地方でのキャッシュレス事情

やはり財布は必要だった

先日、離島に行った。

あるQRコード決済のアプリによると、その島の地図はそのアプリを使ったサービスのロゴで埋め尽くされていて、かなりの店でキャッシュレスサービスに加盟していることが確認できた。

都会にいるかのようにキャッシュレス生活ができるのかと期待してしまったが実際は違った。

  • わかる人がいません。
  • 店にWi-Fiが届きません。
  • 使えません、そんなの知りません。

決済端末の操作に手間取って、後ろでレジ待ちしている人に迷惑だからだろうか。いや、振り向いても後ろに誰もいない。

気づくと、加盟店にもかかわらず、店頭には決済サービスのロゴシールすら貼られていない。

加盟店の勧誘をどうやっているのかは知らないが、店側の意図がわからない。なぜ現金好きなのに加盟してしまうのだろうか。とりあえず契約だけくださいと頼まれて応じているのが実態なのだろうか。

キャッシュレスされると何か困るのでしょうか

 今は加盟店手数料が無料かそれに近いが、寡占できれば決済手数料を値上げするのではないかと考える人がいる。携帯電話会社が寡占市場を作って利益を上げまくっているという人がいるが、携帯電話は実は値上げしていない。しかし、使い道が広がったから使用量が増えているだけである。その一部は利用者が外出先でこれまで行わなかった動画閲覧などを行うようになったことが関係しているが、本質的に利用者が電話でやりたいことは写メールの時代からそんなに大きく変わっていなくて、広告やアプリが頼んでもいないのに勝手に通信しすぎなのだと思っている。一方で、利用者は多大な便益を手に入れている。

 中小の商店に対して、これまで大資本は搾取を続けてきたかもしれない。寡占ECサイト、レストラン格付けサイトの類のことを言っている。でも決済については現金がなくなろうとしているのに、搾取されるからやりたくないと言っていては誰も来なくなってしまう。しかも、あそこならカードが使えるけれど、この島は現金しか使えない、というように街ごと地域ごとスルーされてしまうリスクがあるのだが、気づいていないようである。

 決済手数料は今のところわずかなのに、どうして客の求めに応じないのだろうか。従業員教育が面倒なのだろうか。会計システムとつないでいないのだろうか。つながると何か不都合なのだろうか。

 たぶん、現金決済を続ける企業を増税しない限り中小は現金決済をやめないと思う。キャッシュレス企業を減税すると、EDI(電子商取引)を採用する大企業が減税対象になってしまうので、青色申告の要件を厳しくすることなどが考えられる。

QRコード決済は使われるのか

 決済市場はボーダーレスで、国内での寡占市場形成を目指しても海外勢に狙われるだろう。実は長年クレジットカードは国際ブランドが優勢。PayPayは中国のAliPayと提携しているし、LINEは韓国企業。今も昔も決済市場をリードしているのは国際企業なのだが、ここ数年だけ電子マネーFelicaを盾に国内勢が盛り返していたにすぎない。非接触ではVISA Touchなどもあったがほぼ撤退している。

 クレジットカード会社は加盟店手数料を原資にカード保有者にサービスを提供し、その残りを収益とするビジネスモデルだった。Felicaを開発したソニーEdyを作ったが収益化ができず、楽天に売却してしまった。

 2019年に開花したQRコード決済はこれらのビジネスモデルを採用しないだろう。大量の購買履歴データを使ったビジネスが可能である。

 データの価値を高めるためにはなるべく広い範囲のデータを取り込むことが必要で、そのために有力決済業者は中小零細の小売店を回って加盟店獲得を行っている。セブン&アイでしか使えない7payや、郵便局ですら使えないゆうちょペイのゴールがどこにあるのかさっぱりわからないが、PayPayやLINE Payが街中の商店でロゴシールを貼りまくっているのはそういう背景があると理解している。

 しかし、加盟店がたくさんあっても、肝心の決済になると使えない。

 

新たなスポンサーを見つける

 地域振興券のアイデアをキャッシュレス決済に応用する。これまでも地域限定の電子商品券などは一部地域で見られたが、ナショナルブランドのキャッシュレス決済で実現することが可能だ。

 〇〇市で買い物をすると20%割引、といったことが簡単にできるようになるかもしれない。今は2019年7月なので、7Payのチャージが中止されたにもかかわらず、セブンイレブンでの買い物やセブン銀行でのチャージでPayPayのポイント還元キャンペーンが行われている。これをチェーン店限定ではなく地域限定にする。

 観光客が、ポイント還元を目当てに訪れる。「えっ、使えないの?!」と何度も舌打ちされる。すると、地元商店はキャッシュレスでの決済要求に応じるしかない。

 このときの原資は、地方自治体の補助金だろうか。FinTechを活用した補助金スキームはすでに先例があり、法令上は問題がない。どうやったらできるかではなく、どこが最初にやるのかの競争になっている。ただし、自治体と決済業者だけががんばればいいということではない。とりあえず加盟店契約を増やすだけではなく、実際に決済できるように店側が準備を整える必要がある。