マイナンバーを人に見せてはいけないのか

個人番号の用途拡充は、これから良くなる将来しかない

マイナンバー騒動で河野大臣が問い詰められているが、デジタル化を支持する人たちが落ち着いて判断するよう呼びかけるようになった。
政府には、めげずにデジタル化を進めてほしいと思っている。

デジタルになって手続きに慣れないことは少なくないかもしれないが、情報の流通においては何かが悪くなったわけではなく、これまでも今も悪い部分があるのは変わらないまま、悪いものが見えるようになっただけなのである。
今までも普遍的に存在していたコロナウィルスも、2020年ごろに日本でも見えるようになったから騒いでいるだけで、悪さ具合は変わらないのである*1
見えるようになった部分だけを大げさに騒ぎ立てるのはいかがなものかと思う。

この先、行政が効率化し、保険証の悪用が減るなど、よくなると思われる部分も見えている。
それにもかかわらず、悪いままの方がいいと言ってマイナンバーカードを返納しても意味がない。

マイナンバーは秘密情報なのか

YouTube高橋洋一チャンネルを見ていたら、マイナンバーを他人に見せてもいいかどうかの回答があいまいだったので、これについて考えてみたいと思う。

Aさんが、知らない人に自分のマイナンバーを見せてよいか。

まず、公的権限を持っている公務員の人たち、例えば税務署の人とかは、これまでもこれからも役所で閲覧可能な個人情報は見放題なので、公務員倫理に従ってAさんの個人情報を扱ってくださいということに変わりはない。
マイナンバーがなければ防げたという情報漏洩は考えにくい。
もっとも、税務署長を困らせてやろうなど、意図的に役所内でテロを起こせば何かできるとは思うが、そこまでのリスクを考えるなら、何もかも捨てなければならない。
社会で生きている限りは、何らかの情報を人に提供しながら生きるしかない。ちなみに世捨て人になったとしても、街中には監視カメラが乱立していて、あなたの姿は撮られ放題。私の情報を完璧に漏らしたくないと言う人は、山奥で他人との付き合いを遮断し、自給自足で生きていくしかない。守るべき情報自体をなくすしかない。

次に、Aさんが身分証明書のかわりにマイナンバーカードを出して、券面に書いてあったマイナンバーが相手に見えてしまいましたと。その人は暗記の名人でその番号を瞬時に記憶してしまいましたと。この場合はどうか。
結論からいうと、公的権限がない人がマイナンバーだけ持っていてもできることはほとんどない。

ほとんどを具体的に掘り下げると、マイナンバーカードの紛失など、イレギュラーな場合の手続きはどうしてもマイナンバーカード以外の証拠を使わなければならない。その時、マイナンバー以外の情報も犯罪者が一通りそろえて、そこに「マイナンバーもメモしておきました」と主張して他人の番号を提示して、マイナンバーカードの虚偽再発行を求めた場合、窓口の人がそれを受け付けてしまう可能性が零から若干広がる、ということである。完全に零とは言えないが、そもそもそこまでするかどうかである。

Aさんが財布の中に運転免許証とマイナンバーカードを入れて落として、犯罪者に拾われたとする。
現在の世の中では免許証に対する世間の信頼は大きいが、券面でしか本人確認が行われないので、顔写真だけすり替えた免許証を偽装し、その免許証を起点に住民票などを集め、最後にマイナンバーカード再発行申請までこぎつけるとちょっと危険度は上がるかもしれない。ただし、財布を落とした人が届をしておけば最終的にはクレジットカードなどと同じように現状回復はできるだろう。

社会的信用能力の高い免許証とマイナンバーを同時に携帯する人が多いが「通帳と届け出印は離して保管しましょう」の常識とは乖離がある。免許証もそのうち一体化されることを期待したい*2

いずれにしろ、証拠書類の偽造は、券面だけでの確認を行っている限り、完璧に防止することはできない。運転免許証にも現行制度のマイナンバーカードにもICチップが入っていて、それで本人確認はできるのだが、「暗証番号なんか覚えられない」といって確認の精度向上に水をさす者がいる。高齢者施設の一括管理などについては丁寧な対応が必要だとは思うが、ICチップを使わないマイナンバーカードを一般の人にまで広めてしまうのは危険だと思う。

では、マイナンバーを見せると何が危険なのか。

企業の財務関係者が、従業員の確定申告手続きのために集めたマイナンバーを、全社分まるごと盗まれたとする。
ネットで「あなたのマイナンバーを買い取ります」という者が現れたとする。
このような場合、マイナンバーだけであれば問題ない。

従業員数10人の会社のリストがぽろっと漏れました程度であればほとんど問題にならない。
マイナンバーだけのリストであれば、たとえ全国民分手に入れたとしても何もしようがない。マイナンバーはただの数字の羅列に過ぎない。

一方、「都内大手企業勤務の」とか「大阪の高納税者の」マイナンバーのリストだったらどうなるか。
見つけたマイナンバーをそのリストと照合するだけで、その人が都内大手企業勤務かどうか、大阪の高納税者かどうかの属性がわかってしまう。

つまり、個人の属性がわかっている状態でマイナンバーがリストとして漏れてしまうと悪用する価値が出てしまうのである。

昭和の時代には、紳士録やプロ野球選手名鑑というものが売られていて、お金持ちや有名人の個人情報を普通に購入することができた。
今であれば完全にプライバシーの侵害として違法な存在である。
マイナンバーをリストにしてしまうと、紳士録に載っていた電話番号のかわりになってしまうということが考えられるのである。

だから、特に大企業のマイナンバー管理者は、個人情報を束の状態で漏らしてしまうのは危険であると理解すべきである。
ただ、万が一束で漏れたとしても、その束を入手した者からあなたがマイナンバーを聞かれた時に答えなければ犯罪は成立しない。
束で漏れたその瞬間から個人の病歴が漏れたりすることはないので、心配する必要はない。

繰り返しになるが、Aさん個人を特定した犯罪が起こりうる余地はさらに小さい。
隣に住むお金持ちから金をだまし取りたいからといって、本人から財布をひったくってマイナンバーを1人分盗んだら何かできるかというと、何もできない。
そのマイナンバーの属性? お隣のお金持ちだということはすでに盗んだ者にとってはわかりきっていることで、今更情報漏洩でもなんでもない。

カードとパスワードがセットで漏れたらかなりまずい。ただし、これは銀行のキャッシュカードと同じである。口座番号は必要に応じて他人にも教える情報で、パスワードは誰にも教えてはいけない情報。
こういう運用は世の中に定着しているものであるから、これを危ないというなら銀行口座も持てない。

高橋洋一さんもおっしゃっていたが、積極的に番号を見せびらかすようなものではないけれど、その番号が他人に見えることに恐怖を感じたり、政府に不信を持ったりしながら生活する必要はないと言える。

もちろん、人が作った制度なので、いつか誰かが悪用するとは思うけれど、その事件が起こったところで、その事件は紙でも同じように起こっていたはずである。
電子になっているから手口が変わっただけとしかわたしには受け取らないだろう。

コンビニエンスストアの住民票誤発行は、確かに驚いた。あってはいけないけれど、では今までの住民課の窓口は1枚も間違えたことがないのか。そうならそう言ってくれ。

*1:これまでも不定愁訴はたくさんあったのに、これを「コロナ後遺症」と呼び方を変えて、コロナは恐ろしいと言っている人達は、宗教でしかない

*2:2枚が1枚になっても本人確認能力は変わらない? いやいや、そんなことはない。強力な能力を持つ存在が2つあるのは、1つの場合より強い。裁判でお金のある人や団体が弁護「団」を組むのはなぜか。弁護士は本来ひとりで十分なはずである。事務作業を分担できるからという理由もあるが、実務を担当する人の他に、有名な○○先生がついている、という印象は重要なのである。「この人は免許証を持っているし、さらにはマイナンバーカードも持っている」となると、だまされる人が出てきてしまう。本来の持ち主が片方だけ財布ごと紛失したら、自宅に保管してあったもう一方で紛失時処理を進めることができるが、同時に落とすとそれができないのである。これらの理由から、強力な本人確認能力があるカードを2つ持ち歩く運用は改善が必要である