あえて銀行窓口に行く

 技術の進歩で銀行店舗はやがてなくなると思っている。でも、何もしないでなくなるのを待っているわけではなく、多少は窓口におけるユーザー体験の改善が図られているかもしれないと思い、久しぶりに銀行窓口に行ってみることにした。
 オンラインで申し込める手続きは増えているが、郵便が届いたら記入して返送してください、というのが納得がいかない。返送の準備をしている間、書き間違えていたらまた1週間待たなければならない、書類を一つも漏らしてはならないと思うととても緊張する。その場で指摘してもらえる方がありがたい。多少交通費がかかっても、多少待ってもいいので、1回の手続きで終わらせるか、こちら側は受け取るだけにしてほしいのである。
 訪れたのは大手銀行の本店。午前中に行ったらロビーはがらがらだった。
 来店目的を告げると、いくつかの手続きが必要と言われた。入出金は相変わらず伝票に金額を書いて押印という仕組みは変わっていない。しかし、口座開設は自分のスマートフォンで途中まで手続きするなどの手法がとられ、ひたすら書類に記入させられる従来の手続きからはかなり改善している。手続き中は店の無線LANを使わせてもらえる。押印は残っているが、朱肉は不要という機械が用意されていた。署名もタブレットにタッチペンで記入する手続きが増えている。そばにボールペンも置いてあって間違えそうになったが、そこは窓口の人が優しく制してくれた。まもなく、タブレットだけで手続きが済むのが一般的になるだろう。
 感心したのは、窓口担当者が、来店者の待ち時間を最低限にしようとして手続きの順番をうまく組み立てて対応してくれることだ。数年前までは「手続きをしますのでいったん後ろの席でお待ちください」というのが常識だった。若干、行員側の手続きはあるのだが、上述のスマートフォン入力などをさせる間に並行して進められ、バックヤードの処理中の時は商品説明などを行う。後ろの席を勧められることがないだけでなく、カウンターでもほとんど待ち時間はなかった。
 大手行の場合、預金の種類ごとに通帳が作られることが一般的だったが、持っていかなかったというと「では紛失で処理しましょう」と柔軟な対応。
 さらにはクレジットカードの勧誘まで行い、来店客にかけたコストを回収しようとする。一般的には銀行は銀行が売りたいものを勧められることが多いから注意が必要だ。
 最後は、家族の人数に合わせて粗品の数を増やしてくれる徹底ぶり。さすが、本店の行員は違うなと思った。このおもてなし、自動化されたらどこに役立つのであろう。