リニア新幹線はチケットレス化

 リニア新幹線は切符を売らない使わせないチケットレス方式を検討しているという。
 航空機はすでにチケットレス化を完了していて、新規参入会社もバーコードなどを採用していることを見ると切符はコストがかかることはわかっていて、JRもいつかは検討しなければならないのだと思う。ただ切符をなくせばいいということではなく、今より快適なユーザー体験を実現してほしいものだ。

旅行代理店の発券はどうなるのか

 JR東海ICカード方式を検討しているというが、ICカードだと、全国の旅行代理店で旅行商品を買ったときにどのようにICに乗車券情報を載せるのかが課題となる。JR東日本はバーコード方式も実験している。

未就学児はどうなるのか

 新幹線では自由席であれば未就学児は無料。シートベルト不要とはいえ、これまで以上の速度が出るリニアモーターカーで膝乗せ可なのかどうかは気になるところ。幼児にICカードを持たせるのはかなり厳しい。

乗り継ぎはどうなるのか

 完全予約制で駅係員が少ないというのは実は乗客側にリスクがある。これまでは乗り継ぎの交通機関が遅れたら駅で相談するか、後発便の自由席に乗ればよかった。しかし、これらが困難になる。リニアに乗り遅れないように十分に乗り換え時間を確保してしまうと、先行開業する品川-名古屋間だと新幹線と所要時間が変わらなくなってしまう。
 現在の東海道新幹線では会員になればスマートフォンで何度でも便変更ができるが、これを使うかどうかは乗客の自由である。しかし、今後はスマートフォンを使えなければ利用しにくい乗り物になるようだ。
 出張慣れしていて、エクスプレス予約は使い慣れていたとしても、年数回の帰省や行楽で家族分全員の予約変更をするとなると相当煩雑だ。例えば、できれば5人でまとめて座りたいと思っているが、のぞみ号については繁忙期でなくても5人分まるごと席が空いていることは少ない。スマートフォンが使えないというのはこういう状況も含まれる。エクスプレス予約も今のままでは困る。
 東海道新幹線の上りが関が原付近の雪で徐行運転したとする。山陽新幹線方面から乗り継ぎたい人のことを考えると、名古屋から出るリニア新幹線は発車を遅らせるべきかもしれない。しかし、名古屋から東京に行きたいビジネス客は雪は関係ないし、東海道新幹線が遅れる度に発車を遅らせていたのでは新幹線より高い料金を払ってリニアに乗る必要はなく、苦情が出てしまう。このジレンマに対してJR東海はどのような対応をするのかが気になる。完全予約制でICカードのみとすると、品川と名古屋にはたぶん窓口に長い行列ができて、駅員を大量に確保する必要があると思われる。
 それでも自由席を設けないのであれば、例えばリニアの予約をしている人は東海道新幹線の自由席にも乗れるようにするのだろうか。

チケットレスにもいろいろある

 チケットレスを実現している航空会社の搭乗口は無人化できていない。むしろ混雑時は2レーンなのに3~4人くらいいて例外対応などを行っている。少し前に検査場で航空券を提示しているはずなのに、その直後の自動改札をスムーズに通れない人がいる。検査場は通過できたという記憶が新しいため、通れないことに対して苦情を言う乗客も頻繁に見かける。Felica(ICカード)と磁気券は長年の実績があり、不慣れな人を含めた大量の人を効率よくさばくには現状では一番適した方式なのである。
 市場にある技術はどの航空会社も同じように使えるだが、航空会社に大きな差があるように思える。例えばバニラエアは持ち込み荷物の確認と航空券の確認を同時に人手でこなしているため、搭乗口で長々並ばされるイメージが強い。一人が航空券、もう一人が荷物の確認をすれば効率は上がるが、もともと運賃を下げるためにぎりぎりの人数で運用するということが前提になっていて時間に余裕を持って来るように呼び掛けている。しかし、時間がかかってもいいということと、もたもたしてもいいということは違う。
 ANAJALとを比べると、個人的な体感ではJALの方がもたつく印象である。JALはバーコードの読み取りがうまくいかず、しょっちゅう改札が閉まっている。わたしが地上勤務の職員だったらANAの機械に取り換えてほしいと思うだろう。わたしはいらいらするのがわかっているので、列には並ばない。列がはけてから改札に向かうようにしている。

リニアはどうなるのか

 リニアはこれまでの鉄道と違う乗り物という扱いでよい。新幹線や在来線の運賃制度と切り離すのはかまわない。今の新幹線で荷物検査をするのは現実的ではないというが、東京駅に検査スペースを設けられないというのが最大の障害であり、これから駅を作るリニアの駅では簡易的な検査をしてもいいのではないかと思う。
 チケットレスもこれまでの切符からの延長である必要はないが、航空会社並みのユーザー体験を目指すとともに、悪い先例は繰り返さないよう十分に研究してほしい。