思い出の写真は、個人にとってなくしたくないデータのひとつである*1。近年はビデオも媒体ではなくて不揮発性メモリーやハードディスクに格納することができるようになった。なので、コンピューターのファイルと同じように扱うことができる。
最近はクラウドの方が安全で管理の手間がないと言われている。しかし、わたしは家庭用NASを使っている。
- クラウドのいいところ
- 保管場所が安全
- 管理の手間が少ない
- 常に誰かが見張ってくれる
- 家庭用NASのいいところ
- 継続料金は不要で、電気代のみ
- 大量アップデート、大量ダウンロードのときに通信回線を使わなくてよい
これからパソコンを始めるという人にはいきなりクラウドを勧めている。MicrosoftでもAppleでもGoogleでもその他でもいいのだが、スマートフォンやパソコンを使い始めて、機械から言われるように操作していると自然と始められるようになっている。サービスを使わせたいというのもあるのだが、個人向けの機械を売っている側からすると「データが壊れた」とクレームされるのはとても面倒くさいのである。だから、比較的初期の段階でクラウドを使いませんかと言ってくる。あるいは、こうしてください、ああしてください、と指示に従っていると「最初の数ヶ月は無料ですから」といつの間にかサービスに入ってしまうこともある。自然と始めてしまうため、何をどこに置いているのかわからなくなって泣きついてくる人がいるが、以前よりは「突然消えました」と言ってくる人が減ったのでそれよりはどこかに置いてある方がましなのだと思う。
保険の営業に「あなたはどんな保険に入っているんですか」、車のセールスマンに「あなたはどんな車に乗っているんですか」、不動産屋に「あなたはどんな家を買うんですか」と聞くのと同様、「あなたは大事な写真をどこにしまうか」と聞かれたら答えと理由を持っておこうと思う。
クラウドがどんなに安全で信頼できるものであったとしても、クラウドにしてみれば「他人のデータ」である。そして、とても重要な情報を扱うときに大事な考えは「もし失ったときにより納得できるのかどちらか」ということ。
失ったら絶対に復元できない情報において、何%の確率でデータを守ってもらえるかは関係ない。ある程度、しっかり守る必要はあるが、お金をかけて完璧にするのは意味がない。どんな保管方法でも壊れるときには壊れる。
「壊れました」を起点に、どうなるかをシミュレーションしてみる。最悪の状態になったときに、どんなことを感じるか。
クラウドサービスから「あなたのデータを紛失しました」という連絡が来る。他人が提供するサービスを使っているときには、サービスが壊れる予兆を把握することはできない。「いやあ、うちのサービス、もうすぐ壊れちゃうかもしれないんですよ」なんていうことはありえない。「もうすぐ終わってしまいます」という連絡も見過ごすかもしれない。突然終了するかもしれない。
こうなってはどうしようもない。問い合わせ窓口に文句を言うだろうか。データセンターに押しかけてなんとかならないか懇願するだろうか。そんなことをしてもデータを返してくれないのではない気がする。
家庭用NASの場合、一度に2箇所に書き込むことができるし、もう1台買ってコピーしておくこともできる。クラウドも同じことをやっているのだが、繰り返すがあくまでも他人のデータである。きちんとやっているかどうかを確かめる手段はない。手元にあれば確実に自分で確認ができる。
なくしたときに、自分のせいだとあきらめる方が個人的には合っている。他人のせいだと思ったほうが楽なのであればクラウドもいいかもしれない。
ここまで書いたが、実は家庭用NASのバックアップはクラウドに置いてある。やはり、自宅での保管は不安定だし、家にいないときは管理がおろそかになる。
別の場所、別の管理者の分散するというのが一番よい。
データを消失させてしまう原因として、残すべきデータをいらないデータと勘違いしたり、誤って消してしまったりすることがある。なので、サブのクラウド側は作成されたデータを受け取るだけで、送信元から消えても消さないように設定してある。
メインとサブを逆にしたほうがクラウド料金を節約できるが、たぶん、クラウドをメインにしてしまうと、手元でのバックアップ作業をおろそかにしてしまうのではないかと思う。自分の性格も含めて、持続可能なやり方を選ぶべきである。
今のところは手元で管理できる家庭用NASをメインとする運用を続けるつもりだ。