クレジットカードの資料請求をしてみた

複雑に喜びを感じる業界

 クレジットカード業界の仕事というのは、あまり合理化をしてはいけないと聞いたことがある。
 会社にはコストカットは必要なのではないか?と思われるかもしれないが、合理性を突き詰めるとどの会社も同じサービスになってしまうのだが、それではいけないとこの業界の人は考える。
 あまたあるカード会社から自分たちを選んでもらうためにはできるだけとがったサービスをしなければいけない。
 請求の引き落とし日が典型で、24日、26日、27日、月末、翌月5日などなど、細かい違いにやたらうるさい。実際のところは休日や祝日に振替を行う金融機関はかつてなかったので、日単位で細かく設定しようが実際は毎月ずれたりするものである*1。特にサラリーマンにとってはこのこだわりに何のメリットがあるのかわからない。
 ほとんど同じなのではと思いたくなるような内容でも、少し違う、少しこだわるというところに喜びを感じる、それがクレジットカードの世界である。
 かつてはいろいろな業界から異業種参入があり、流通系、消費者金融系など、さまざまなカードがあったが、今や一部の交通系(航空系、鉄道系)がかろうじて市場の一角にいるものの、伝統的なクレジットカード会社のほとんどはメガバンクが中心になって再編された。ほとんどが銀行系というか、銀行の息がかかった系である。後から経済圏グループ(楽天、ヤフー)やネット銀行のような新興勢力も加わっているが、これらも銀行を持っているので、日本のクレジットカードは銀行が発行しているか、これらに運営を協力してもらったうえで発行しているかのどちらかである。
 クレジットカードはあえてサービスを複雑にしているので、運営も大変である。コールセンターも高級な人材を雇わないと細かいサービスにこだわる会員に怒られてしまいかねない。

加入はWebでも、変更・退会は紙

 さて、持っているクレジットカードの会費が高いので、オプションサービスをやめるか、退会するか迷っていた。
 複数の会社と運営するいわゆる「提携カード」というものなので、どうやら電話やWebでは変更手続きができないらしい。
 複数の会社に対して届け出が届かないといけないので、電話だと「提携先の会社にも同じ内容を申し出てください」となってしまう。
 そこで、届け出用紙を資料請求をすることにした。
 オプションのみの廃止か、すべて退会するかにもよるが、同じカードに対する届け出用紙が4種類送られてきた。提携先への連絡が必要なものは1回書けば複数枚に複写できるようになっている。
 4種類全部使う必要はないのだが、ブログでも書いてみたくなるような内容だった。

重説が6ポイント文字

 最初に見たのは、退会申し込みの注意事項をA4判1枚にまとめた紙である。
 会員規約と同じように6ポイント文字である。読み飛ばしている人がほとんどの会員規約とは異なり、同意すればいいだけではなく、場合によってはこの紙に従って手続きを行わなければならないような内容も豊富に記載されている。

必ずお読みください

という前文が、視力の弱い人に厳しく突き刺さる。
 これを6ポイント文字にすべきかどうか。二度と戻ってくるなよ、というメッセージだろうか。あるいは金にならない会員には、もはや紙を複数枚に分けるのもコストが惜しいというメッセージだろうか。

フォーマットがばらばら

 ただし、コストについてはあまり気にしていないようにも見える。次に見たのは、記入用紙である。
 A4判というところまでは同じなのだが、紙の材質、文字のフォント、文字の大きさ、注意書きが記入欄の前か後かが、届け出の内容ごとにばらばらなのである。
 受け取るのは同じ人。見なくたってわかる。だって、同じ封筒で送られてくるのだから。郵便局の私書箱か何かに入るのだろう。少なくても封筒を破る作業は1箇所で行われる。その後、わざわざ担当者ごとに仕分けをするのだろうか。同じ人が受け取ってコンピューターに入力しているとしたら明らかに非効率である。
 どの申込書も会員番号と名前と届け出の内容を伝えるということは同じなのだから、同じフォーマットでよいのではないかと思われる。
 ただしクレジットカード会社としては、わたしと意見が真逆なのだろう。フォーマットがばらばらでも気にならないし、むしろその方がいいと思っているのではないかと想像する。
 例えば、紙幣は額面が異なれば、紙の大きさ、フォント、レイアウトがばらばらなのは当たり前。たくさんサービスがあるので、あえて大きく異なるフォーマットにした方が電話で伝えやすいし、会員も間違えにくいと考えるのがこの業界としては正解なのだと思う。

そもそもなぜ書かせるのか

 こちらで勝手に業界の常識を決めつけておいて申し訳ないが、もし当たっていたら改善してもらえないだろうか。
 会員に間違えさせたくないのであれば、同じ場所に、見分けがつきやすい文書名「〇〇サービス変更届」と大きく書けばいいだけである。フォントがゴシックだとか明朝だとか、そういうこだわりはどうでもよくないか。
 仕分け作業の都合上、紙の色を変えるのはいいが、届け出用紙によって名前などを書く欄の位置がばらばらというのは使いづらい。4つ出すことはないけれど、2、3出す必要がある場合はありうる。
 そして何より、こちらはWebで本人認証を受けて資料請求をしている。資料請求の時に住所や名前を入力しなくても、あらかじめ届けてある住所と宛名に送ってはくれた。送る際にはそれをラベルに印字して封筒に貼ってくれている。
 であれば、申込用紙にも会員番号を印字して送ってくれたらいいのではないか。今時はハンコはないので、最後、自署だけして送ってくださいでよいのではないか。

会費を何に使っているのだろうか

 サービスにこだわりがあって、個々の担当部署が紙の材質、フォント、大きさ、レイアウトを全部ひとつずつ丁寧に作っている。そしてそれをきっと派遣会社の人がさばいている。
 位置がバラバラということは、機械読み取りなどは行っていないということだ。全部人が紙を目で見て、パソコンに手入力しているかもしれない。
 どうしても紙でやりたいなら、資料送付のときにQRコードでも印刷しておいて、スキャンすれば済むようにしたらいいではないかと思うのだが、サービスが多すぎて予算が取れなかったのだろう。
 この業界の人たちは、会員が支払っている会費を人海作業のために浪費し続けたいのだろうか。
 例えば、今後はWebや電話にしていくから届け出用紙の処理にこれ以上投資する必要はないというのが経営判断なのだろうか。ただし、紙は完全に撤廃できるのだろうか。死去退会はWebの本人認証ができないし、今回取り寄せた届け出用紙も複数社で同じ手続きを共有しなければならないから電話でできていないのである。退会はまだしも変更はこれからも手数料を取っていく人なので「面倒だから退会でいいです」とならないようにすべきではなかろうか。
 そもそもそのサービス、いるのかね、というところも含めて見直してみたらどうかなと思う。

*1:今は週末などに処理する金融機関もある