っている。

一般常識から考えると東京駅の隣の駅は通過すると解釈するだろう。聞かなかったら気づかない人に対してあえて注意喚起しているのだから。しかし、新日本橋駅には必ず止まる。

事実に反しているとは言わない。ただ、「は」の用法としては適切ではないだろう。

日曜休業の店があったとして、1月3日が日曜のとき、

年末年始は閉店します。

1月3日からは平常通りの営業です。

と聞いたら、どう解釈するのが正しいか。新年は3日から営業と勘違いする人がいるだろう。3日は日曜だから休みに決まっているじゃん、と言われたらそれまでだが、普通は「1月4日から」ってアナウンスすると思うし、あえて「3日からは」なんて言うだろうか。

「東京駅まで、東京駅からを言葉通り受け取るのは乗客として失格である。路線図を頭に入れてから私の話を聞け」というのは乗客よりも社内ルールを見て仕事をしているとしか思えない。

中央線快速は三鷹まで複々線にしたのに地元に配慮して休日しか通過運転できていない。中央線快速の上りで「三鷹から先は東京まで快速運転です」なんて言おうものなら、吉祥寺や杉並3駅の地元からクレームが来るだろう。新日本橋と馬喰町の両駅の利用者はJRに馬鹿にされているのである。

錦糸町から快速運転します、錦糸町からは各駅に止まりますの方が実態に合っていると思うが、乗客には総武線快速は東京から千葉ですと言い続ける。

だから津田沼止まりであろうと、東京から千葉までの路線図を見せる。これはJR東日本のこだわりである。

ディスプレイの左上に大きく「津田沼」ゆきと書いてあるのだから問題ないのでは

と考える人もいるかもしれないが、わたしはそう思わない。

乗る電車のすべての駅名を暗記している人がどれだけいるのか。東京に行ったことがあればほとんどの人が知っている山手線でさえ、停車駅を知っている人が少ない。だから古今東西ゲームの一種として「山手線ゲーム」なるものが存在するのである。普段の通勤通学路線でも暗記しているかどうかは微妙なのでは。ましてや、初めて乗る人もこの情報を受け取る。

電車は、行き先の駅を頭に入れて乗るものであって、途中駅を知らないと乗る資格がありませんと言われたら鉄道ファンと鉄道業界の人しか電車には乗れなくなる。個人的な経験では外国人からよく聞かれる質問に「この電車は〇〇駅に行きますか」というものがある。「この電車は〇〇行きですか」と聞かれたことはない。

ディスプレイで可変の路線図を掲示するということは、乗っている電車が降りたい駅に止まるかどうか一目でわかるようにするためだと思う。

しかし、そういう乗客のニーズはどうでもよくて「快速は東京から千葉まで」をどうしても見せたい。そういう知恵は編成買い切りの広告に使えばいいのであって、JRの書類上の定義なんてどうでもいい。余計なことを教育しないでほしい。

 

ちなみに、各駅停車津田沼行きであれば津田沼から先は正しく灰色になる。各駅停車はラインカラーが黄色で、黄色い帯を巻いた別の車両が使われている。

快速電車の方が電車が新しく、ディスプレイを制御するソフトウェアも地図も新しいので、プログラムの制約ではない。JRのこだわりである。

慣習を優先し、サービスを見直そうとしない。

駅ナンバーは使わないのだろうか

京急*1や京成は4か国語をパカパカ取り換える。乗客相手に動体視力の試験をしたいようなのだが、JRは漢字とローマ字だけなのでそこは評価できる。

ただ、子どもや外国人には不親切なのでどの地図においても駅ナンバーを表記した方がいいのではないか、しかも漢字よりも大きいマークを使ったらどうかと思う。