コンサルバブル崩壊?

IT、コンサルの業界で、急激な拡大を続けていた各社の成長が急に止まったという。
周りの人は原因を探りたがるのだけれど、需要過多で値段が釣り上がることを連想してしまう「バブル」とは違うのかなと思う。

もちろん、きっかけは会社が成長しようとしていたことにある。
成長していると、前年度成長した部門にはそれを上回る目標が与えられる。
前年度背伸びしたので翌年は落ち着いたり反動がきたりするのではという意見があってもよさそうある。
しかし、現場から遠い会議室では、成長したポテンシャルを持つ人たちがいるのであれば、来年もやってくれるだろうという仮説が認められてしまう。
その「遠さ」というのはグローバル企業になると国を跨いでしまうので、大洋の向こうから日本のことを想像してもらうのは到底無理である。

ITの設計、構築、あるいはコンサルティングのサービスは、人が稼働することで収益が上がる。
稼働できる人がいることが、部門の成長にとって必要条件である。
契約が取れるかどうか、市場が拡大するかどうかは関係ない。
とりあえず成長するには増員が必要という判断になって採用が行われてしまう。
採用をやらない部門は、やる気がないと判断され、責任者が交代させられてしまう。

成長させられる使命を持っているから採用したのである。成長できるから採用したのではない。

大きな組織においては、全部門が絶好調ということはないから、好調な部門には、そうでない部門や間接部門の分まで頑張ってもらわなければならない。
ただ、頑張るにも限界がある。
会社が株主の方を向いてしまうと、好調の後には反動が来る。これは必然なのである。

現場の人がアホで、市場に限界があることを忘れて、いけいけどんどんでビジネスを展開したのではない。
現場のコンサルタントやマネージャーはむしろ、急拡大、急成長には冷静な目で見ている。
大規模な売上を立てて会社から報奨金が出ると、転職のために全額貯金しなければならなくなる。

事務機器の営業であればもっと営業を頑張ればいい。
コンサルティングサービスで大量受注をすれば大きなプロジェクトを立ち上げなければならない。
営業する余裕がないのである。
よほどのことがない限り、同じ仕事をしていたら翌年は前年割れだからである。

急拡大すれば、どんなに優秀なマネージャーがいても、提供品質に目を配れなくなる。
たまたまいい部下を採れて(捕れて)、自分と同じように動いてくれれば自分の仕事を部下に任せて自分は営業をすればいい。でも、人が来るかどうかは運である。中途採用した人をすぐに自分と同じように動かすことはできない。
パーマンコピーロボットにはならないのである。
パーマンの正体であるみつ夫くんは、自分と同じ能力をもったコピーロボットにやたら不満である。

コンサルティングファームのマネージャーはそれ以上に部下に八つ当たりする。
採用した側は相手に自分を超える期待をしてしまう一方で、成果は自分を下回ってしまうことがある。

炎上してしまえば、自分は広げた先のケアまで必要になり、もともと自分がやっていたところに手が回らなくなる。
これを「品質が薄まる」という。品質は高い低いと表現するのが普通だが、隅まで行き届かない感じを醸した表現である。

小規模な事務所だった頃に、スタッフとして働いてくれた人たち。
彼らは優秀ではあるが、コンサルタントとしての実務能力が鍛えられたとしても、大規模なチームを統率するリーダーシップがあるかどうかは別である。
大きな案件を立ち上げたときの管理能力が本当にあったのかどうか。

そして、コンサルティングファームもITにシフトしているが、コンサルタントがIT向けにリスキリングできているとは限らない。
コンサルさんなら何でもできて、最新のことに詳しいというのは幻想である。
みんな、案件を多重に抱えすぎて、研修に出かけたり本を読んだりする暇がない。

市場開拓のため、契約件数がノルマであれば、値下げしてでも契約獲得を重視する。
しかし、急成長企業は件数ではなくて利益率も重視される。
目標確保のために、要員単価を妥協しない。下げないどころかむしろ値上げする。
しかし、品質は上述の通り、そこそこである。
こういう仕事を数々立ち上げていると「あそこは高いけどイマイチだった」という評判が広まってしまう。

コンサルティングはますます必要とされている。ただし、有名コンサルティングファームさんが不要とされようとしている。
AIが登場したからコンサルがいらなくなるという話もあるが、それより前に、違う意味で、いけいけファームは自滅しようとしている。