サブプライムローン問題が発覚したとき、アメリカはなんと愚かなことをやっているのかと思った。リスクは非常に単純だったが専門家でもわからないように隠されていた。そして、市場は完全に失敗した。
日本の財政赤字について、長期金利やCDS*1スプレッドから推し量ると市場は深刻に評価していないそうだが、だからといって財政再建を急がなくてよいというのはおかしい。市場は何かを見落としているだろうし、必死に隠そうとしている人がいるのだろう。
未来の歴史家が語り合う。
21世紀っていうのは大胆な世紀だったね。
あの国の債務は、千兆円まで来て心配する声もあがったけれど、結局5,000兆円まで借りまくって破綻しちゃったよね。
うん、でもそれって、なんていう国だったっけ?
さあ...
市場は長期まで見ていない。国債の償還期限は長くても10年程度だが、国は10年持てばよいというものではなく、もっと長期において維持繁栄させていきたいものだ。ビジネスのスピード化が叫ばれているので、直近しか見られないし見たくない気持ちはわかるが、もっと長期的な視点を持ちたい。
金融に詳しい人は、市場動向を見るときにリスクを探そうとする。将来にわたる国家運営リスクなんてわからないと反論するかもしれないが、リスクなんて見なくてもいいのである。見るべきは成熟した低成長国家*2としてお金を借りすぎている、というところだけである。
住宅ローンを借りるときに、
というと、専門家から小一時間説教される。
これが日本国債になると、
といい、一部の専門家は自信を持って、このように言う。
どちらも借金ですよね?!
わたしは、経済刺激と歳入拡大と歳出削減は同時に行わなければならないと思う。
正論だけでは解決しない
増税の前に無駄の削減
これは正論だが、では現在の借金残高がどこまで増えるのを許容するのか示してもらいたい。規制改革や制度改革が参院選後1箇月で完了するなら、考える必要はない。しかし、郵政民営化だってダム中止だって抵抗勢力がいてすぐには決まらない。ということは今の借金膨張は必ず継続されるということだ。来年は10兆円の歳入で、150兆円の歳出かもしれない。リーマンショックでは多くの人が財を失ったが、有事は儲かると確信した人が世界中のどこかにはいるはずだ。サブプライムの再来は作られるし、かの国やあの国をけしかけてでも世界を混乱させようとする者は必ずしも出てくるだろう。企てが成功するかどうかは別としても、試みる人は必ずいる。そのとき政府は「千年に一度の有事だから仕方がない」と言って歳出を執行するのだ。
正論を主張する政党は、説得力を出すため、緊急停止ボタンをあらかじめ用意しておいてもらいたい。例えば、このようにする。
現在はたった1,000兆円なので、社会構造改革と制度改革だけでいけます。
ただし、理由はどうであれ、1,500兆円に達したら増税をします。
今わかっている情報の範囲で言ってもらえばいい。国がこんなことを言ったら国家の与信限度額を自ら決めて暴露するようなものであり、歪曲されたら市場が反応してしまうが、正論を言うのはいつも野党だからかまわないだろう。ただし、緊急停止ボタンを押すタイミングはずばり金額で宣言してもらいたい。こう言ってくれれば、じゃあ、あと500兆円増えるまでは国会でがんばってほしい、と思う。ただ、わたしは今こそが緊急停止ボタンを使う時期だと思うのだが、間違っているのだろうか。