プランクトンで小エビを釣る

 TポイントやPontaなど、共通ポイントサービスが競争を繰り広げています。
 ポイントは買い物をするとサービスに設定された還元率に応じたポイントがもらえる仕組みですが、中には買い物をしなくてもポイントがもらえる場合があります。なぜでしょう。
 サービス各社は、ゲームやおみくじだけでポイントを出しています。ポイントを出し続けたら破産してしまわないでしょうか。しかし、そのサイトには広告があれば、そのポイントの原資は広告かもしれません。
 中には広告がない場合もありますが、還元が1ポイントか数ポイント程度であることが少なくありません。そして、そのポイントに有効期限を設定します。
 電気代と通信代を払っているにも関わらず、利用者はただでもらったものと認識しています。そして、ただであっても、そのポイントが消滅するときにはもったいないという感情を起こすことができます。
 1ヶ月ゲームをやったとしてもせいぜい数十か、多くても数百ポイントですが、それを使い切りたいという願望を引き出すことができます。すると、消費者は必ずしも必要としていなくても買い物をします。
 えびで鯛を釣るということわざがありますが、1ポイントであればプランクトンくらいでしょうか。例えばそれでジュース1本を買わせることに成功すれば数十円か百数十円程度ですので小エビ程度だとは思うものの、需要の創出に成功しています。
 ただより高いものはないと言われますが、本当にその消費が必要なのかは考える必要があるでしょう。
 そもそも、毎日そのサイトにアクセスして、どれだけの時間を無駄にしているのかも考えるべきです。
 かつてはポイントは死蔵ポイントが収益源だと言われました。しかしそれは最終目的ではありません。セゾンカード(当時)が永久不滅ポイントなるものを発明することで、死蔵もいいけれど、ポイントに感心を持ち続けてもらうことにビジネスチャンスがあることにみなが気づいたのです。
 本来は情報収集と分析をしようとしていました。しかし、個人情報保護の壁もあり、ビッグデータは市場の期待ほどは活用されていません。もし活用されているならTポイントは一人勝ちだったはずです、Pontaはもっと普及してよかったはずです。しかし、そこから離脱する加盟店が相次いでいます。
 例えば大戸屋Pontaから離脱して楽天ポイントに切り替えました。楽天楽天経済圏を作ることを目的としていることが知られています。ポイント事業は長期的な視点で運営されているようです。
 決済サービスとポイントサービスの融合を進めようとしたのが、おさいふPontaWAON Pointカードでした。ポイントカードにお金を貯めることもできるというビジネスモデルでした。しかし、どちらも決済サービスは挫折し、ただのポイントカードに戻っています。
 一方、ポイントコレクターは、ポイントがお得だからやっているわけではありません。かつてはクレジットカードのポイントで3%、2%というものがありましたが、今は1%前後です。今は貯めたいから貯めるという行動になってきています。
 ポイントサービスや、ポイントサービスを行っている決済サービスの間の競争が激しくなっています。そこで、自社に振り向いてもらう手段として様々なクーポンその他の割引企画が打ち出されています。Go To イートにおいては、飲食店検索サイトが自社ポイントを国の補助で配るということまでやってのけました。その前にはマイナポイントもありましたが、どうやら終了してしまったイートよりも延長されるようです。このまま住宅ローン減税のような恒久政策になってしまうかもしれません。国まで動員するのですから、もはや何でもあります。
 PayPay祭りが、セキュリティ事故等は別にしておとがめなしに済んだということで、今後も突然PayPay祭りのようなことが起こりうるでしょう。我々はどこまで付き合えばいいのでしょうか。
 自分を騙しているだけではありますが、わたしは1ポイントを1円に交換するのではなく、コト消費に変換するのがよいと思います。
 例えばJR東日本普通列車グリーン席。車内で客室乗務員にグリーン料金を現金支払いすると千円を超えることがありますが、JREポイントを使うとお買い得感があります。キャンペーンで600ポイント、そして今年2020年にはグリーン車の需要喚起のために1回500ポイントにまで還元率が下がっています。一方向であれば乗り換えがあってもどこまで行っても同じ値段です。
 千円のものを500ポイントで500円に割引するよりは、500円安くグリーン席に座る体験を得たほうが幸せな感じがします。そんな気がするだけなのですが。
 Fintechによって生まれたサービスで、ポイント投資というものが流行っています。端株がもらえても儲からないと思いますが、1ポイントも無駄にせず使い切ったという満足感だけは味わえるような気がします。