小さなPCが手元にある。内部の部品を冷やすための冷却扇がなく静かなので、居間に最適だった。ところがWindows 8時代の製品で、Windows 10を動かすには少し重たい。
Googleが古くなったハードウェアを再利用するためのOSの早期アクセス版を公開したため、試してみることにした。
Chrome OS Flex
という。
以下、備忘として残す。<正式版では仕様が変更される可能性がある>
用意するもの
- USBメモリー
- 起動用メモリー作成用PC
- Chrome OS Flexを導入するハードウェア
- PC、Macなど。
- USBメモリーで起動可能である必要がある。
- UEFIの設定がハードディスクから起動するようになっていて、すでにハードディスクにOSが入っている場合、OSはそのままでもいいが、UEFIの設定でUSBメモリーの起動順序を高めるか、起動時に手動選択してUSBメモリーを選ぶ必要がある。UEFIによってはUSBメモリーという表記ではない場合があるので要注意。
- ストレージがなくてもOS起動は成功するが、次回からUSBメモリー不要とするにはストレージが必要。
- 起動のみであればインターネットは不要であるが、ストレージへの導入時には最新版のチェックが行われるのでインターネットに接続することが推奨される。
導入手順
インストールガイドのページにアクセスする。
support.google.com
ページに書いてあるが、概要をまとめると次の通りである。
- Chrome OSに「Chromeリカバリ ユーティリティ」という拡張機能を導入する。
- Chromeリカバリ ユーティリティを起動し、メーカー名としてChrome OS Flexを選ぶ*2。
- さらに、製品名として、「Chrome OS Flex (Developer-Unstable)」を選ぶ。
- USBメモリーをPCに差し込んでUSBインストーラを作る。
- USBインストーラをインストールするPCに挿して起動する。
- Chrome OS Flexが起動したら、指示に従う。
とても簡単である。
感想
Chromeリカバリ ユーティリティという、Chromebookなどのプリインストールハードウェアをリカバリーするためのソフトウェアでインストールをするのが斬新ではある。ただ、正式版が出た時には変わるかもしれない。
Chrome OS Flexを導入予定のPCにはすでにOSが入っていなかったので、このPCでUSBインストーラを作ることができない。それで別のPCを用いたところ、クリックしてもダウンロードが始まらず、ウィンドウ内に何も表示されない不具合があった。仕方がないので、Chromebookを用いようとしたところ、USB-Aの差込口が見当たらなかった。実はよくよく探したらあったのだが、普段使わないので、その時には気づかなかった。さらに別のChromebookを用いてようやくUSB インストーラを作成した。
USBインストーラ作成では、Chromebookが非力であるせいか、ダウンロードして、解凍して、USBメモリーに流し込むまでに20分くらいかかった。ただ、Chromebookでもやろうとすればできるということだ。
導入先のPCもまた非力なので高速インストールは期待していなかったが、あらかじめ画面に20分程度かかることがあると表示された。そこまではかからなかったけれど、やはり待たされた。
初期画面で、言語とキーボードを選び、さらにはネットワークもLANかWi-Fiを指定する。あとは難しい操作はない。例えばIPアドレスの取得や時刻同期は自動だ。Googleアカウントを入力すれば、わたしの場合はChromebookをすでに使っているので既存端末の設定が自動で同期されて、そのまま利用開始となる。
同期が完了した直後は、アプリメニューの表示方法がChromebookと同じように下から画面全体にメニューがせせりだすタブレットモードだったが、まもなくWindows 10のスタートメニューのように左下に固まってアイコンが出るデザインに自動で変更された。デスクトップ用ということなのか。
動作はChromebookと同様に軽快だった。個人的にはシャットダウンしていて画面も消えたのに電源ランプが消えない不具合に悩んだが、これはChromeではなくUEFIの設定を変えることで解消した。
手元のミニPCには、オーディオ、ビデオ関係が接続されていないので自分には検証できないが、「OK, Google」でお馴染みのGoogleアシスタントは導入できるようだし、Webカメラがあれば会議も可能かもしれない。ただし、ハードウェアの性能を必要とするので、実用的かどうかは導入先のハードウェアによるだろう。
貧乏ユーザーの救世主か
製品版Office 365は使えないが、ブラウザでMS Officeは使えるし、Chromeブラウザは普通に使えるのはChromebookと変わらない。居間でネットサーフィン程度に使うには十分だ。
ただし、Googleはハードウェアの寿命延長によって持続可能な社会を実現しようとしているのではない。他社OS利用者にGoogleを使わせたいからFlexを出しているにすぎない。自社OSが初期導入済のChromebookについては、古くなると更新プログラムが提供されなくなる。
実は今回のFlex導入は、間もなくGoogleに見捨てられるChromebookの後継として用意したものである。
Windowsは露骨に古いハードウェアを切り捨てなかったが、時々バージョンアップして、古いバージョンを切り捨てるという戦法だった。Microsoftが8.1の後継を10と決めたときに、10が最後かつバージョンアップしないと発表していたのでどうするつもりなのかと思っていたら、やはり11を出しますということになった。11が出る直前にデスクトップPCを購入したが、CPUが互換リスト入りせずに11にバージョンアップできないことが判明し、がっかりしている。ひどい仕打ちではあるが、古いものを全部救っていると新しい技術を投入できなくなる。10だけですでに十数回バージョン番号が上げてきたが、2015年のリリースから6年程度で10の継続を断念することとなった。
Chrome OSは、メジャーバージョンアップという概念を使わず、ひたすら1からバージョン番号を増やしていき、今や101である(2022年4月現在)。
今回はFlexによって古いハードウェアをサポートすることになったが、いつかは切らなければいけないわけで、どうやってやるのかが見えないのが心配である。