モバイルSuicaアプリ リニューアル後の感想

 JR東日本モバイルSuicaアプリが予定通りリニューアルした。
 リニューアル後にバグがたくさん出てお知らせ欄がお詫び続きだったのは予定通りではなかったのかもしれない。
 肝心の使い勝手はどうなのか。

なかなか使わせてくれない

 わたしの端末は、2021年3月現在でAndroid 11が動くので、そこまで古い機種ではない。それでもアプリの起動に20秒かかる。

ピロピロピロロロロン、まもなく、〇番線に、快速、〇〇行きが、まいります。危ないですから、黄色い線の、内側に、お下がりください。

JR東日本の駅で流れる自動放送が20秒である。これ全部聞くまで起動しないよかよと思う。直前に席を取ろうとしている人は焦る。
 起動時に自動ログインする機能があるため、ログイン操作をする時間は短縮されているものの、体感時間は長くなる。そして、ログインするということは通信が発生しているので、通信環境が悪ければさらに伸びるかもしれない。
 ちなみに、この文書を書きながらアプリを実際に操作して試してみたところ、

モバイルSuicaアプリを最新版(ver.6.0.x)に更新してください

というポップアップが現れた。急いでいるときにいらつかせる画面を増やしている。しかも

このメッセージは、既に更新をお済ませの場合も表示されます。

という注意書きも発見した。ということは、毎回これが出るということか。オプトインで表示できなくすることもできるが、不具合の影響を受けない人、そして、もう更新を済ませた人にまで一律にバージョンアップのお知らせを見せる必要があるのか。

高頻度利用客への冷たい仕打ちは相変わらず

 JREポイント還元によるSuicaグリーン券受取りのときに、登録したお気に入り区間から選択する機能は実装されなかった。これが非常に残念。
 お気に入り区間を登録しておけば、東京から横浜までいつも乗っていますという人は毎回、東京と横浜を選択する必要はない。
 しかし、毎回お気に入り区間を指定してグリーン券を買い続けていればJREポイントがたまり、そのポイントをグリーン券と交換できるようになる。
 ポイント還元を利用する上得意客に対して、その受取りの時だけは東京と横浜を自分で入力する必要がある。
 普通、飲み屋で常連になったら、名前を憶えてくれるし、好きな料理も勝手に出してくれるかもしれない。
 普通、ホテルで常客になったら、好みの部屋について毎度聞かれることはない。
 でも、モバイルSuicaアプリは、ポイントを使うため課金しない客に面したときだけ記憶喪失になり「はじめまして。あなたはどこからどこまで乗りますか」と聞いてくる。
 そのときだけたまたま違う区間に乗るかもしれないし、いつもは料金節約のために短い区間を選び、還元のときだけは長く乗りたいという人もいるとは思う。新宿から逗子へ移動するときに、湘南新宿ライングリーン車を利用すると50kmを超えるので1,000円になってしまう。朝の横須賀線下りであれば、武蔵小杉を越えればグリーン車以外の車両もがらがらになる。思い切って今日だけ奮発しましたという場合はともかく、時々使っちゃうんです、という人の場合であれば、途中からグリーン車ではなくてもいいや、という人も少なくないだろう。ただ、ポイント還元では短くても長くても消費ポイントは同じなので当然、下車駅まで乗りとおすことになる。ただ、これは例外の話。
 でも、いつも乗っている区間でいいですか?と聞いてくれてもいいじゃないか。
 なぜ普段はいつも乗っている区間を登録できるのに、ポイント還元の時だけだめなの?

意味が分からない

リニューアルしてもこれなの?
 「フィーチャーフォン時代に作成した画面をそのまま使っていたので、これまでは使い勝手が悪い画面がありました。」ということになっているが、それはいいわけだと思うんですね。
 実際の利用者にテストをお願いして、評価を受けるという作業をさぼっている。
 これはこういう機能で、こういう条件で、こう動かなければならないので、こういう画面になるんです、と、立て板に水のように開発業者から説明を受けて、ああそうですか、と承認印を押したしか思えない。
 アプリリニューアルに合わせてシステムの計画停止を行ったが、きっと利用者が検証するための環境もないんだろう。
 だって、数年に一度のリニューアルで、この出来ですよ。
 こんな会社にはMaaSには無理ですよ。JR東日本はデジタルトランスフォーメーションを実現できず、別の会社が「旅客乗車券統合」や「移動サブスク」を牛耳ることになる。JR東日本は、グローバルのプラットフォーマーか、国内の大手ECに、薄利の乗車券を卸すだけの存在になり、体力を落としていくことになる。
 エキナカビジネスも、まだ焼き畑農業的に続けているけれど、コロナのせいでますます成熟期が早まったのではないか。すると、固定資産による固定費負担と改装費負担が重たくなるだけで、まもなくシャッター通りが現れると予想している。作るのは得意でも、リニューアルは苦手な会社なので。
 イオカードICカード化を目指してSuicaを作った先駆者たちは、この現状をどう思っているのだろうか。
 もう少しがんばってください。ところで、開発業者は誰なんですかね。