ねじれ国会は制度的欠陥

(おさらい)ねじれ国会の弊害

この引き替えに得られる効果は、与野党逆転の可能性があるという期待と、野党提出法案が増えて野党の政策がより具体化する*1ということくらい。弊害の方が大きい。

ねじれ国会状態発生の構造

  • 制度・政策
  • 政治情勢
    • 与党の自浄機能低下
    • 政権支持率低下
    • 野党には政権意欲

これらは現在すべて同時に起こっていることだが、ねじれ国会状態になる必要条件でもある。衆議院参議院の選挙日程は、事実上、与党が設定可能なため、A院で与党が勝利した後*2で、B院にて野党が勝利することで、選挙時期が異なる二つの院はねじれる*3。日本では衆議院に優越があるため、A=衆議院、B=参議院である可能性が高い*4
二院制を維持したままの二大政党制志向は、正しい政策選択だったのか。ねじれ国会は、与党が粘れば意外に長期化することがわかった。そして国民にとても迷惑をかけることもわかった。近いうちに政権交代が起こってねじれが解消しても、現在の制度を維持したら、再び民主党から次の党に交代が起こるときにもきっとねじれる。ねじれは、政治正常化のためのコストとして国民は我慢しなければならないのだろうか。
与野党逆転とは、与党と野党の勢力が変わることである。それは3つのパターンがある。

  • A: 大変革 →民主主義的手続きを経ない革命、クーデター
  • B: 短期の変革 →議員が自主的に政党異動する、選挙を経ないで政党分裂、政界再編
  • C: 中期の変革 →議員は自主的に政党異動しない、選挙での国民の審判、ねじれ国会

選挙制度改革のときの政権交代手法は「政界再編」しか頭になく、制度立案者はねじれのことは考えもしなかった。しかし、その後の大政党優遇政策は政界再編を否定した。2009年風に言えば、渡辺議員型の離党は起こりにくいのである。自民党羽田派型の集団離党でさえ、保守新党自民党へのキャリアを踏んだ人たちが証明するように、議員たちにとってはたやすい道ではないらしい。
クーデターや政界再編がなければ、政権交代前後は必ずねじれる。制度立案者はどうしてこのことに気づかなかったのだろうか。それとも、こうすることが目的だったのだろうか。55年体制が長すぎて想像力がなかったのだろうか。小選挙区を導入したことは当時としては大儀があった。政治家が小粒になったというが、それほど悪くない。しかしそれだけでは不完全だった。
ねじれ国会の構造を説明するときに小泉旋風のときに与党が圧勝したことを持ち出す人がいる。衆議院では2/3の議席を持っているからねじれ国会が成立している、と。しかし、上記の必要条件と2/3は全く関係ない。最近の自公連立政権は、問責決議が出ようが、年金の公約を破ろうが、恥も知らずにのうのうと政権に執着している。昔だったら「こんな状態では政権は維持できない」「こんな状態では離党者が出る」というような状態で、政権は倒れないし、離党者もほとんど出ない。今の政権の執着ぶりは、宮澤政権のようなぶざまな下野はしたくないというところからくるもので、2/3であろうが、1議席差のぎりぎり与党であろうが同じである。小泉さんより後も与党は2/3を持っていたにもかかわらず、数多くの政治評論家が「こんなことは政権はもたない」と言い続けてきた。そしてそれは外れた。今の制度がこのまま続けば、次回の与野党拮抗時にはたとえ2/3がなくても政権はしがみつく可能性がある。これは宰相に恥の文化がないせいではなく、制度のせいだ。事実を整理すれば、やかり与野党逆転は上記A〜Cの3パターンで説明するしかなく、革命やクーデターを否定するなら、政界再編かねじれ国会しかないのである。政界再編が起こりにくいなら、ねじれしか残っていない。
次の政権与党(民主党?)は、政権を取ったら選挙制度を見直してもらいたい。政権交代前後にねじれを起こさないためには、上記の必要条件のうち、制度または政策部分をひとつだけ直せばいい。

  • 一院制ならばねじれない
  • 参議院でも不信任決議ができ、参議院も解散するならば、直近の民意で政権が決まる
  • 大政党優遇が解消されれば二大政党制ではなくなり、政策単位での連携が柔軟に行われる
  • 議会に拒否権を発動できる大統領制か、直接選挙で民意を反映できる首相公選制にする
  • 衆議院の優越を強める

参議院衆議院と同じにしてしまったら二院にする意味はないし、衆議院を強くしたらますます参議院の意味がなくなる。二大政党制がいいかどうかはまだわからないけれど、与野党逆転時にいつも細川連立政権のような小党が乱立することになるのでは困る。麻生さんみたいな人がもっと権限を持つかもしれないと思うと、大統領制は日本ではあまり想像したくない。首相公選制は、議員内閣制に対する見直し部分が大きくて、想像の域を超える。
すると、わたしは二院制の見直ししかないと考える。一院制にするためには、過渡的には議員数をすぐに削減できない衆参合併もやむを得ないと思う。選挙制度だってそのまま残してもいい。そうしないと首切りの対象になる参議院の抵抗に遭って改革できない。
次の与党は何ができるのだろうか。次の与党勢力にとって都合の良い制度にするのではなく、ねじれ発生防止のことを考えてもらいたい。

自民党だってちゃんと考えなければならない問題だ

自民党は、選挙制度を語る上で、政界再編やねじれ以外にも道もあるという説明をするだろう。↓つまり、

自民党政権は今後も続く。与野党逆転は日本の政治制度には初めから組み込まれていない。

海部内閣のころの議論はこういうことだったのだろう。しかし、自民党政権もいよいよ終わるかもしれない。今の制度のままでは民主党が飽きられてもなかなか自民党には政権が戻ってこないことになる。
選挙制度改革では、日本の代表が他国に比べてころころ変わることも問題になっていた。しかし、これは自民党内に様々な主義主張を抱えていて、党内で総裁選挙を行って政権交代を行ってきたことが原因にある。しかしここには目をつぶって国の制度だけ変えてしまった。政治と金の問題は前進したかもしれないが、今の政治は機能停止してしまっている。川に例えるならば、水質は若干きれいになったが、魚の姿は見えない、ということか。話がまとまらなくなってきたから、ここら辺で終える。

*1:具体的な法案になっても成立しないが...

*2:勝利したから与党なのだが

*3:政権与党は、与党に有利な場合にしか衆参同時選挙を仕掛けない。よって、与党勢力衰退時にはかなりの確率で選挙時期はずれる

*4:逆の場合は、衆議院にて少数与党となり、内閣不信任で政権が倒れやすい