宿泊施設にはもうひと工夫欲しい

 コロナ騒ぎで観光業界が大きな打撃を受けたが、高価格帯を中心に復活しつつあるという。

 政府の補助金を得るため、コロナ対策に励んでいる。

 とてもご苦労をなさっているとは思うが、マニュアルを遵守することに一生懸命で、対応がぎこちない。

 マニュアルのひとつに、フロントにはひとりでお越しください、というのがある。同行者は同じ部屋で寝る人たち。移動時も近くに座って乗り合いしてきたのだろうから、いまさらフロントだけ同行者を減らして離したところで同行者同士の感染拡大防止には意味はない。同行者と従業員との間はアクリルパネルなどで隔てられていて守られている。

 必要なのは、別の組同士が近接して一定時間滞留しないことなので「混んでいるときは密にならないように」というのが本来すべきことだ。ところが、施設側は頑なだ。

 「お客様、まず、お連れ様はロビーのソファでお待ちください。」

もう1回説明し直すのが面倒なので、ここでいっしょに聞いていいですか。

「申し訳ありません」

わかりました。じゃあ、あっちに座っていてね。

これでいいですか。

「ありがとうございます。ではまず宿泊者全員の検温から。」

えっ、おーい、やっぱり来て。

来ましたので検温お願いします。終わったら行っていいよ。

「すみません。ご協力ありがとうございます。では、館内の説明をさせていただきます。」

「大浴場はつきあたりを右です。浴衣はここでお渡ししています。みなさまの浴衣の色は何になさいますか」

はっ?!おーい、浴衣が選べるんだって!、来て来て。

「次ですが、お食事の時間は18時半と19時半がございます。」

食事、いつにするー? 1時間後?19時ちょうどは選べないの。19時半でいい?

「食事は、季節の彩りコースの和食膳でうかがっています。」

あれ! ねえねえ、ちょっと来て、ステーキ膳への変更は頼んでいなかったの?

「あっ、失礼しました。おひとつがステーキですね。」

…といった感じで、大声を出す者がいたり、何度もフロントまで往復させられる者がいたり。説明には時間がかかり、そもそもの目標のひとつである「滞留を防ぐ」ことに失敗している。

 

 フロントで渡される紙を見ると、カラオケルーム閉鎖、こども広場閉鎖とあるので、案内のチラシは作り直しているように見える。それなら、宿泊案内くらいあらかじめWebサイトに貼っておくなり、ネット予約受付メールに添付してくなりすればいいのにと思うのだが、なぜ工夫できないのだろう。世の中、お肉にするか、お魚にするかを3分経っても決められない人っている。フロントで「さあ決めて」っていうのは、これまでなら楽しかったかもしれないが、受け入れ側がピリピリしているところで落ち着いて決められない。ストレスでしかないから、あらかじめ決めることは教えておいてほしい。電車の中で考えておくから。

旅行業界がいろいろな集客チャネルを使っていて、事前に渡す情報の量は手段に制約がある。どのチャネルにも同じ内容にしたいと思うと、最小公倍数的なものにならざるを得ないのかもしれない。

ただ、予約サイト側は競争が激しいのだから、今は他社より安いことよりも、スマートチェックインをうりにしたほうが差別化要素になると思う。

例えば、予約時に決済したクレジットカードをスキャンするだけで全部終わり。そんなホテルがあれば最高。

 

ビジネスホテルはなるべく宿泊者接点を減らそうとしていて、チェックアウト時にカードキーを箱に入れるだけですむのは当たり前で、自動チェックインを目指す所も出てきている。

観光施設でも検温や消毒などのプロセスが加わっているのだから、他のところはなるべく短時間で済むように工夫してもらいたい。

旅館業法で、宿帳を作らなければいけないんでしたっけ。なぜ自署じゃなければいけないのか。自署すれば偽名宿泊は避けられるのだろうか。ぐだらない規制は河野新行革担当大臣になんとかしてもらいたい。目安箱はもう締め切ってしまったとのことで、気が付くのが遅かった。