持ち家より賃貸の方が優れているのだろうか

Twitterを読んでいたら、家を買う消費行動に疑問をもつ人が持論を繰り広げていた。リスクを恐れる気持ちはわかるが残念ながら同意できない。代表的な意見にコメントする。

  • メリットがわからない
    • ほしいものを買うのにメリットを理解しなければいけないのか。住む家に対してこだわりを持ちたい人は持ってもいいけれど、一番大事なのは不快な部分がないこと、そして全体感として心地よいこと。毎日「あ、そうだ、ここにはオートロックがあったんだ。マンション買ってよかった」「おお、庭がある。一軒家を買ってよかった」なんてメリットを確認しながらでないと住んではいけないなんておかしい。メリットを確認したい人はしてもいいけれど、そんなのはすぐに飽きる。仕事と違って人に説明しなければいけないことではないのだから、騙されていてもいいから「なんとなくいいなあ」というのが一番いいと思う。これは実際の購入者の心理と共通していると思う。
    • 趣味に金をつぎ込む人、ギャンブルに走る人、自己投資する人。人生で一度や二度、好きなことにお金を費やす機会があってもいい。一番情けないのは金融機関を肥やすだけの人。
  • リスクが大きい
    • リスクが大きくなったら売ればいい。売るのがみじめですか。
    • 賃貸に住んでいると自己破産するとき何か有利なのでしょうか。あるいは自己破産する可能性が小さいのでしょうか。確かに債務放棄額には多少影響しますが、自己破産しなければならないほどの家計へのダメージというのは月々の居住費(この場合は減価償却費は含まないキャッシュアウトの額)を大幅に超えているはずです。要は賃貸にも住めないのです。
  • リスクが多い
    • 本当に賃貸のリスク、購入のリスクを全部洗い出せているのでしょうか。何を持って大きい小さいと言っているのか。数値で表現していただきたい。
  • 持ち家は価値が下がり続ける
    • 家は財産ではなくて減価償却していく資産である。当たり前のことを言っているだけだ。会計を勉強すると税法に基づく償却を意識してしまうが、本当の現在価値に合わせて償却額を計上していけばいい。

持ち家と賃貸かで選択肢を狭くするのがおかしい

家を選ぶとき、購入を選べない人はさておき、購入も選べるのであれば、まずは住みたい家を購入・賃貸の先入観なく探すのだと思う。SUUMOのサイトはすでにそのような作りになっている。購入の場合のリスクはある程度はコストでカバーできる。「一軒家ならば駐車場代がかからなけれど火災保険は高い」など、すべての費目をきちんと調べ上げた上で、住みたい家同士を比較する。そこに「分譲」や「注文住宅」という選択肢があるならば、少し面倒ではあるがコストをしっかり計算する。「減価償却なんて、実際には払いもしないのに計算したくない」あるいは「蓄えはないけれど住宅ローンは変動金利が安くていい」と言っているような人は確かに家を買ってはいけない。でも、きちんと計算しつくすことができるなら、高い家が、その高い分だけ納得できるならば高い方を選ぶし、納得できないならば安い方を選ぶことにすればいい。
「子どもが騒いでも階下に迷惑をかけないメリット」「庭いじりができる喜び」はそれ自身をお金に換算しにくい。でも、その定性的な幸せと定量的なお金を比べればいいのである。「閑静で気に入った街」だけど「賃貸物件はないので分譲になり、月々3万円高い」のであれば、閑静と3万円を比べればいいのである。
こういうことを言うと「すべての費目を洗い出すのは不可能だ」という人がいる。不確定だなと思う部分は保険に入るのだが、保険も完全にはカバーしきれないので一定の貯金をすることを考慮に入れるのだと思う。そこまでしてもリスクがあるという人は、残念ながらわたしの話はご理解いただけていないのだろう。賃貸にだって購入にだってリスクはある。なぜ購入だけリスクを0にしなければ住めないのだろうか。
放射能が飛んできたら持ち家は捨てなければならない」最近決まりの脅し文句はこれである。でも、原発災害に遭っている方でも地元に残っている人がいる。働き場所が限定されるからである。移住のリスクを考慮するならば、どこでも働けるスキルを身につける方が先決である。どうしてリスクをとって定職を選んだのにリスクをとって住居を決めることにだけ目くじらを立てるのか。
全く同じ条件の家が2つあったら、確かにわたしも賃貸を選ぶだろう。でも現実にはそういうことは極めて少ない。注文住宅を造って賃貸で提供というビジネスモデルもあまり聞かない。だから自分の家選びに購入の方がいいということはあってもいい。

リスクではなくて、面倒かどうかの問題

権利とか抵当とかローンとか確定申告とか保険とか修繕とか。定住なら近所付き合い、転勤なら定期賃借。たくさんやることがある。面倒だから買わないという考え方は理解できる。なぜこんな面倒な思いをして買うのか、と聞かれたら購入派は黙るしかない。ただ、面倒なら何もしないのですか、とも思う。そして、面倒だから買うべきではない、と人に同調を求めるのはおかしい。面倒なものを調べて理解する時間を時給に換算してもいいが、換算したところでその時間アルバイトができるわけでもなかろう。

メリットとデメリットは表裏一体

優秀な不動産営業は、ひとつのことを見て必ずメリットとデメリットが言える。

  • コンビニ
    • ○便利
    • ×夜に不良がたまる、駐車場がうるさい
  • 公園
    • ○自然が近い
    • ×虫がわく、入園者が騒ぐ
  • 高速道路の出入り口が近い

どう考えてもデメリットにしか見えない部分はお金に換算されている。すなわち安い。どう考えてもメリットにしか見えない部分もお金に換算されている。すなわち高い。だから測定できる限り項目をすべてお金に換算すればいい。賃貸にも分譲にも市況がある。だから今の時点では賃貸が安いとか、このエリアでは賃貸が安いということはあるだろう。でも、それを調べもせず世界どこでもとりあえず賃貸がいいのだ!の先入観から入るのは住まい探しを軽視していることになると思う。

リスクが0とは

生きること自体がリスクを選び続けることである。負けを恐れたら、結婚できない出産できない受験できないスポーツできないトランプ遊びすらできない。負けるのがどうしてもいやなら、その場で死ぬしかない。でもそれこそが最大の負けでもある。