ポイントカード つづき

個人情報保護法が制定されるときには、個人情報保護対策に対する機運が盛り上がり、

  1. いらない個人情報は持たないようにしましょう
  2. 個人情報を持つならば持つと宣言した上で、適切に保護と開示を行いましょう
  3. 同意を得ずに個人情報を横流しするのはやめましょう

ということをみんなで学んだはずだが、1.については緊急電話連絡網が廃止されるなど、目的があっても作られないというおかしな現象が全国で発生した。連絡網の場合、ひとりでもオプトアウトしてしまうと「短時間で全員に情報を伝える」という目的を果たせなくなるが、紳士録はオプトアウトがあっても意味があるので、形式上オプトアプトを受け付けますということにすれば作られてもよいということになった。学校の連絡網はなくなり、紳士録は存続することになった。
2.については、個人情報ではないと宣言すれば好きにしてよいうというおかしな解釈が広がり、有名企業が個人情報保護上怪しいポイントカードを発行し続けることになった。これについては詳しい人がネットのあちこちで解説しているが、なかなか一般の人には浸透しない。
「わたしが誰であり、どんな人か」という情報は、他人に好き勝手に扱われたくないと思う人が多いと思う。これは法で保護されていると思われる。
ところが「わたしは誰であるかは含まれないが、ある人がどんな物を買ったのか」という情報は、ある会社の解釈によると個人情報ではないそうである。店の人にポイントカードを渡すと、自分の名前は伝えられないが「借家に住んでいて、親と同居していて、給料が支払われる仕事をしていて、毎日昼休みにはコンビニに寄って買い物をし・・・」ということが想像できそうな情報は企業間でどんどん共有しましょう、という解釈だというのだが、少なくても店の人には顔を見られているわけだし、知られたくない情報である。個人情報保護法の制定当時は「名前のデータベースとつきあわせることができれば容易に個人が特定できる情報は個人情報」として捉えられていたはずだが、今では「名前を除去すれば個人情報ではない」という解釈になっているそうである。
伝統的なポイントカードは、買い物に応じて付与されるポイントだけを管理していた。ポイントカードの機能を強化し、商品情報を組み合わせることで、いつ、誰が、どの商品を買ったかまで店が把握できるようになった。ここまでは社会通念上許されてきたと思われる。商品数が多い総合スーパーであっても、あまり個人のプライバシーをのぞき見するほどではない。エコバッグを持っていないと、買った物は透き通ったビニール袋に入れて店外に持ち出されることが普通であり、それはつまり見られてもいいということである。一部見られたくない商品という物も存在する。薬局等で透き通っていない袋に入れられる物がそれにあたる。ただしそういう店のポイントカードは匿名のカードであるか、商品名までは取り扱わないことが多かった。
ところが、個人情報ではないと宣言してしまうと3.の「個人情報を横流しするのはやめましょう」を守らなくていいと考えているらしく、利用者の同意があれば積極的に他店と共同利用するという。いつ何を買ったのかの情報について、複数の店の分を掛け合わせればその人の人となりはばれてしまうし、決済日時がわかれば行動もわかってしまう。
今このポイントカードがポイントカード業界の勝ち組に認定され、様々な会社のポイントカードがポイントカード共同利用の仕組みに吸収されていっている。ネットでは「ポイントいらないから横流ししないでくれ」という声が上がっているが、無視されている。ポイントカード共同利用の会社は複数あるが、勝ち組とされる会社の取扱いが最もずさんであると言われている。

脱法ハーブとえせ個人情報管理との違い

個人名を切り取ればよい、利用者の同意を取れば何をしてもよい、という現状について脱法ハーブに例えることができるという。少し化学組成を変えれば違法薬物ではないから逮捕はされないが、害悪は違法薬物と同じだという。企業が法律に抵触する恐れがあるが罰せられないものというのはたくさんある。節税はどこにでもあるし、以前はグレーゾーン金利もあった。しかしそれらは企業が堂々とするものではなかった。脱法的に行われている個人情報管理は、ビッグデータの成功例としてマスコミに取り上げられている。一部自治体をそれに便乗している。違法薬物といっしょにされるハーブは迷惑だが、えせ個人情報管理といっしょにされるビッグデータもかわいそうである。ビッグデータの適切な利用と管理に対する脅威である。