やさしいにほんごでかいてほしい

JR東京駅で、行先案内の電光掲示を見ていたら、

〇〇〇、〇〇〇、〇〇〇に停車

と書いてあったんですね。
快速電車のために停車駅案内を表示しているのだが、この3駅までは各駅に止まるので意味がないなあと思っていたら、スクロールを始めたんですね。

〇〇〇、〇〇〇、〇〇〇に停車致します

外国から日本に来た人が日本語を覚えている最中だとして、自分の住んでいる町の名前の漢字は何とか覚えたとしましょう。日本で育った人ならば、韓国に移住して駅ナンバリングがなくてもハングルの形を覚えた状態を想像すればいいです。
でも、

停車致します

は、停車致しますではないとだめですかね。しばらく止まって「致します」だけ出てくるので、日本語が上手ではない人は何か特別な意味があるのかな、と勘違いするだろうなと思いました。4文字分画面が足りないのでスクロールしているだけなのですが。

説明が足りない

そういえば、行先案内表示器と言えば、関東の地下鉄は「こんど」「つぎ」だったわけです。ひらがなです。関西のように先発、次発の方がわかりやすいとなって、一時期採用されつつあったのですが、最近は時計を表示するようになってそれ自体表記することをやめてしまいました。
解決したかのようでしたが、先日、某県で列車が遅れたときにこのような表示になっていました。

快速 16:19 〇〇〇
普通 16:16 〇〇〇

通常ダイヤでは普通電車が先に来るけれど、ダイヤが乱れたので運行順序を変えて快速電車が先に来るという意味です。よく、遅れたときの放送で「行先案内をご確認ください」というのがありますが、これを見て解読しろというのはおかしい。開発したメーカーの人は自分のお父さんお母さんおじさんおばさんおじいさんおばあさんに読ませることができますか。開発現場に連れてきて書き取りテストをさせたらどうですか。
遅れてしまっているのだから、時計表示はやめて「こんど」と書いたらどうだろうか。せめて時計表示を消すことだけでもできないのでしょうか。ほんの少しプログラムを変えるだけですが、メーカーに依頼すると数百万請求されてしまうのでしょうか。
もともと日本語の状態でもわかりにくいのに、空港が近い路線では、これを単に中国語やハングルに置き換えただけの案内をやっています。翻訳したからいいということにはならないですよね。「日本では先に来る電車を下に書くのかな」と思うだけですよね。

字が細かい

それで最近はLED式ではなくて液晶ディスプレイを使用して高解像度で多彩な案内をするようになりつつあります。
ところが、
手元で使うタブレットですかと言いたくなるほど文字が細かいし、スクロールが早い。たくさんの情報を詰め込みすぎて待っても全然出てこないし、出てきたと思ったらあっという間に文字が流れてしまう。
先ほどの「こんど」「つぎ」問題は、東京メトロの最新式は先発を大きなフォントで書くようにしたんです*1。通常は時刻も併記されているので間違えようがないです。これはいいなと思いました。ただ、その状態になっているのはわずかで、交通情報などを表示させるときは次発と同じ大きさに縮めてしまうことが多いです。せっかくの工夫が台無しです。そこまであれこれ書きたいなら、普通のテレビ用のパネルを買ってきて作った方が安上がりだと思うのですけれどね。

敬語が乱れている

かつての関東の電車接近表示は、国鉄は「XXXをでました」だったし、地下鉄は「電車がきます」でした。このブログのバックナンバーでも触れています。しかし今は再び「まいります」の勢力が再拡大中です。まいりますを推しているのはどこのメーカーなのでしょうね*2。そして「まいります」を使う必要はあるのでしょうか。いまだに敬語としてどうかと思いますが、わざわざ頻出日本語の「くる」を避けて「まいる」を使う必要があるのでしょうか。そのうち「お電車様を進入させていただきます」になるのでしょうかね。気持ち悪いです。
冒頭の「停車致します」は「とまります」で問題があるでしょうか。「致します」は難しいし、そもそも「停車」も使う必要がないでしょう。日本語学校に入って半年以内に習う言葉、あるいは小学校1年生が分かる言葉で書くべきではありませんか。
「致します」とは誰に向かって敬意を払っているのですか。止めるのは自分たちの会社の電車ですよ。
「通過待ちを致します」も「おいぬきます」で何か問題ありますか。
多様性の時代と言われているので、公共機関で使う言葉は努めてやさしいにほんごにすべきだと思います。
自治体のWebサイトでは、ようやく外国語版に加えてやさしいにほんご版を作るようになりました。
一所懸命英語を覚えている車掌さんが最近多いですが、まずは日本語を磨いてください。挨拶はともかくとして、案内の部分は小学1年生が聞いてもわかる言葉に置き換えてほしいんですね。

普通の放送「JR東日本をご利用いただきまして、ありがとうございます。この電車は中央線、快速の東京行きです。途中の停車駅は、中野までの各駅と、新宿、御茶ノ水、神田、終点の東京です。」
 ↓
やさしいほうそう「JR東日本をご利用いただきまして、ありがとうございます。このでんしゃは中央線の快速です。いきさきは東京です。中野まではすべての駅にとまります。中野からさきは、新宿、御茶ノ水、神田、東京にとまります。」

普通の放送が何がだめかと言えば、快速電車なのに「各駅」という言葉を使っていることです。TOEICのようなリスニングテストを受けたことはありませんかね。快速電車の案内の中に各駅が出てきたらひっかけ問題ですよね。「までは」という限定条件を示す言葉を近くに添えてあげるのが親切ではないですか。あと、日本語の固有名詞は、日本語ネイティブ以外には聞き取りにくいと思いますので、名詞を説明するときは主語1つ、述語1つのシンプルな文章にすべきです。なので、名詞が3つも並ぶ「中央線、快速の東京行き」というのは2文に分けてみました。
有料座席に券を持たないで座っている外国人を見かけますが「グリーン車のご利用にはグリーン券が必要です」はだめです。グリーン車っていうカタカナ語が謎です。車の色は緑色ではないし、有料座席だということを示す表示もほとんどありません。そしてカタカナでグリーンと書いてあるだけです。英語の放送もネイティブがGreen Carと言っていますね。例えばpaidって言わないのかな。

おわりに

日本語を外国語として勉強した人に話を聞いてもいいですが、自分が英語でやられたらいやなことは日本語でもしないだけでもかなり改善できると思います。

*1:路線によるし、天井が低い駅では小型の機器が設置されているのでその限りではない

*2:東京メトロだと、日本信号かな