マイナンバーカードによる口座情報の照会とは

残高を覗き見されるのか

マイナンバーカードを持つと、銀行口座の資産情報が政府に漏れるという噂をネットで見聞きした。

マイナポータル利用規約
第11条 利用者がマイナポータルを利用し、金融機関名、本支店名、口座種別、口座番号及び口座名義(以下「口座情報」という。)を入力する電子申請を行う場合、申請情報入力画面で入力された口座情報の実在性を確認するため、マイナポータルから外部の口座確認サービスを通じ、金融機関に対して当該口座情報を照会する処理を行います。

口座情報登録・連携システム利用に関する利用規約
第1条(6)「口座情報」とは、金融機関の名称、店舗(本支店等)の名称、預貯金の種別、口座番号または記号番号および口座名義(カタカナ表記)をいいます。

「口座情報を照会する」というところに敏感な方が反応している。
一般論として、口座保有者本人が「口座情報を照会する」というと、そこには残高が含まれる。
「口座情報の照会」で検索してGoogleがトップに掲示した群馬銀行のサイト。
faq-gunmabank.dga.jp

預金(カードローン口座の場合は「貸越」)残高、入出金明細の口座情報を提供するサービス、および入出金明細

ただ、マイナポータルでは残高照会や入出金明細照会とまでは言っていない。時の政権が暴走したら「含まないとは言っていない」とか言い出して暴走する可能性が全くないわけではないけれど、気にしすぎである。
公金口座登録は、市区町村役場でもするし、税務署でもするし、あっちでもこっちでも金融機関届け出印を押して送ってください、と言われて何回ハンコを押したんだろうというのが現状である。この面倒なものを1か所でまとめてもらえる。別の機関が使う場合にはそのたびに確認をとってくれるので、XX機関とだけは連携したくありませんということがあれば拒否すればいいことである。

これまでも捜査当局または税務署には調査権限がある。民間でも公認会計士は銀行に残高確認状を送る。いずれも、調査対象を特定した上での照会をする。
一方、敏感な方々は、マイナンバーカードが導入されることで、1,000人とか10,000人とかの情報をがばっと覗き見するようなものを想定しているのだろうか。
実は内緒のシステム連携仕様(APIと言います)が仕込まれていて、ちょっと特別なスイッチを入れると残高情報が金融機関から送られてくるみたいなことを想定しているのだろうか。
金融機関はたくさんあるので、公権力が各機関を回って「これは特殊業務における秘密の照会だからね」と念押ししたとしても、誰かがばらすのではないかな。

どうしても残高覗き見が怖いのであれば、隠し財産は手数料を払って海外送金して、公金登録口座は税の支払い、還付金の受け取り、補助金の受け取りに限定しておけばいい。

規約の洗練が甘い

マイナンバーカードを用いたサービスにかかわる規約は、批判を受けて2022年末に改定された。
マイナンバーカードの利用が自己責任だという過度の責任負担は軽減されたけれど、もう少し規約の洗練が必要だと思う。
一例を示す。

金融機関名、本支店名、口座種別、口座番号及び口座名義(以下「口座情報」という。)

金融機関の名称、店舗(本支店等)の名称、預貯金の種別、口座番号または記号番号および口座名義(カタカナ表記)

どうして微妙に表記が異なるのか。規約を作成するときに、関連規約を比較するという基本動作ができていない。

キャリア官僚がレビューしていないようである。業者にお任せなのか、民間登用の方が適当に書いたのか。
これまでの前例にとらわれないスピード重視でITプロジェクトを進める姿勢は評価できるが、行政府としての安定性も今後兼ね備えてくるのか否か。