菅さんにまともな携帯電話政策を提言しよう

弱いものいじめ

2020年9月13日各社報道。菅官房長官が、携帯電話料金が下がらなかったら電波利用料を上げると言い出した。
大手3社が家計から搾取して利益を上げまくっているという論理だが、大手が悪いのではなくて新興MVNOを育てない行政が悪い。そこを棚上げしておいて、大手に値下げを迫れば、大手はMVNOと同じことをせざるを得なくなる。

  • 品質がよくてショップが多くて安い大手
  • 品質がいまいちでショップが少なくて安い新興勢力

明らかに新興勢力の負けだ。
なんでこんな不思議な政策がまかりとおるのか。推進者は、大手3社と楽天から利益誘導されているのではないかと疑いたくなる。

住み分ければいいだけ

大手3社は、高級路線で問題ない。自動車だって、軽自動車もあれば高級外車もあって好きなものを選べる。携帯だけなぜか品質は高級車、価格は軽自動車を国が求めるのを政策だと言ってのける。軽自動車はMVNOがやればいいのである。彼は安さのみを打ち出している。
業界として軽自動車しか売れなくなれば、技術革新は止まる。各国は5G、6Gと進む中、「日本はもう5Gなんてやめました、4Gだけにしたいです。だから先日PHSを止めたばかりですが3Gもやめます。離島や僻地は停波しますが許してください」ということになる。
携帯電話はライフラインであり、携帯電話会社は高い収益をもとに信頼性を維持し、災害にも強いインフラを築き上げ、さらには次世代規格にも投資している。それが気に食わないのであれば昼休みはつながりにくくなり、災害時にもつながらなくなり、次世代規格への対応も遅れる通信インフラを実現すればよい。地デジには莫大な財政支援をしておきながら、通信産業は現状維持か衰退を望むというのはいかがなものかと思う。
払える人には10万以上の端末を買ってもらって、毎月1万2万と払ってもらわなければ困るのである。一方、最低限の連絡や、手続きのため、あるいは教育をオンラインで受けるための通信コストは今よりも下げなければならない。通信会社も学生は囲い込みの手段なので低廉な料金プランを提供しているが、低所得者向けにはMVNOを誘導すればいいのである。低所得者向けには10GB、20GBのプランなどは必要なく、少ないけれど余計なオプションがない明瞭会計のプランを提供すればよい。

通信費高騰は通信のせいだけではない

家計における通信費の負担が増しているのは、オンラインコンテンツに変わる魅力な娯楽が不足しているからである。車も買わないし、新型コロナウィルスで、大した効果もないステイホームが流行し、旅行もだめ、イベントもだめ、パチンコもだめだとなれば、動画配信サービスを使うか、YoutubeSNSをするくらいしか暇つぶしがないのである。よって今年を対象とした統計ではもっと通信費負担が高まることが間違いないが、通信会社が搾取をしたからではなく、政策で他を潰したからだ。

正しい課題設定が必要だ

携帯電話業界の課題設定をきちんとやり直したらどうか。なぜ偽装大手いじめ(大手いじめを装った新興勢力潰し)が唯一かつ最大のアジェンダになっているのか。
最大の問題は、スマートフォンを使うとサービス利用を通じてどんどん米中韓にお金と情報が流れている問題であろう。スマートフォンを使うというのは大手3社に代金を払うということ以上に、GoogleAppleAmazonにお金と情報を差し出すということだし、ちょこっと漫画やゲームをやれば、直接の集金者はGoogleなどかもしれないが、中韓の業者にお金が流れている。ハードウェアも中国か韓国のもの。設計はアメリカ。ARMを買ったので若干ソフトバンク資本になっていたかもしれないがもう売却するらしい。ITジャイアントや中韓企業が、どこまで家計に浸透しているのかきちんと調査したらどうだろうか。
次に大きな問題は、代理店の人間にすら契約者に来月の料金を計算できずに「まあ5,000円くらいです」としか教えてもらえないこと。金を取るときに料金を正確に提示できないのはおかしい。契約前に料金を明示して、1年間はそれ以上の金額は取れないようにするべきである。後日郵送で明細が届きますとか、偽善でしかない。もう電話機を開通させてアドレス帳などの引っ越しを終えた後で「店での説明が間違っていたので解約します」なんて言えないではないか。

  • ドコモの料金は、固定料金X,XXX円、従量料金はショートメール1通3円、XXがXX円、ユニバーサルサービス料が2円
  • 付加価値サービス料金は、A社がXX円、B社がXX円、C社がXX円
  • 合わせてX,XXX円 + 従量料金

契約体系をシンプルにした楽天はすばらしいと思う。公共調達では、契約体系がシンプルで、それは本案件のみの特別プランではなく、一般国民もショップで普通に利用可能なものであることを選定要件に加えればいいのではないだろうか。
ショップの店員が「端末修理無料サービスと、セキュリティーと、なんとかマルチパックと、、、」と言い出した*1ら「公共向けプランでお願いします」と一言言えば余計な説明を受けずにシンプルに契約できるようにする。

このままでは悲しい未来が待っている

他にもあるかもしれないが、日本の産業のトップランナーを走ってもらわなければならない業界に対して、ただ料金下げろ料金下げろというのは単なる呪いでしかない。利益や時価総額がITジャイアント並になるまでは特に規制は不要である。市場くらいは世界有数のものにしておかないと、5G本格化や6Gにおいて、何ら世界に影響力を行使できなくなってしまいかねない。すると、いよいよ通信でさえも外国から恵んでもらうだけの国になってしまう。外国政府からの検閲つきの情報サービスであっても文句は言えまい。

*1:義務で説明しているから、不動産の重説みたいに心がこもっていないし、最近は「説明を聞きました」という書類を契約者に書かせるので予想外に高くても契約者が悪いということになってしまう