乗降人員減少時代

 日本は人口減少時代に入ったが、東京への人口流入は依然として続いている。ところが、東京で電車に乗る人は減っているようである。
 東京地下鉄が「駅別乗降人員順位表」というのを毎年公表していて、最近ではインターネットでも見ることができる*1。以下、平成16年度の統計をもとにいくつかコメントする。
 赤坂、神谷町、麹町、赤坂見附虎ノ門といった、皇居西側で利用者減少が激しい。麹町は日本テレビの移転があったからだろうが、他局のTBSやテレビ東京の最寄り駅でも減少しているなぜだろう。ただしテレビ朝日のお膝元である六本木や六本木一丁目は再開発が行われたためか、二桁パーセント増である。
 ターミナルからちょっと都心に近づくあたりの閑静な地区、例えば千代田線の西日暮里、湯島、有楽町線東池袋護国寺江戸川橋あたりは微減で元気がない。丸ノ内線は池袋から大手町の間で、後楽園*2を除いて全駅*3微減である。微減で済んだのは山手線内でマンションブームがあったからで、地価が上がって供給が一段落したこれからは街の成熟化*4が進み、減少の一途だろう。ラッシュアワーターミナル駅と都心を往復する客から「通過しろ」という声が大きくなりそうだ。
 東西線の東側では、葛西や行徳は成熟してしまって*5ほぼ横ばいあるいは減少であるが、原木中山南砂町、木場といった、昭和の頃は空気の入れ換えのためにドアを開けていたのかとささやかれるような駅周辺で宅地開発が進み、増加となっている。今は葛西と原木中山とでは3倍以上の差があるが、縮まる傾向が続くかもしれない。
 東京メトロは、そんな中で夜間・深夜帯に各駅停車よりも快速を重視した増発を実施した。実は西船橋及び西船橋以降への乗り越し客が減少していることで競争力強化を図ったと見られる。基本的に、需要が高くなったところに増発するという発想が出てこないようである。
 順位の低い駅の代表と言えば、昔は桜田門二重橋前が目立っていたが、二重橋前は「実は丸の内再開発地区や東京駅に近い」ということで健闘している。かわりに寂しい駅として名を連ねているのが南北線の北部方面。西ヶ原駅の6,150人というのは救いようがない成績である。北区の鉄道空白地域を解消すべく開通した*6が、それにしてはルートがJR線に寄り添いすぎである。両端で直通運転が実現した今は、流入人員は堅調であり、駒込-赤羽岩淵間の部分開通で空気を運んでいたころとは隔世の感があるが、直通運転で遠くから乗ってくる人に意味のない途中停車が目立つ結果となっている。
 その他、ちょいねた。

  • 辰巳 11.9%増というのはすごいなあ。でももとの数字が小さいからね。江東区のマンション効果で下位からの脱却が実現するか。
  • 「国会議事堂前及び溜池山王は、駅の構造上1駅として計上しました。」とするなら、日比谷線北千住と千代田線北千住だって、東京メトロの数字と東武からあがってくる数字を足せばいいじゃん。駅の構造上、1駅ではないか。
  • 日比谷線北千住2.4%減、秋葉原1.9%減、南千住8.2%増*7。足立区内→日比谷線常磐線沿線→日比谷線からつくばエクスプレス→JRに流れた結果と推測できるが、一部は南千住駅つくばエクスプレスから日比谷線に乗り換えているように見える。ただ、南千住は貨物駅跡地の再開発効果かもしれないのでよくわからない。
  • 新宿、新橋、霞ヶ関茅場町など、ビジネスの中心地として通勤需要も高く、乗り換え客も多い駅が軒並み減である。都市交通のビジネス需要が減っているのだろうか。在宅通勤?、顧客訪問から電子メールによるコミュニケーションへの移行?、好景気でタクシーにシフトした?、、、理由はわからないが、オフィス需要が高まっている中で電車を使う人が減っているというのはどうしてなのだろう。
次回の不況は東京発かもしれませんね。

東京オリンピックはやめておいた方がいいのでは。

*1:http://www.tokyometro.jp/corporate/data/index.html

*2:後楽園は堅調。南北線からの流入があるのだろう

*3:新大塚茗荷谷本郷三丁目御茶ノ水淡路町

*4:住民の年齢層があがるということ

*5:競合路線のJR京葉線は横ばいである。湾岸道路の立体化で住宅地から駅に通いやすくなり、京葉線の価値が上がるだろう。東西線はどうなるのだろうか

*6:東京都は舎人線を建設しているが、足立区の鉄道空白地域ではどれだけの需要が見込まれるのだろう

*7:南千住の乗降人員は他の2駅より断然少ないので、単純に数字だけを比較しないように