東京五輪は既存鉄道で対応可能、それは本当か

2015年7月1日新聞各紙。
東京圏の鉄道整備に関する国土交通省有識者委員会が1日に既存鉄道で対応可能とする中間報告をまとめたそうだ。
慣れない観光客が数万人単位で押し寄せても航空便や鉄道は耐えられるだろう。東京の通勤電車は毎朝の通勤需要に耐えているのである。オリンピックは永遠にやっているわけではないので、競技時間の開始・終了に合わせて臨時列車を出せば輸送は可能だ。しかし問題は乗り換えや駅周辺で土地勘のない群衆が滞留することである。
確かに羽田空港-成田空港間の速達鉄道を建設する必要はない。JRの羽田空港乗り入れ構想は間に合わない。ただし、乗り換えなしで直行できるような仕組みを作らないと、悪天候や事故で鉄道ダイヤが乱れたとき、駅や車内はパニックになるのではないかと心配している。昨日は東海道新幹線焼身自殺があったが、テロを警戒したらますます管理が困難になってしまう。
東日本大震災当日、地震発生は昼の時間帯だったのに、その後人が駅に押し寄せた。JRは輸送再開をあきらめた。その時は観光客が今日に比べても少なかった。せめてあの群衆への対策があるとわかるまで対応可能と言い切ってしまうのはいかがなものか。

  • ツアー客は静岡空港茨城空港を使ってもらう。毎日通勤するのなら大変だが、訪日客が1往復するくらいは多少遠くても我慢してもらう。それより、大きな旅行かばんを持った団体客を東京モノレールに乗せるのはやめた方がいいと思う。
  • お台場などには仮設のバスターミナルを造ってそこから各地に移動できるようにする。例えば空港ならばバスやタクシーの待機スペースがあるが、オリンピック会場周辺にはない。都会の花火大会では、周辺道路を通行止めし、大量の路線バスを路上駐車させて帰宅客をさばくが、オリンピックでは、期間中毎日路上駐車させるわけにもいかないだろう。かといって、競技終了後の移動需要をすべて鉄道に押しつけるのはおかしいと思う。
  • 輸送密度の少ない自家用車は都内走行禁止にする。すべてバスか乗り合いタクシーにしてもらう。バスは全国からかき集めるがよかろう。障害者の車輌には許可証を発行すれば、誰でもオリンピックを会場で観戦してもらえるのだが、発行の基準が難しいので、普段使いはよくてもオリンピック会場周辺は一律禁止にするしかないのではないかと思う。許可証がなければ深夜以外は普段使いも禁止。
  • 競技の開始時刻をずらす。真夏なので屋外競技は早めに開催するのだろう。
  • 早めに開催すると鉄道のラッシュの時間に重なるので、通勤はあきらめてもらう。

もちろん、鉄道は全く役に立たないということではないので、鉄道にも観光客対策を進めてほしい。ただ、今のところ目立った動きとしては、ようやく外国語の利用案内を駅で配布する鉄道会社が現れたことと、京成電鉄などが車内の行き先案内を日英中韓4カ国語対応にしていることくらいである。字幕スクロールではなくカラー液晶画面なのだから4カ国語を全部まとめて出すか、2カ国語ずつ出すかすればいいのに、ひとつずつ出すので、表示時間は4分の1である。じっと見ていないと見たい情報を読む前に次の画面に進んでしまうのでとても読みにくい。それでいて、ダイヤが乱れたときには外国語放送がない。各社が負担を分担して6カ国語くらいの翻訳者を1箇所に常駐させ、各社から障害情報が寄せられたら日本語と同様の情報量でスマートフォンに流すようにした方がよい。車掌に外国語の訓練をするのは難しいかもしれないが、「しばらく運転を見合わせます」「まもなく再開します」くらいは英語で言わせればいいと思うし、音声情報も列車に送って、車掌が再生ボタンを押せば流せるようにしたらどうだろうか。
猪瀬さんがまだ知事をしていたら、都として積極的な発言をしていたのではないかと思う。少なくてもオリンピック期間中は終夜運転するくらいはもう考えていたのではないか。
現在、公衆電話や切符販売機がとても減らされている。公衆電話はあきらめるにしても、切符販売は切実である。定額制の各社共通ICカードを観光客に発行し、切符を買わせないようするのがいい。