NHK ONEは、必須業務としておきながら、必須のハードルを下げようともしている

2025年10月1日、NHKNHK ONEを開始する。

公共放送であるNHKは、放送予定通りに電波を出せないと会長が国会に招致されるほどの大ごとになると捉えているようだ。放送事故という単語は一般の人でも知っている。

そんなNHKNHK+をNHK ONEに一発で切り替えると聞いて驚いた。
ネット配信が「必須業務」と位置付けられたのだから、極めて慎重に切り替えをすると思っていた。
NHK ONEがちゃんと配信できないと会長が国会に呼ばれかねないと考えるならば、1か月程度の移行期間、並行期間を設けることが考えられる。
しかし、広域(全国)かつ、大規模利用者(受信料徴収率から考えて最大7割の世帯)向けのサービスを一発本番で行うなんて。

次のうち、どれなのか。
なお、仮設であって、具体的な裏付けはない。

1. 並行稼働回避の慣習

フジテレビが河田町からお台場に移転したときのドキュメンタリーをYouTubeで見た。
深夜放送もやり切って、そのあと朝の番組から一瞬でお台場に切り替えていた。
放送業界は一発本番が好きなのかもしれない。

2. ネットの軽視

必須業務の重みが理解されていない。
NHKにもネットを放送に比べて軽んじる発想があるのではないか。
でもそうなら、災害時にも役立ちます、受信料を取ります、という考えを放送と同じように掲げるのはおかしい。

3. コスト削減

民放BS4K局の廃止は、サイマル放送による経費負担の削減も目的のひとつとされている。
受信料収入が減る中で、サイマル配信をする余裕がないかもしれない。
受信料収入の減少が響く。


4. 可用性疲れ

コストも手間も体力も無視して、何が何でもサービスを提供し続けれなければならない。
「これは公共の業務である、公共に携われることを誇りに思い、献身的に励んでほしい」なんて言われたところで、適切なコストも払わない顧客に高い品質を提供することは困難である。
配信にかかわるIT業界、IT人材側に、そこまでできない、付き合っていられないという空気ができあがりつつあるのではないか。
なら、これを機に、「ベストエフォート。もし失敗したらごめんねぇ」で行こうとしているのかもしれない。

5. フェールセーフが忘れられている

1から4が仕方がない、特にお金がないから仕方がないと考えているのだとしても、
事前にアプリを配れないというのはおかしい。

放送とITの違いは、ITは失敗前提で作らなければならないということ。
「絶対に放送を止めてはならない、正しいものを放送しなければならない」という文化とは異なり、
ITでは「絶対はあり得ない」という立場に立つ。
生命維持、国家防衛、兆円単位の損失となると話は別だが、
たとえ会社1つ吹き飛ぶようなレベルの惨事であっても、「会社が吹き飛ぶくらいならば、あとはどうとでもなれ」はネットを利用する存在としては許されず、「もしそうなったらどうする」ということは考えておかなければならない。
不正プログラムに感染し、自社のシステムが他人や政府に対する攻撃を始めたらどうするか。
個人や中小企業であればネットの接続を切っておしまいでもいいが、NHKはそうはいかない。

もし止まったらどうする、変なものが流れたらどうするということをあらかじめ配信に織り込んでおかなければならない。
織り込まれているならば、事前にアプリを配っておいて、放送開始まで何も配信されないように設定しておくことができる。

しかし、実際のアプリの設計はそうなっていないので、配信開始までアプリを配れないという仕様になっている。
24時間365日、正常に適切に配信されるということが前提で作りこんでしまっている。

放送法で必須業務に切り替わるから、それまでは新旧アプリの交換はできないと考えているのかもしれないが、
配信開始まで新アプリを提供できないという考え方自体に、公共のアプリを配信する主体としてふさわしくない。


◇◇◇◇◇

ネット配信の必須業務化は「スマホにも課金するのか」とネットから批判を浴びている。
NHKは周知を控えめにしていたのではないか。
地上波デジタル移行のときに地デジカを登場させて派手に告知していたのに比べたら、あまり見当たらない。

きょう(9月28日)にNHKプラスを見たら、配信期限が10月1日を超えるものが見られるが、
これはNHK ONEで引き続き配信するという意味なのか。それともNHKプラスがまだ使えるという意味なのか。

テレビに入っているNHKプラスアプリは本当にNHK ONEにアップデートできるか。
パソコンやスマートフォンとは異なり、据え置きテレビのアプリの更新をやったことない人なんて世の中にたくさんいると思うが、どうなるのか。
詳しくは他をご覧くださいという案内が目立つ。

NHKの発表会。
av.watch.impress.co.jp
旧アプリは利用不可。言いっぱなしかよ。
作業が必要なのか、テレビを買い替えてよなのか。

Panasonicのサイトを見る。
panasonic.jp
NHK ONEに関する説明が皆無である。

NHK ONEインフォメーションを読む。

これまでの「NHKプラス」アプリは使えなくなりますか?| ヘルプセンター | NHK ONE インフォメーション

スマートフォンやインターネット接続テレビでご利用いただいていた「NHKプラス」アプリも終了になります。10月1日からは、新しい機能を加えた、新たな「NHKプラス」アプリをご利用ください。

テレビ画面での視聴は可能ですか?| ヘルプセンター | NHK ONE インフォメーション

インターネットに接続されたテレビ受信機等でも、NHKプラスアプリを利用することで放送番組の同時配信・見逃し配信、番組関連情報の視聴や閲覧をすることができます。

どちらが本当なのかね。