速度の話 (2)

 前回は電車だったので、次は自動車。
 いくら東京スピードにスピードがないと行っても、昼時のタクシーよりは速かろう。お昼休みは、食事のためにオフィス・ビルからたくさん人が出てくる。だから、交差点の横断歩道は人で埋まり、交差点を曲がるたびにとても待たされるから都心ではかなり表定速度が下がる。複数車線ある大通りでも、交差点には客待ちのタクシーと右左折待ちの車と路上駐車の車がたまっているから、当然渋滞がひどくなる。料金メーターも上がりっぱなしなので、それなら定時定額の地下鉄の方がいいと思う。
 さて、自動車の修正表定速度を具体的に出すのは難しい。曜日、時間帯、場所、経路、天候、交通規制の有無、運転者の熟練度によって大きく変わる。
 自分で運転しているときは、カーナビで予想到着時刻を算定するのに用いる設定時速を20km/hにしている。都市部の一般道を走るときの修正表定速度は20km/h程度なのだろう。すると地下鉄と大差ないのかなとも思えてくるが、地下鉄の修正表定速度は、出発地と出発最寄り駅、到着駅と目的地との間が考慮されていないから、(1)ひどい渋滞にあわない、(2)到着地で目的地のそばの駐車場にすんなり止めることができる、(3)駅直結だが駐車場がないなど、電車の方が明らかに有利ということがない、などの条件を満たせば自家用車の方が早いかもしれない。*1
 自宅などのドアを出て駐車スペースに行き、エンジンをかけて走り始めるまでには、車を点検したり窓をふいたり慣らし運転をしたりする必要がある。出発地が住宅地であれば都会でも地方でもそんなにはすぐに速度を上げられないだろう。よって、短時間や短距離では修正表定速度は上がらない。長い距離を走るとだんだん修正表定速度は上がってくる。
 どこまで上がるのだろうか。信号のない道やすいている道をずっと走れば、理論的には修正表定速度は上がり続け、走行平均速度に近づくことになる。ただし、条件が良くても日本の一般道では50km/h、高速道路でも80km/hが限界である。理由は、

  • 信号に行く手を阻まれる
  • 信号が滅多にないような地方では、速度の遅い車がペースメーカーとなる
  • 速度の遅い車がないような時間帯を選んだり、高速道路を選んでも交通取り締まりが心配となり、思い切って出せない
  • 速度を出せば出すほど、早く疲れるので休息が必要
  • 長い距離を行けば、やはり休息が必要
  • 経済速度を超えてアクセルを踏めば早く給油が必要

といったことである。長距離の場合は休息が重要な要素になってくるので、同乗者と交代で運転すれば50km/hまたは80km/hの壁は越えられるが、山道で5〜6台が40km/hで巡航している隊列の後ろに並ばされるとどうしようもない。抜けないし、引き返せないし、ただついていくしかない。交差点で早く列が解体することを願うしかない。
 50km/hというと、快速電車と同じようなものである。快速電車で1時間くらい移動するような場合は車よりも電車を選んだ方が楽に行かれるということが数字の上でも納得が行く。

*1:駐車場さがしで時間を食うリスクがないからタクシーは競争力のある交通手段として生き残っているわけである。単なるぜいたくな手段、荷物の多い人向けの手段ということであれば、ドル箱である企業利用が大幅に減ってしまう。役員が乗るハイヤーならともかく一般社員が乗るタクシーはいくら都会の道路が混んでいるとはいえ時間的優位が保たれているはずである